遠軽vs釧路江南
西村(遠軽)
予選の数字
予選の数字ほどあてにならないものはない。
この日の遠軽・西村純季の投球もそれを表すものだった。
6回を投げ、3安打無失点。四死球は3つ与えたが、奪三振は8。数字だけ見れば、文句をつけられるようなものではない。だが、内容は決して甲子園レベルとはいえないものだった。
その理由は、バッティングカウントからの配球。
2ボール、2ボール1ストライク、3ボール1ストライクなどでは、全球ストレートなのだ。
カウント2-0からが6球、2-1からが6球、3-1からが4球。そのうちボールとなった6球を除くと、ストレート一本待ちでフルスイングできる球は10球ある。しかもこのうち半分以上の6球が狙いやすい外角のストレートだ。ところが、
打線はこの10球をとらえることができなかった。見逃してストライクが3球、ファールが4球、一塁フライが2球、セカンドゴロが1球。安打にしたのは、一番の山崎蓮が右中間へ二塁打した1球だけだった。
では、西村の球がそれほどすごかったかというとそうでもない。
バッティングカウントで投じたストレートの最速は136キロで、それも1球だけ。あとは128~133キロ程度だった(球場スコアボードのスピードガン表示)。旭川スタルヒン球場のスピードガンはやや辛めとはいえ、特別なスピードではない。これをとらえられない
打線のほうに問題があった。甲子園で全国レベルの打線に対すれば、甘い球は確実にとらえられてしまう。この球速、この配球では抑えるのは困難だ。
それでも、西村は
・上田昌人と並ぶ北北海道屈指の好投手に挙げられている。
OBでもある兄が巨人の投手という話題性もあり、記事になる機会も多い。
だが、変化球でストライクがとれないこのままでは、残念ながら、「北北海道レベル」から抜け出すことは難しい。西村は「変化球でカウントがとれたら楽なんですけど、いつもこんな感じです」と言う。捕手の木村昴亜が「いいまっすぐなので、3-1からでもあまり打たれたことはありません」と言うように、地域柄、強豪校との対戦も少なく、これで抑えられてしまうため、どこかで「これで大丈夫」という気持ちがあるのだろう。
とはいえ、それで満足していては、これより上のレベルに行くことは難しい。
西村は180センチ、72キロの体格。能力や可能性は十分に秘めているだけに、もったいないと言わざるをえない。あくまで、予選は予選。北北海道は北北海道。夏の甲子園で10連敗している地区で抑える程度で満足することなく、常に全国レベルを見据えることが必要だ。そうしなければ、北北海道のレベルは一生変わらない。西村に限らず、北北海道の投手たちは、そこまで考えて日頃から練習してほしい。
(文=田尻 賢誉)
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遠軽 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 3 | 7 | ||||||||
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釧路江南 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
遠軽:西村、高橋康-木村 釧路江南:糸井、久本―小原