2014年「最速153キロ・NPB入り」への確かなメカニズム
「7年目の結実」。2014年、東北楽天ゴールデンイーグルス(以下、東北楽天)・ドラフト5巡目指名を受け、晴れてNPBの世界に進む四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックス(以下、徳島)入野 貴大投手。
その決め手となったのは、27試合登板で16勝3敗2セーブ・129回3分の2を投げ、被安打133、奪三振126、与四死球38、防御率2.38。チームを初の独立リーグ日本一に導き、自身も初の年間MVPに輝いた圧倒的な成績もさることながら、昨年から一気に6キロスピードを伸ばし、最速153キロに達したストレートであった。ではなぜ、入野投手は25歳にして球速を上げることができたのか?
今回は、そのキーマンである徳島ストレングス&コンディショニングトレーナー・殖栗 正登氏とのクロストークを企画。実際に球速アップとNPB入りの確かなメカニズムを積んだ徳島県内某所にある球団トレーニング施設内で、これからNPBを目指す選手たちにも参考となるであろう「一年間のプロセス」に迫った。
第一印象は「メンタル的なチャレンジ精神と視野の広さ」

入野 貴大投手
――まず殖栗トレーナーから聞きましょう。2013年は高知ファイティングドッグス(以下、高知)のトレーナーだった目から、「徳島の入野投手」をどう捉えていたのですか?
殖栗 正登・ストレングス&コンディショニングトレーナー(以下、殖栗) 井川 博文(愛媛マンダリンパイレーツ<以下、愛媛>2011年在籍、2012~2013年・高知。昨シーズンに最速150キロをマークした右サイドハンド)から、入野のことはよく聞いていました。「愛媛で仲がよかった」ということと「球が速い」ということを。対戦相手としては8回に入野が出てくると「イヤだなあ」と思っていましたね。
――「イヤだなあ」というのは?
殖栗 先ほど言った「ストレートが速い」ことに加え、彼が出てくると「徳島・勝利の方程式」に入りますから。その前の福岡 一成もよかったですから、7回から福岡・入野・(オナシス・)シレットと出てくると顔を見るのがイヤでした(笑)。絞り球とかをしっかり決めても打てなかった。(2013年8月21日に1対0の場面で)迫留(駿・現ルートインBCリーグ・石川ミリオンスターズで左腕投手)が同点の一発を打った時くらい?
入野貴大投手(以下、入野) そうですね。あの時はやられました。
殖栗 その時は確か真っ直ぐでしたけど、140キロ中盤のボールを集めて最後はフォーク。そんなイメージでした。
――そんな2人が11月の「Winter league」で、長い時間を共に過ごすことになります。
殖栗 まず彼がこのリーグに参加してくれたこと。本来ならば参加する必要のないレベルの高い選手が来ていたことに正直、感動しました。さらに理由を聞いてみると「NPBからの指名がなかったので、MLBやその他の国でもどこでもいいから、レベルの高いところでプレーしたい」という。井川もそうでしたけど、「上のリーグの環境でないと技術的レベルを高められない選手を、どうにか上のリーグに行かせてあげたい」と改めて思いました。加えて入野にはメンタル的なチャレンジ精神や視野の広さを感じました。
入野 僕もこの時点では全体練習も終了していましたし、自分は野球も好きですから。徳島の坂口 裕昭代表から「こんなものもあるよ」と言って頂いた時点で、すぐに「行きます」と返答しました。
実は殖栗さんとは阪神2軍との交流戦(2013年2月27日・安芸球場・5対3で勝利)でリーグ選抜チームに選ばれたときにはじめてお会いした時から「知識も豊富で色々なトレーニングをしてくれるな」と思っていたんです。そして実際やってみたら変わりましたね。