今年もルーキー野手が定位置を奪わんとしている。宗山 塁(広陵/楽天)がショートのレギュラーを確保すれば、山縣 秀(早大学院/日本ハム)も華麗な守備を披露し、虎視眈々と定位置確保を目指している。また石伊 雄太(近大高専/中日)もスタメン出場の機会を増やし、正捕手争いを一歩抜け出しつつある。

 もちろんこの時期から一軍で結果を出すのは大卒や社会人の即戦力候補たちだが、二軍では高卒の野手たちが躍動中だ。

 12球団でもっとも多くの打席を与えられているのが、田中 陽翔(健大高崎/ヤクルト)だ。高校時代に甲子園制覇の実績もある田中は、本塁打もすでに放っており139打席でOPS.719。守備についた試合はすべてショートを守っており、期待の高さもうかがえる。

 同じくヤクルトのモイセエフ ニキータ(豊川/ヤクルト)は打率.137と確実性には難があるものの、高卒ルーキーでは12球団唯一となる複数本塁打(2本)を記録。パワーの片鱗を見せた。

 イースタン・リーグでは、田内 真翔(おかやま山陽/DeNA)、石塚 裕惺(花咲徳栄/巨人)、小針 大輝(日大鶴ヶ丘/DeNA)も結果を出している。

 なかでもドラフト1位ルーキーの石塚は、3月に左有鉤骨の骨折に見舞われたが5月に入って実戦に復帰。すでに2軍戦で22試合に出場し打率.280、OPS.708と結果を残している。巨人は育成契約を含めると100名近い大所帯で、高卒ルーキーは三軍で出場機会を与えられることも少なくない。それにもかかわらず、故障から復帰しすぐに二軍で結果をだすあたり、さすがドラフト1位の金の卵だ。

 田内も高卒ルーキーでは田中についで12球団2位となる122打席に立っている。そのなかでショートをメインで守りつつ、サードでも出場しOPS.641。守備の負担があるなかで高卒1年目からこの数字は上々だ。

 ウエスタン・リーグに目を移すと、石見 颯真(愛工大名電/ソフトバンク)と宇野 真仁朗(早稲田実/ソフトバンク)のソフトバンクコンビが目立つ。石見は19試合で打率.310、OPS.840、宇野も10試合ながら打率.391、OPS.819とOPSはそろって.800を超えている。特に石見は選球眼に優れておりチームトップ(20打席以上)のBB%(15.7%)を誇っている。

 近年の育成方針を見ると、ソフトバンクは高卒野手に早い段階で一軍での出番を与えられることはしない。このまま二軍で実戦経験を積ませ、来年以降に照準を合わせていくことになりそうだ。

高卒1年目の野手は二軍で体作りを行いながら、プロのスピードに慣れていくことが中心となる。チームの柱となるために鍛錬の時を経て一軍の舞台に立つ日を楽しみに待ちたい。

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