勝負に強くなる「脳」のバイブル 林 成之著 創英社/三省堂書店
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書評
救急医療の最前線で活躍されてきた脳神経外科医・林成之先生が、スポーツ選手のパフォーマンスを上げるための脳科学について、わかりやすく解説されています。「脳科学」というと「むずかしい」とか「メンタル強化」ととらえられがちですが、メンタルとは一線を画し、「脳の仕組みを知ること」に焦点を当て、どのようにすればパフォーマンスが向上するかというアスリートにとって最も大切なことが書かれています。
まず一番大事なのは脳科学「だけ」では勝負強くならないということ。技術面・体力面の土台があってこそ、脳科学はその効果を発揮します。勝負強くなるためには脳科学のセオリーを知るとともに、技術面・体力面での向上が不可欠です。
こうした土台の上に意識して行いたいことといえば、チーム内で否定語はなるべく使わないように心がけたいということ。林先生が勤務されていた救命救急センターでは4つのテーマを掲げて救急医療にあたられました。
1)前向きの明るい性格でいること
2)仲間の悪口を言ったり、意地悪をしないこと
3)コミュニケーションをこまめにし、面倒見のいい人格をもつこと
4)どんなことがあっても「疲れた」とか「難しい」「できない」と言った否定的なニュアンスのある言葉を使わないこと(P173より引用)
こうした試みが1ヶ月後には医療チームの雰囲気を激変させたとのこと。否定語は人の進化を妨げることを理解しておく必要があります。
このほかにも参考になる話がたくさんあり、付箋を貼りまくりながら読みました。そして林先生はこう書かれています。「先に気がついたもの勝ち」と。私もすべて読み終えてその言葉を実感しています。一つずつ実践していけば、今よりももう一段高いレベルの風景が見えるのではないかと。感銘を受けた本はすぐにオススメしたくなりますが、この本はオススメしたいけどちょっと内緒にもしておきたいような複雑な気分・・・。読んだもの勝ちですよ。
(書評:西村典子)