Interview

井上広大(履正社)が最強の4番打者になるまで。奥川と対戦して自分の無力さを知った【前編】

2019.10.12

 今夏の甲子園で悲願の初優勝を成し遂げた履正社。強力打線を誇ったチームの中で3本塁打を放ち、全国制覇に大きく貢献したのが4番に座る井上広大だ。身長187㎝、体重97㎏と恵まれた体格の持ち主だが、ホームランを打てる秘訣はそれだけではない。高校3年間での成長やセンバツの負けから磨いてきた対応力について話を聞いた。

プロレベルの打撃に驚愕した入学当初

井上広大(履正社)が最強の4番打者になるまで。奥川と対戦して自分の無力さを知った【前編】 | 高校野球ドットコム
インタビューに答える井上広大

 子どもの頃から他の同級生と比べて背が高かったという井上。小学2年生の冬に習っていた柔道場の先輩に誘われてソフトボールの体験練習に参加したのが、野球に出会うきっかけだった。そこで初めてバットを握った井上はいきなりホームランを放ち、楽しさに目覚めたのだという。

 中学では東大阪シニアに入団し、野球に転向。ボールの違いにも戸惑うことはなく、1年生から上級生に混じって試合に出場していた。チームの先輩が履正社に進んでいたこともあり、チームの代表に「履正社で甲子園に行きたい」と自らの意思を伝えた。そこで代表が岡田龍生監督に話を持ち掛けてくれたこともあり、履正社に進学することが決まった。

 井上が履正社に入学した時には、後にドラフト1位でロッテに進むことになる安田尚憲が2学年上にいた。長打力には自信のあった井上だが、安田の打撃を見て驚いたという。
「自分の引っ張った打球が安田さんの流した打球と同じ距離だったのを見て、これがプロに行く人のバッティングなんだなと感じました。高校に入って安田さんみたいに逆方向に飛ばしたり、バッティングの技術が高くなるのかなという不安はありました」

 安田と同じ組で打撃練習を行うことが多かった井上は、ゲージの後ろから打席内での動きや始動のタイミングなどを見て、どん欲に学ぼうとしてきた。その中でも参考になったのは積極性だ。
「試合でも消極的にならず、ファーストストライクから積極的に振っていく姿が印象深いので、そういった面は自分も真似しないといけないと感じました」

 プロレベルの打撃を目の当たりにしながらも、井上自身も自慢の打力をアピールして、1年夏にベンチ入りを勝ち取った。だが、2年夏までは大阪桐蔭の高い壁に跳ね返されてきた。特に2年夏は1点リードの9回二死から逆転負け。6番レフトでスタメン出場し、試合途中でベンチに下がっていた井上はこの試合をこう振り返る。
「あと1アウトで勝てると思った時点で、大阪桐蔭の最後まであきらめない気持ちに負けたのかなと思います。ベンチでもあとアウト1つで勝てるという声が出ていたので、それに対して、大阪桐蔭の何としてもという気持ちが勝ったと思います」

[page_break:センバツでの敗戦で自分の力の無さを悟った]

センバツでの敗戦で自分の力の無さを悟った

井上広大(履正社)が最強の4番打者になるまで。奥川と対戦して自分の無力さを知った【前編】 | 高校野球ドットコム
井上広大

 新チームでは副主将となり、4番としてチームを牽引する。秋の大阪大会では大阪桐蔭にリベンジし、近畿大会でも4強入り。センバツ出場を確実なものとした。その一方で悩まされていたのが、右膝の痛みだ。1年冬から痛みに耐えていたが、近畿大会後に手術を実施。走れるようになるまではウエイトなどで上半身を先に鍛えることにしたが、満足に練習できない不安も当然あった。

「練習を見ているだけで練習したい気持ちはありました。戻ってきたら『お前は4番を打てる』と言われていたんですけど、冬でみんなレベルアップする時期なので。そこで自分が練習できないのは悔しいですし、なんで手術をしないといけない体になったんだろうという気持ちはありました」

 それでも万全な状態でセンバツに臨むことができた。初戦で対戦したのが奥川恭伸を擁する星稜だった。大会ナンバーワン投手を相手に履正社は3安打完封負け。井上も4打数無安打2三振に抑えられ、9回のチャンスでも併殺に倒れて、最後の打者となった。

「何としてもセンバツで優勝するという気持ちをもってやってきたのに、3安打完封という負け方をして、力のなさを感じたゲームとなったと思います。最後に自分が打っていたらチャンスがあったかもしれないのに、みんなが作ってくれたチャンスを自分が潰してしまった申し訳なさはありました」

 全国制覇を目指した中での挫折。岡田監督からは「奥川君を打てないと全国優勝はできない」と言われたという。チーム史上初となる春夏連続の甲子園出場、そして優勝を目指すべく、再スタートを切った。

 前編はここまで。後編では見事全国制覇を果たした最後の夏の甲子園までの取り組みについて語ってもらいました。後編もお楽しみに。

(取材=馬場 遼)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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