市立和歌山vs明秀学園日立
敵将も絶賛。力押しだけではない市立和歌山の149キロ右腕・米田天翼の魅力
市立和歌山先発の米田 天翼
<第94回選抜高校野球大会:市立和歌山2-1明秀学園日立(9回サヨナラ)>◇27日◇2回戦◇甲子園
前評判通りの投手戦となった。
市立和歌山の米田 天翼投手(3年)について、140キロ後半の速球で力押しするイメージが強い。初戦の花巻東(岩手)戦の投球では佐々木 麟太郎内野手(2年)に対し、高めの145キロ前後の速球で押して、2三振に奪うなど、直球に力がある投手と印象づけたが、明秀学園日立(茨城)戦の米田については「これほど引き出しが豊富な投手なのか」と思わせた。
直球は135キロ〜140キロだが、回転数が高く内外角で次々と空振りを奪う。ただ、米田自身、この日の直球の走りがよくなく、力押しの投球は無理と判断した。
「直球で押したいという気持ちはあったのですが、本調子ではなかったので。ましてや明秀学園日立高校さんも直球のタイミングで入ってくるということは分かっていたので、カーブだったり緩急をうまく使っていこうというのは試合前から決めていました」
110キロ前後のカーブや、125キロ〜130キロ前半のカットボールなどカーブや高速変化球を軸としたコンビネーションで、明秀学園日立打線を圧倒した。特に135キロを超えるカットボールの切れ味は超高校級。昨秋はテンポが悪くなったり、ボールが先行することもあり、単調な投球内容が気になったが、この試合については、テンポがよくなり、140キロ前後の直球を両サイドをきっちりと投げ分け、変化球も膝元にしっかりと攻める。高めに浮いたベルトゾーンをしっかりと叩いて長打にする明秀学園日立打線も、安打にはできるものの、ここぞという場面で切れの良い変化球が攻められ、長打にできない。
明秀学園日立の金沢監督は全く狙い球を絞ることができなかったと悔やむ。
「花巻東戦のように力でこられたらいけたような気がします。この試合は疲れもあるんでしょうが、逆にそれで力が抜けてリラックスして低めに丁寧に変化球を上手く交ぜながら投げられましたね。打席に立つ位置も6回から変更せざるを得なかった。6回からの攻撃を3回ぐらいからできていれば展開も変わったような気がする。それぐらい的を絞らせない投球をされましたね」
この点は市立和歌山バッテリーの配球が冴え渡っていたということだろう。金沢監督は米田を絶賛する。
「しっかりと自分を持っている。芯の強い投手だと思った。強気で行くところは強気で行き、相手をかわすところはかわす。もう少しで捉えれたと思うのですが、うちの打順の巡り合わせなども上手く行かず、崩せそうで崩せなかった。
彼の粘り強さ、芯の強さを感じて、改めていい投手だと思いました」
投げ合う明秀学園日立・猪俣 駿太投手(3年)も凄さを実感していた。
「直球で押してくると思ったのですが、どちらかといえば、かわしてきた印象があった。打席ごとに対策できなかった。絞りきれなかった。」
最後は米田のサヨナラ打でベスト8進出を決めた市立和歌山。米田は「先輩方の成績を超えたことが一番嬉しいです」と喜んだ。
大会前から屈指の好投手として評価が高かった米田。直球が本調子ではなくても、狙い球を絞らせない投球で1失点にとどめた。大きく評価が高まったのではないだろうか。
(記事:河嶋 宗一)