第96回選手権京都大会 龍谷大平安、78チームの頂点に!今大会を振り返る!!
大波乱の京都を王者・龍谷大平安が制す
ベスト4は全て打撃のチーム
決勝で8回無失点の好投をみせた元氏 玲仁 (龍谷大平安・2年)
京都鳥羽、京都外大西、京都成章、京都翔英、立命館宇治が3回戦までに敗退。有力校が次々と大会序盤で姿を消し、ベスト8に残ったシード校は龍谷大平安1校のみ。
波乱と番狂わせが相次いだ大会をそれでも地力で勝る龍谷大平安が制した。
龍谷大平安は初戦と2戦目に当たる3回戦こそ打線がつながりを欠いたが、以降の3試合は全てコールド勝ち。準決勝までの5試合を37得点6失点で勝ち上がると京都すばるとの決勝では10対0で完勝し、2季連続の甲子園出場を決めた。
惜しくも準優勝となった京都すばるは決勝では完封負けを喫したものの売りは打線。準決勝までの6試合を68安打18盗塁の攻撃力と山田陸(2年)、里見龍志(2年)の両2年生右腕らの継投で勝ち上がった。
ベスト4の山城も南丹戦で16得点を挙げるなど打線が強力。序盤からリードを奪い主導権を握った状態で優位に進める試合が多かった。
同じくベスト4の東山も好打者・澤谷博雅(3年)が牽引する打線が自慢。準決勝では龍谷大平安の主戦・高橋奎二(2年)に6回途中で7安打を浴びせ攻略に成功、リリーバーの中田竜次(3年)を引きずり出すなど準々決勝に残った8校の内6校が公立校という展開の中、私立の意地を見せた。
相次ぐ公立校の金星
京都桂は昨夏準優勝の京都鳥羽に、洛東は4年ぶりの優勝を狙った京都外大西に、北稜は秋3位、春準優勝と安定した成績を残していた優勝候補の一角・立命館宇治に競り勝つ金星を挙げた。
宮津も昨夏ベスト4の京都廣学館を1点差で破ると、プロ注目の佐田梨貴人(3年)擁する京都国際をあと1歩のところまで追い詰め大方の予想を覆す大健闘を見せた。
大会序盤に相次いだ有力私立の敗退は裏を返せば、公立校の躍進に他ならない。
中でも快進撃を見せたのが乙訓。
初戦でシーソーゲームの末、サヨナラ勝ちで京都成章を破ると3回戦では昨春センバツ出場の京都翔英を撃破。4回戦ではセンバツベスト8の福知山成美に延長11回逆転サヨナラ勝ちと甲子園出場経験のある強豪私立を3タテ。
スタメン9人中8人が左打者という打線は粘り強くしつこくつなぎ、投げては三木郁弥(3年)、上堀佑太(3年)の2枚看板がゲームを作った。
準々決勝で東山に敗れ龍谷大平安への挑戦権獲得はならなかったが、最激戦区で見せた乙訓旋風は間違いなく今大会随一のインパクトを残した。
無死一塁ではバントよりもエンドラン
また今大会では「エンドラン」を活用する高校が目立った。特に先頭打者が出塁した時、素直にバントで送るよりもエンドランやバスターを仕掛けた印象が強い大会だった。
その結果、京都大会全77試合のうち、ロースコアと呼べる両チームとも3得点以下の試合が8試合だったのに対し、どちらかでも2桁得点を挙げた試合は何と倍の16試合。
印象的な試合が京都成章vs乙訓戦。京都成章が1点を追う7回無死一、二塁で9番打者がバスターエンドランを成功させ逆転に成功。しかしその裏、2点を追う乙訓がチャンスをつかむと無死満塁からのエンドランで試合を振り出しに戻すという激しい攻防が繰り広げられた。
また準決勝での公立校対決となった京都すばると山城は、試合開始前の時点で京都すばるが5試合で44得点、山城が4試合で38得点だった。もちろん四死球や相手のエラーも絡んでのものだが、先頭打者が出塁して無条件にバントをしていたのではこれほどの得点は入らなかったはずだ。
山城は南丹戦で2回までに9点をリードしたが中盤に満塁弾を浴びるなど猛追され、一時はリードが3点まで減ったことがある。
京都桂は京都すばる戦で初回に5点を先制したが最後は7対8でかわされた。圧倒的な大エースでもいない限り3点勝負ではなく、5点を取った後に更にどれだけ得点を積み重ねられるかが勝敗を分ける、そんな試合が数多く見受けられた。
京都戦国時代の幕開けか
大波乱の京都大会。終わってみれば、秋春夏と京都を3連覇、無傷の17連勝で頂点を極めた龍谷大平安の優勝で幕を閉じた。目立ったのは公立校の躍進と積極策多用。大げさに言えばどちらも高校野球の常識を覆す程のものだった。
もしこのトレンドが今後も続くようであれば今大会は数年後、京都の野球は2014年を境に時代が変わったと言われる節目の大会になっているのかもしれない。
(文=小中翔太)