加藤を変えた「ストレッチ」「ネットスロー」「ウエイトトレーニング」



加藤翼(帝京大可児)

 帝京可児に入学して、加藤が日々、欠かさず行ったのはストレッチだ。中学時代まで怪我続きだった加藤は就寝前の30分~1時間は行った。眠いときは何度もあった。ただ柔軟性こそ一番大事だと思っていたのだ。

 「前屈は足首ぐらいしか手が届かなかったので、それぐらい体の硬さはチームで一、二を争うほどだったと思います。

 球速が上がるにつれて故障の確率が高まると思っていました。今の自分に目を向けたら、体を柔らかくすることが一番大事だと思っていました。 

 これを習慣にした時は、本当に眠い時もあったのですが、ストレッチだけは絶対にやらないと行けないと思って、今ではチームで一、二番目といえるほど柔軟性を身につくようになりました。前屈もつくようになって、開脚も180度開くようになりました」

 インタビュー後に実際に開脚を見せていただいたが、180度ぴったりとつくことができていた。そして普段のキャッチボールの前から入念にストレッチを行ってから入る。怪我防止のためには最善のことを尽くしてから野球の動作に入る。練習の一部分を見るだけでも意識の高さが伝わってきた。

 続いて取り組んだのは投球フォームの修正だ。
左腕のグラブを突き上げて、縦回転で振り下ろす投球フォーム。山本 由伸千賀 滉大を組み合わせたようなフォームと言う声がある。このフォームは当初から出来上がったわけではない。最初は横回転が強い投球フォームだった。

「入学当初は横に大きい左手の使い方をしていたので、横回転の投げ方となっていて、今とフォームが全く違います。
やはり横回転だとスライダーしたりシュートしたり、いろんな変化をしてしまうので、あと自分自身、コントロールもすごい悪かったので、上下左右の動きがぶれていました。そこから上下だけのブレにしようと思って。1年秋の県大会が終わった後に、『左手を上げたらどうだ』と田中祐貴コーチ(元ヤクルト)から教わり、そのフォームを変えた翌日から球質が変わった感じがしました」

 さらにこのフォームを固めるために行ったのが、傾斜を使ったネットスローだ。木の台に踏み出し足を乗せて、真上から振り下ろすようにしてネットに投げ込む。加藤は「縦回転で投げるための練習でとても大事な練習です」と、さらにキャッチボールでも工夫を凝らしている。

 取材日のキャッチボールの様子を見るとただ真上から振り下ろすだけではなく、サイドスローだけではなく、アンダースローも行う。この狙いについて加藤は「いろんなフォームで投げることで肘の加速、しなりをつかむ1年前からやり始めています。中学生の時の発想だったらやっていないですね。中学生の時はそういうフォームでやれば、アンダー、サイドになってしまうという考えしかありませんでした。今ではそういうやり方も試せば、自分のレベルアップにつながると思ってやっていますし、実際にピッチングにも良い影響を与えています」

 またこうしたドリル的な練習だけではなく、ウエイトトレーニングなどもみっちり行った。
加藤が驚異的なレベルアップができたのは、練習の意味を理解し、取り組む事ができたことが大きいだろう。後編では、加藤の球速の変遷について取り上げていきたい。

取材=河嶋 宗一


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