一流スラッガーへの道 オリックス・吉田正尚(敦賀気比出身)の打撃調整法
今や球界を代表するスラッガー・オリックスの吉田正尚(敦賀気比出身)。173センチとプロ野球選手としてそれほど大きい体格ではない吉田がなぜここまでのスラッガーへ成長できたのか。
それは小学生のときから深い探求心をもって打撃面を追求する姿勢があったから。インパクトの瞬間に最大限の力を入れるには?遠くへ飛ばすには?また野球界に言われる打撃の常識を常に疑う姿勢を持ちながら、吉田しかない飛距離とフルスイングを作り上げた。
吉田のスラッガーとしての生き様は記事、映像によって多くのアマチュア選手に影響を与え、多くの選手が憧れを抱いている。
今回は吉田が一流の打者へ育つ過程や、これまであまり語られなかった対応力を広げるためにはどうすればいいのかなど、実技にまで踏み込んでいきながら、打撃上達法に迫っていく。
1年目~2年目のケガがあったからこそ体のことを勉強するきっかけになった
インタビューに答える吉田正尚(オリックス・バファローズ)
まず吉田が直面したプロの壁は一軍に出場しつづける体力だった。即戦力として期待されながらもケガで戦線離脱をしてしまう。
「合同自主トレですぐ怪我をしてしまって、十分なキャンプを過ごせませんでした。オープン戦の最後の3試合くらいでポンと打って開幕スタメンで出してもらえたんですけど、やっぱり準備ができていない分、また1ヶ月くらいで腰の怪我で離脱してしまいました」
ただそのケガも吉田は前向きにとらえていた。
「(プロに入って)早い段階で怪我をしてしまったので、体について勉強する時間もありましたし、良い経験になりました」
プロ1年目は10本塁打34打点、打率.294と好成績を残した。そしてオフにはハンマー投げで活躍した室伏広治さんとトレーニングを行って、トレーニングに対する考えが深まった。
「まずは自分の体を知ることだと思います。知った上でどうコントロールするか、やっぱりバランスがすごく大事という話をしていただきました。一箇所ばかり鍛えてもいけないし、全身をバランスよく強くしなやかにしていくことがすごく大切かなと思っています」
ケガを防ぐためにトレーニングに対する考えを深めていったが、まずは野球につなげるトレーニングになっているかを重点に置いている。
「トレーニングをしている中で体の使い方、インパクトで常に「100」に持っていけるようなスイングを心がけて、全身の力をインパクトに集中させることを意識してやっています」
吉田は年々、出場機会を増やしていき、プロ3年目の2018年には143試合にフル出場。2019年もフル出場を果たした。
打撃調整法は自分に「これが大事」というものを作らない
打撃練習中の吉田正尚(オリックス・バファローズ)
高度な打撃技術を1年間通して発揮できるようになった吉田。それはトレーニングだけではなく、日々の打撃練習の考え方についても、意識が高いプロ野球選手の中でも、一歩、先をいっている。
「バッティング練習も『打たせてくれるボール』なので、それをポンと合わせるのではなく、特に全身を使って、下半身を使って手打ちにならないように丁寧に打つようにしています」
下半身を使って手打ちにならないように打つことを基本線として置きつつ、日々の状態によって取り組む打撃練習の内容は変わっていく。吉田は
「僕はこれが大事だ!というものはないですね。(他の選手は)素振りが大切とか言うかもしれないですけど、僕はそういったものは無いですね。状態に合わせたメニューにしていければいいなと思っています。たとえば、ここが少し調子悪いなと思ったらフロントティーを入れたり、こういう練習を入れようとか、その時の状態に合わせた練習を取り入れます。
また『今日ここが少し張っているな』と感じたら重点的にほぐしたりとか、そういったことを自分で感じ取って、疲労を残さないことも大切にしています。
だから打席に入るまでの準備、練習に入る前の準備、その前の準備、それが結局繋がっていくので、その準備は前の日のケアから始まって。そういうことの積み重ねだと考えています。」
(取材:久保聖也・栗崎祐太朗/構成:河嶋宗一)
吉田選手が語る打撃論はまだまだ続きます!お楽しみに!
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