希望はつくる 著:迫慶一郎 WAVE出版
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書評
建築家であり、日本にとどまらず海外でも幅広く活躍されている迫慶一郎さんの著書。建築家として手がけたさまざまな建築物の写真とともに、随所に心にグッとくる言葉が載せられており、ビジネス書ながらもスポーツにも通じることが多いと感じています。
たとえば「ハンデをメリットに変える」。迫さんは活動拠点を中国に置いているため、日本に比べると施工技術がどうしても劣ってしまう。模型を作る材料も日本に比べると豊富ではない。そんな中、技術を多くの人に手作業をしてもらうことでカバーし、調達できる材料から思い浮かんだアイデアを形にした結果、クライアント(依頼主)に大変喜ばれたという話が載っていました。
「もっと環境が良ければいいのに」と思ったことのある人は多いと思います。「もっと」「もっと」とないものねだりをするのではなく、今ある環境の中で工夫すること、練習時間が短いならその中で効率よく行うにはどうしたらいいか、粘り強く考えて取り組むことの大切さを改めて感じます。
迫さんは高校時代、野球をされていたということもあり、甲子園を目指す一球児でした。「体が小さい僕は、人一倍努力をした。短い距離なら誰にも負けない瞬発力を磨いた。ハンデをプラスに変える。華麗なホームランだけじゃない。もがいて泥臭くもぎ取った、たったひとつの出塁でも、大きな流れをつくる起点になることだってある」(P197より引用)。県大会の準々決勝で逆転サヨナラ勝ちをおさめたそのきっかけは、9回裏、先頭打者である迫さんのセーフティバントでもぎ取った出塁がきっかけだったそうです。何事もおそれず、あきらめず、自分の今できる最善を尽くすことが、後から振り返って後悔のないチャレンジだと言えるのではないでしょうか。
現在、迫さんは東日本大震災後の復興プランとして「東北スカイビレッジ構想」を立ち上げて活動されています。海から離れて生活することを考えるのではなく、津波による災害を防ぎ安心して暮らせる街として、高台を作りその上に住居を作ろうというこのスカイビレッジ構想は、生活そのものを変えること、考え方を変えること、人々の意識を変えることから始まります。「実現するはずがない」「コストはどうするんだ」「無理だ」という周囲の反響にも屈せず、「希望はあるものではない、全力で創り出すものだ」という信念のもとに活動を続けている迫さん。その岩をも砕く信念あふれたこの本に「何事にも小さなきっかけから大きく動く。全力でガンバレ!」と背中を押されるような気分になるのです。