秋の不調から一転して150キロ級の剛速球。関戸康介(大阪桐蔭)が語る「復活のプロセス」
小園 健太(市立和歌山)、畔柳 亨丞(中京大中京)と並び、選抜甲子園大会でビッグ4として大きな注目を浴びる大阪桐蔭・関戸 康介。明徳義塾中時代から騒がれた大器は、昨夏の大阪府独自大会では154キロを叩きだし、周囲の度肝を抜いた。
しかし、昨秋は4試合7イニングにとどまり、150キロ級の速球は影を潜めた。3月3日の合同取材日で関戸は、この冬、心身共に充実したトレーニングを積めたことを口にする。
事実、解禁明けの練習試合では剛速球を披露し、順調な仕上がりを見せている。
関戸本人と石田寿也コーチに歩んできた「復活のプロセス」に迫る。
不調の原因をなぜ下半身と突き止めたのか?
石田コーチに見守られながら投球練習を行う関戸康介(大阪桐蔭)
不安を吹き飛ばすようなボールを投げ込み、注目度がひしひしと高まっている関戸。
振り返れば、半年前の近畿大会決勝・智弁学園戦では3イニングを投げて被安打3、1四死球、2失点と本調子とはほど遠い状態だった。
その中で大きな課題として浮かび上がったのは制球力。試合の中でもボールのバラつきが目立ち、この冬は原因である下半身の強化を中心にトレーニングを積んできた。
「秋は全く投げる機会がなく悔しい思いをして、それはもう自分の実力不足ですが、この冬はゼロから(フォームについて)石田先生と話してきました。
中でも一番は下半身の弱さだと思います。右足のアクセルの強さに対して、ブレーキとなる左足の受け止める力が弱いので、左足の強化を中心に下半身を安定させることを目指してきました。片足だけのスクワットであったり、特別変わったメニューではありませんが左足にフォーカスを当てたトレーニングをやりました」
関戸の投球フォームは、左足を高々を上げた後、軸足である右足をプレートに強く押さえつけた後、鋭く蹴り上げ、その勢いを生かして真上から振り下ろす投球フォームだ。178センチと現代の投手としては決して大きくないが、並外れた強肩を生かす身体操作性を持ったことによって、150キロ超えの速球を投げ込んできた。
しかし昨秋は股関節を痛めた影響で、柔軟性を活かすための筋力の強さがなく、フォームの乱れにつながり、不調の原因となった。
この冬は怪我の防止、下半身の安定、フォームの再現性、様々な目的を持って下半身の強化を行ってきた。
「体の状態は良い形で上がってきていると思います。紅白戦でも投げてきましたが、あとは実戦でどれだけ甲子園までに感覚を掴めるかだと思います」
紅白戦では150キロを計測し、復活のプロセスは順調に歩めている。
こうした原因を突き止め、修正作業を行い、レベルアップできるのは関戸のある一面が支えている。
[page_break:常に100点満点を追い求め、90点では喜ばない]常に100点満点を追い求め、90点では喜ばない
石田コーチと対話する関戸康介(大阪桐蔭)
関戸の人間性を一言で表せば「ストイック」そのものだ。
高校1年時のインタビューでは、過去の大阪桐蔭OBたちも苦労した寮生活についてこう語っている。
「僕は野球の面において世界一になりたい目標があります。寮生活の環境には自分にはとても合っていると思いますので、何不自由ない生活を送れているので、中学から寮生活を経験させてくれた両親には感謝をしています」
これほど前向きに語っている大阪桐蔭の選手は根尾昂(中日)しか思い出せない。また当時のインタビューは、読書好きの一面も語ってくれたが、それはチームメイトも驚くほどの読書量で、前主将の藪井 駿之裕(大商大)が退寮する際には、たくさんの本を譲り受けた。
その探究心の深さには、投手陣の指導を行う石田コーチも驚きを口にする。
「常に100点満点を追い求めているので、90点では喜びません。ピッチングだけでなく、バントをするにしろ、走るにしろ、全てにおいてこだわりがあります。
向上心があるからいつも本を読んでいて、私の職員室にある本を『これいいですか』という感じで。野球の技術的な本やメンタルトレーニングの本、あとは自己啓発の本やピッチングフォームの雑誌とか、色んな本を見ながら自分でこだわって練習しているのかなと思います。タイプ的には根尾と一緒ですよね」
こだわりは野球ノートにまで及ぶ。
ピッチングの時に感じたことだけでなく、寮に戻って客観的に振り返った時の感覚を大事にしており、「実際の感覚」と「客観的に見た時の感覚」を照らし合わせながらノートを書くことを心掛けている。
「ピッチングの前に意識したことや、ピッチング後にキャッチャーと話したこと、石田先生に教えていただいたことは忘れないうちにメモするようにしています。(戻ってからでは思い出せない)感覚的な部分や体のバランスもありますし、その方が野球ノートは充実すると思います」
読書、野球ノートの一面から見ても、関戸の本質が伺えるだろう。
22日、選抜甲子園の初戦は智弁学園とのリベンジマッチが決まったが、宿敵の撃破に向けて、強い意気込みを口にする。
「今まで悔しい思いを持っていたので、初戦で当たったことでより一層気合いが入ったと感じています。どこと対戦してもやることは変わりませんが、秋に負けてる分、悔しさを持って戦えるかなと思います
憧れの存在には野茂英雄氏を挙げる関戸。高みを目指し続ける男の日本一への挑戦が、間もなく始まろうとしている。
(記事=栗崎 祐太朗)
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