野球ノートに書いた甲子園 高校野球ドットコム編集部 KKベストセラーズ
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書評
記憶は時とともに風化してしまいますが、記録は残すことができます。野球選手として日々練習を積み重ねている皆さんの中には、野球ノートをつけている人もいることでしょう。今回ご紹介する本「野球ノートに書いた甲子園」にはそれぞれのノートに、それぞれの思いが綴られており、ノートを書くことで野球選手としてだけではなく、人間的な成長を促す大事な存在であることがリアルに描かれています。
野球ノートには練習内容や反省点だけではなく、「チームとしてどうやったら強くなれるのか」「どうしたら上手くなれるのか」「それには何が足りないのか」といった自分の内面を見つめ直す選手たちの姿がありました。神奈川ではここ数年上位に食い込む実力をみせている県立弥栄高校も野球ノートを活用するチーム。野球ノートが義務的なものになっていないか、チーム内で話し合いを持ったときの高橋選手のノートには、その日考えたことが素直に書かれていました。野球ノートはなぜ書くのかという問いに対し、試合で勝つため、勝つためには上手くなること、そして上手くなるためには自分を知らなくてはならない、と高橋選手は考えます。
「そして、それを逆転の発想で自分を知る → 長所・短所を成長させられる → 上手くなれる → 勝つ!というようになる。だから野球ノートは他人に書かされてやるものではない」(P92より引用)
また日本一練習時間が短い都立小山台高校の「日本一、心を持った野球日誌」、新潟・日本文理高校の「自分だけの『野球の教科書』」、山口・高川学園高校の「野球ノートに書いた甲子園」など、選手たち、監督をはじめとする指導者のノートを通じたコミュニケーションには、グッと胸を打たれることもしばしば。
ノートを書くこと、書き続けることで以前の自分を振り返ることもできるし、成長の足跡を残すことができるということを、実際に目の前で見せてもらったような気がします。私もトレーナー日誌を書いているのですが、以前書いたものを読み返してみると「顔から火が出るほど恥ずかしい」内容が多く、知識や技術の未熟さにほとほと情けなくなります・・・。でもこれが以前の自分からの成長の証だと思えば、やはり書き続けていこうという気持ちになりますよね! 記録にない去年の「今日」は思い出せなくても、記録に残した去年の「今日」は鮮やかによみがえります。この本を読んで改めて記録することの大切さ、素晴らしさを実感し、身の引き締まる思いがしました。
(書評:西村典子)