第957回 前U-15侍ジャパン監督・清水隆行氏が読売ジャイアンツ時代に実践し続けた「一流の習慣」vol.32019年06月15日

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【目次】
[1]冷静で客観的な頭脳を保つために
[2]「勝ちたい」より「負けたくない」


 読売ジャイアンツと西武ライオンズで現役14年間プレー。1485試合に出場し、通算打率.289、最多安打のタイトルにベストナイン選出、チームの優勝に幾度も貢献した華々しい実績。清水隆行氏の現役時代を知る人なら、間違いなく「一流選手」と言うだろう。だがその裏にあった意外な気持ちと、それに伴う活躍の秘訣。もし悩みの沼にはまっている高校球児がいるとしたら、清水氏の言葉から救いのヒントが得られるかもしれない。

 最終回となる今回は、プロ野球時代に見た「一流選手」の習慣や、昨年のU-15日本代表選手の活躍を振り返っていただいた。

◆前U-15侍ジャパン監督 清水隆行氏(元読売ジャイアンツ)インタビュー 「怖さ」は「強さ」になる vol.1
◆活躍するために持つべき3つの視点とは 前U-15侍ジャパン監督・清水隆行氏(元読売ジャイアンツ)vol.2

冷静で客観的な頭脳を保つために



ジャイアンツ時代の一流選手を振り返る清水隆行氏

 ここまで「考え方を鍛える」方法を述べてきた。しかし、これを実践することは簡単ではない。人間には感情がある。野球という勝負ごとに真剣に取り組むほど、比例して喜怒哀楽も激しくなるのが自然だ。そんな状況下で常に頭を冷静に、クリアにしておくことは生半可なことではできない。

 「感情を一定に保つというのは、やろうと思ってできることではありません。僕も若い頃は感情の起伏が激しく、とても見本となるような行動はとれていませんでした。でも、プロにはお手本となる存在がいましたので」

 清水氏がお手本としたのは、ジャイアンツ時代、同じ外野手でレギュラーだった松井 秀喜選手と高橋由伸選手。詳細は著書に譲るが、プレー面でもメンタル面でも、そして野球に向き合う姿勢の面においてもお手本になったという。

 「自分が取り入れたのは同じことを続けること。調子がよかろうが悪かろうが、冷静だろうが興奮していようが、決めたことは必ずやる、と」

 清水選手が決めていたのは――これは松井選手も高橋選手も同様だが――試合後にバットを振ることだった。

 「ホームだったら東京ドームの室内練習場で、ビジターなら宿泊先のホテルのスイング場で、必ずバットを振ってました。時間の長短はあっても、振らない、という選択肢はなかった。単純なことですけど、経験を積むにつれ、とても大事なルーティーンだと思い知らされました。そう思わせてくれたのは松井秀喜の存在があったからです。彼はずっと振ってましたから」

 例えば東京ドームで試合が終わったら、軽く着替えて水分や軽食をとったらそのまま室内練習場へ直行。そこで黙々とバットを振る。スイング時間は日によって変わる。すっきりしない場合は長くなることもある。



清水隆行氏

 「でも僕が特別だったわけでなく、当時のジャイアンツの選手はみんなやってました。思い思いに室内練習場に来て、誰もしゃべらずバットの振る音だけが聞こえる時間が続く。みんな個々のリズムで、終わった選手から『お疲れ様です』『お先です』と言って出ていく。それが当たり前の環境であったことは、自分にとってとても幸運だったと思います」

 この「試合後の素振り」は個々が試合の結果を振り返るたいせつな時間だったのではないか。また、毎試合後同じ行動を繰り返すことは、自分のメンタルをリセットし、翌日へフラットな状態で臨む状態を作り上げるルーティーンにもなる。

 「当時のジャイアンツの外野手は、僕の他が松井 秀喜と高橋由伸。大スターが2人いるわけです。ということは、新しい外野手が補強されたら競わされるのは僕になる。正直おもしろくない気持ちになった時もあります。
 でも、そこで腐ったとしても心配してくれる人はいません。代わりはいくらでもいるわけで、腐っても損するのは自分だけ。であれば、自分がやるべきことをするしかない。試合に出る出ないは自分でコントロールできることではありません。コントロールできるのは結果を出せるように最善の準備をするだけ。そう考えられるようになってからは、周囲の声などに惑わされることもなくなりましたね」

 選手も人間である以上、様々な気持ちが思考に入り込んでくる。そんな気持ちの波をある程度抑えることが、的確な考え方を持ち続けるには必要になってくる。とすると、何か自分なりのルーティーンを見つけ、平常心を保つ、もしくは平常心に戻る時間帯を設けることが有効だ。清水氏はさらりと言うが、プロの世界での周囲の声は想像以上に大きい。そんな外野の声に惑わされず、自分を保ち、考え続けることができたのは、お手本を見習いつつ見つけたルーティーンがあったからに他ならない。


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プロフィール

清水隆行
清水 隆行(しみず・たかゆき)
  • 浦和学院[/team]-東洋大学-読売ジャイアンツ
  • ポジション:外野手
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