高校通算40発の福岡屈指のスラッガー・久木田和志(小倉工) 後ろを振り返らず「日本一のスラッガー」へ
春夏合わせて17度の甲子園出場を誇り、2020年には創部100周年を迎える福岡の古豪・小倉工。
その中で1年生から4番に座り、打線を牽引するのが久木田和志だ。175センチ・91キロの屈強な体格から繰り出すパワフルな打撃が持ち味で、高校通算本塁打はここまで40本。秋季大会では、プロ野球のスカウトも視察に訪れ、福岡県を代表する打者の一人になった。
そんな久木田が掲げる目標は、ずばり「日本一のスラッガー」だ。そのために久木田はどんな冬を過ごしているのか迫っていく。
陸上部に入門して瞬発力を鍛える
久木田和志(小倉工)
「久木田は今、毎朝陸上部の練習に参加しているんです。パワーはありますが瞬発力が無いので、そこを陸上部で鍛えてもらっています」
そう語るのは小倉工の若き指揮官・牧島健監督(31)だ。
1年秋の時点で11本の本塁打を放った久木田は、2年生に入るとさらにスケールアップして、通算本塁打は40本に到達。体重もこの1年間で6キロほど増加し、大きなスケールアップに成功したが、その反面、瞬発力の無さが課題として浮かび上がってきたのだ。
小倉工の陸上部で指導を行っているのは、2007年世界陸上で日本代表だった吉形政衡氏。
日本のトップレベルを駆け抜けた指導者の下、毎朝必死に走り込む久木田は体の変化に手応えを感じている。
「周りからは瞬発力や走るスピードが無いと、上のレベルでは通用しないと言われています。バッティングのキレにも繋がってくると思いますし、守備の動きにも繋がってきます。
下半身も少しずつ変わってきて、走るスピードも変わってきたので続けていきたいです」
久木田が、ここまで貪欲にトレーニングに打ち込むのには理由がある。
「日本一のスラッガー」、そして「高卒でプロ入り」という大きな目標を掲げている為だ。
2019年は、1年間で29本の本塁打を放って大きな成長を遂げたが、その一方で秋季大会では厳しくマークされるようになる。
執拗なまでのインコース攻めに、厳しいアウトコースへの変化球。自分のバッティングをさせてもらえなくなり、久木田はさらなるレベルアップの必要性を感じた。
「デッドボールも増えましたし、本当にインコースのギリギリを攻められることが多くなりました。そして、最後は外のスライダーで来るとわかってるのに空振りすることも多くて、克服しないといけないなと感じました」
[page_break:ライバル視するのは東海大相模・西川僚祐]ライバル視するのは東海大相模・西川僚祐
久木田和志(小倉工)
そんな久木田がライバルとして意識するのが、東海大相模の西川僚祐だ。
西川はここまで高校通算53本塁打を放っており、世代トップを走っている。「日本一のスラッガー」になるためには、まずは本塁打の数で西川を越えなければならないと久木田は話し、残りの高校野球生活で必ず追い抜きたいと意気込みを語る。
「この世代で一番ホームラン打ってるのは西川くんなので、やっぱり意識しますね。高校通算本塁打は80本以上は打ちたいと思います」
久木田がここまで本塁打の数にこだわる背景には、牧島監督の指導がある。久木田が1年生の時、牧島監督は「ウサギとカメの話」を聞かせることで高い目標を設定することの重要性を説いた。
「ウサギとカメが競争する昔話は有名ですが、あの昔話は私たちに何を伝えたかったかというと、ウサギは後ろを振り返ったから負けたということです。
山の頂上を目指して走っていたのに、ウサギは途中から自分より力の劣るカメに勝てばそれで良いと考えるようになりました。後ろを振り返った時点で、ウサギの進歩はそこで止まってしました。
久木田には、後ろを振り返らずに高い目標を目指せと言いました」
久木田はまだ、自身の力はプロ入りのレベルに達していないと話すが、高卒でプロ入りする目標はブレない。またチームとしても、甲子園出場という大きな目標を目指して戦っていくことになり、久木田は最後の夏に向けて強い意気込みを見せる。
「チームはずっとベスト8やベスト4で止まっていて、その壁は破らないといけません。特に今年は、野球部の創部100周年の節目の年なので必ず優勝したいと思っています」
自らが目指す山の頂上に久木田が到達した時、小倉工の甲子園出場は大きく近づくはずだ。まずは春季大会で、久木田がどんな成長した姿を見せるか注目だ。
(記事=栗崎 祐太朗)
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