正しいテイクバック~肩甲骨のエクササイズ~
肩甲骨のエクササイズ
前回の柔軟性チェックでどれだけ自分の肩甲骨が動くのかが分かられたと思います。今回は筋力の話になるのですが、いくら筋力があっても、まずは柔軟性がなければ肩甲骨の可動域は大きくなりませんのでしっかりと前回のストレッチを行って下さい。
しかし柔軟性があれば大丈夫、というわけではありません。柔軟性があっても、骨(肩甲骨)を動かすのは筋肉です。筋肉がしっかりと働かないと柔軟性があっても肩甲骨の可動域は大きくなりません。そこで今回は肩甲骨のエクササイズを紹介したいと思います。
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うつ伏せに寝て、手を体に沿って下(足元方向)に向けます。この時、手の甲を地面につけておきます。(写真(1))その状態から肩甲骨を地面から離すように肩甲骨を後方(背中側)へ動かします。(写真(2))ポイントとして手の甲はつけたままで行って下さい。
この時に間違った行い方、注意点があります。それは肩甲骨を動かそうとしても、肘を引いてしまう選手がいるのです。(写真(3))これは以前説明したように肩甲骨の向きよりも後ろに引いてテイクバックしようとしている選手に多い動きとなります。この肘を引く動きをしてしまうと、テイクバックで肘が上がりにくい状態になり易いので注意が必要です。
[page_break:肩甲骨のエクササイズ2]肩甲骨の柔軟性のチェック
次の注意点は、腕を外に捻りながら肩甲骨を動かそうとすることです。肩甲骨を後ろに動かすのに、腕を外に捻りながら動かす方が運動学的に肩甲骨を動かし易いのです。しかし実際のテイクバックでは腕を外に捻りながら肘を上げるような動きは行いません。順序的には肩甲骨を後ろに動かしてから腕を外に捻っていきます。
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最後の注意点は、肩甲骨だけを動かす意識ではなく、肋骨から動かす意識をもって欲しいということです。肩甲骨だけ動かそうとすると、肋骨を下に下げながら(地面の方に)エクササイズを行う選手が多くいます。これも実際のテイクバックでは行わない動きとなるので、いざ投球するときにしっかりと肩甲骨を動かせなくなるので注意が必要です。(写真(4)(5))肩甲骨は肋骨の上にのっているのです。ということは、肋骨を動かせば、肩甲骨も動くのです。もちろん肩甲骨自体を動かすことは重要なのですが、共に肋骨も動かせば、更に肩甲骨は動く、ということになるのです。しっかり肋骨も動かしましょう。
この3つのポイントを注意しながらエクササイズをすることが重要となります。回数と頻度ですが、1回の回数は10~20回、正しいやり方でできる回数でやることが重要です。20回行っても途中から間違った動きになる場合があるので、そのような選手は正しいやり方でやれる回数を自分で把握しておくことが重要です。だから回数は人によって違います。その回数を毎日3セットするのですが、週に1回は9セット(1試合9イニングを考えて。小学・中学生は7セットで構いません)行うことをお勧めします。何事も試合で使えるためです。週1回でいいので頑張りましょう。
[page_break:次の段階のエクササイズ]次の段階のエクササイズ
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次に先ほどのエクササイズの次の段階のエクササイズを紹介したいと思います。まずはうつ伏せに寝た状態ではなく、座った状態、立った状態で同じように肩甲骨を動かすエクササイズです。(写真(6)(7))注意点は先ほどの注意点と同じです。立った状態での注意点としては骨盤を動かしてはいけません。骨盤を動かしながら行うと、肋骨、肩甲骨の動きではなく股関節の捻りで行うことになりますので効果は少なくなります。
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もう1つのエクササイズですが、先ほどの肩甲骨の動きに合わせて、肘を上げていく、というエクササイズです。まずは最初に行った写真②のように肩甲骨を後方へ動かします(写真(8))。そして、その状態から肘を肩の高さまで上げていくというエクササイズを行います(写真(9))。もちろん肩甲骨の向きに肘を上げていかないと、肘は上がることはありません。もし肘が上がらない、ということがあれば、それは肩甲骨を後方に動かしても、更に肘を肩甲骨の向きより後ろに引いているからなのです。以前も説明したように、肩甲骨を後ろに動かすことも重要なのですが、肩甲骨の向きに肘を上げなければ肘は上がりませんのでそれは忘れないようにお願いします。
以上がテイクバックで重要な肩甲骨のエクササイズとなります。これで前回の柔軟性を高めるストレッチと、今回のエクササイズを行うことで、皆さんの持ち得る最大限の肩甲骨の動きを獲得することができます。
次回は実際の投球動作におけるスローイングエクササイズを紹介したいと思います。
(文・写真:久保田 正一)