打撃スタイル、構え、声もそっくりな村上弟・慶太(九州学院)。大爆発するための課題とは
村上慶太(九州学院)
ひときわ大きな体。九州学院(熊本)の多くの選手に交じっていても、どこにいるかすぐに分かる。189センチ、93キロ。村上 慶太内野手(2年)の存在感は、兄譲りだ。
ヤクルト村上 宗隆内野手(九州学院出身)の弟・慶太は、来年夏の甲子園出場ラストチャンスに向かって、全力疾走している。兄は東京五輪での金メダル決勝弾をはじめ、2021年セ・リーグMVP、本塁打王としてヤクルトの優勝、日本一に大きく貢献した。大きな存在の兄の背中を追い続けてきた慶太も、九州学院の門をたたいて、飛躍を誓っている。大事な冬の時期をどう過ごし、夏に向かおうとしているのか。胸の内を聞いた。
2004年11月11日生まれ。熊本市立託麻南小4年「託麻南少年クラブ」で野球を始めた。長嶺中では熊本東シニアに所属。全国大会に3度出場した。右投げ左打ちも兄と同じだ。
村上慶太(以下村上) 中学生の時に兄がドラフト1位に指名されて、すごいと思った。それまであんまり野球のことは話してなかったが、自分も兄に追いついて、追い越したいと思うようになりました。
兄と同じ九州学院に進むと、1年秋の熊本大会から7番一塁で出場するようになる。しかし、思うようには結果が出ない。今年の春はスタメンから外れることもあった。チームは県大会で春ベスト8、夏は初戦敗退した。新チームとなった今年の秋は準々決勝で熊本工に延長11回、6対7でサヨナラ負け。来年春のセンバツは絶望的となって、甲子園へは夏がラストチャンスとなる。
村上 悔しかったです。自分の力のなさを痛感しました。絶対に夏に甲子園に行きたいと思いましたし、そのためにはもっと体を大きくしてパワーをつけないといけないと思いました。ベンチプレス100キロが上がるようにまでになりたい。
恵まれた体に満足せず、さらにパワーをつけることを目標に挙げた。さらに、打撃フォームの習得にも取り組む。
村上 割れを作りたいんです。構えたところで一度、右足に体重を乗せた後、軸足となる左足に重心を移動させ、打ちにいくイメージです。そして軸で回ることを大切にしています。
自宅での素振りでは「兄のお下がり」バットを使用している。バッティンググローブも「兄のお下がり」。毎日かかさず、兄の背中を思いながらフルスイングしている。練習でのティー打撃のスイングも、柔らかさが特徴で、手の長さもあってか大きな円を描いているような印象がある。スピードと力強さはこれからだろうが、独特の柔らかさは天性を感じる。
村上慶太(九州学院)
兄は1年夏の初戦、高校生初打席で満塁弾を放ったが、慶太はまだ公式戦でホームランを打ったことがない。練習試合での4本が高校通算本塁打数だが、その1本目は記念すべき1発だった。秋の大会へ向けての初めての練習試合。九州学院のグラウンドで藤蔭(大分)と練習試合をしたが、その最初の打席、最初のストライクをスイングし左中間へ運んだ。新チーム1号でもあった。村上本人も「外角の球を上手く打てました」を振り返る。兄も高校時代とプロの公式戦初打席で本塁打を放った。やはり同じ血が流れている。
部長時代に兄を見ていた平井誠也監督は「声もそっくりだし、打席の構えもそっくり。長打力もあるし、逆方向に大きい打球が打てるのも似ている。4番として頑張ってほしいです」と期待をかけている。当初、新チームは園村 慧人(けいた)外野手(2年)が主将でスタートしたが、秋の大会後は副主将だった村上も主将となり「主将2人体制」で臨んでいる。
村上 自分の持ち味は声の大きさ。チームを盛り上げていきたいです。園村とはうまく役割分担してやってます。
兄に憧れ、目標にしてきたが、ここまでは兄のように結果はともなってない。しかし兄を育てた坂井宏安前監督は「いいものを持ってます。兄に比べて少し体の成長が遅いんで、これからが伸びてくると思う。体ができてきたら期待できます」と太鼓判を押す。
村上 将来は日本を代表する選手になりたいです。目標を高くもってやりたい。日の丸をつけられる選手になりたいです。
ドラフト1位指名、東京五輪金メダル、リーグ優勝、日本一、MVPと、まぶしいばかりの兄の存在をまぶたに焼き付けてきた。来年夏の大躍進へ、「金の卵」が本物のスラッガーへと生まれ変わろうとしている。
(記事:浦田 由紀夫)