目次

[1]今もなお浸透する逆方向への意識
[2]成功と失敗を繰り返して選抜で飛躍を


 センバツの優勝候補の一角の1つとして数えられる東海大菅生。今年は出場全32校の中でも高い走力を土台とした総合力で相手を圧倒するスタイルで全国の舞台まで駆け上がってきた。そんな東海大菅生の練習を見ていると、一際快音を響かせる1人のスラッガーに目が留まった。

今もなお浸透する逆方向への意識


 身長175センチ70キロ。すらりとした体型がバッティングゲージに入ると、スイングスピード149キロを計測する鋭いスイングでボールを捉えてフェンスオーバーする打球も連発する。ポテンシャルが高いことがすぐにわかったが、実際に昼休憩に取材を聞くと、「テニスやサッカー。あとは水泳もやっていて、どれもそれなりにできていた」とやはり幼いころから運動神経は良かったようだった。

 終始爽やかな顔と、真剣な眼差しで話してくれたのが印象的だった千田 光一郎。旧チームからの経験者で、昨秋までで高校通算12本塁打。大会では1番打者として切り込み隊長として打率.484、5打点と言う成績をマーク。さらに大会終盤ではクローザーとしてマウンドに上がり140キロを計測する真っすぐを投じる。今年の東海大菅生には欠かせない存在である。

 そんな千田は小学2年生の時に野球に出会い、様々スポーツをやりながらも「一番楽しくて上手くいっていた」と言うことで現在も継続することになった。それから中学生になると、「高校野球で活躍するにはボールに慣れる必要がある」と考えると、白山シニアへ入団することを決意する。

 親からの勧めもあって県内屈指の強豪チームに飛び込むが、ボールは硬式に変わる。「ボールの大きさや重さ、バットに当たった感触など軟式とは違うところがあって苦労しました」とスムーズに硬式野球へ順応できなかった。

 特に大きな変化があったのはバッティングだったという。

 「軟式はゴムで出来ているので、ぶつけるといいますか衝突する感じでミートさせれば、体のパワーで打球は飛ばせました。でも硬式になって、特にレベルの高い速球派投手と対戦すると小学校の時のような打ち方だとダメですので、どうやってボールの軌道にバットを入れられるか考えるようになりました」

 小学生までは突っ込み気味だった打ち方で体重を活かすような形だったが、インパクト時に身体を後ろに残すようにフォームを意識。当時はイチロー選手を見て自身のフォームの参考にするなど、創意工夫を凝らし続けてきた。

 指導者からも様々なアドバスをもらい、1つ1つ自身の頭の中で理解して実行する。鵜吞みにせずに納得しながら取り組む中で最も心に響いたのが「逆方向の方が飛ぶよ」という言葉だったと振り返る。

 「小学生の時から親やコーチの人にも『逆方向に打てばフォームは良くなる』とは言われ続けてきたことなんですが、流し打ちで飛ばせるとは思っていなかったんです。けどやっていくうちに本当に飛ばせるようになってきたので、今も大事にさせてもらっていて。本当に大きかったと思います」