Column

正しいテイクバック~どうやって後方に肘を引く?~

2013.02.10

久保田正一本気の心技体

どうやって後方に肘を引く?

 
 最近では『後ろ小さく』というテイクバックの指導をよく耳にすると前回お伝えしましたが、私はこの考えはどうかと考えています。それは後ろに手を引くこと自体が悪いことではないからです。

 前回説明したように、肘が上がらない原因は肩甲骨の向きより後ろに肘がいった場合です。と言うことは、肘が後ろに大きく引かれたとしても、肩甲骨の向きをその方向に向けることができれば肘はちゃんと上がるのです

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写真(1)
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 では写真を使って説明しましょう。写真(1)を見て頂ければどういうことか分かるのですが、左の写真は前回説明した、肘の上がらないテイクバックの仕方です。肩甲骨の向きは斜め前方向に向いているのに対し、肘はその向きより後ろに引いています。これでは肘は上がりません。

 対して右の写真はと言うと、肩甲骨を後ろに引いて、肩甲骨の向きを変えています。その肩甲骨の向きの方向に肘を上げているため、この上げ方なら肘を上げることができるのです。

 キャッチャーから見た肘の位置は両方とも同じくらい後ろに引かれているのです。しかし肩甲骨の状態で肘が上がるのか上がらないのか全く違ってくるので、この肩甲骨の動きが非常に重要になってきます。

[page_break:肘をどこまで後ろにもっていきたいのか?]

肘をどこまで後ろにもっていきたいのか?

 肘をどこまで後ろにもっていきたいのか?これは選手により違います。後ろへ引きたい選手にそれでは肘が上がらないから『もっとテイクバックを小さくしろ』、と言うのは本当に指導として良いのか?私自身もこのような指導に悩んだ時期もありました。

 選手には『投げにくいです』または『やっぱり後ろへ引きたいです』と言う選手がいるのです。私は指導するにあたって、この選手の『感覚』を非常に重要視します。こちらが言うとおりに選手の動きを決めつけてはいけないと私は思っています。正確に言うと骨や関節の構造上守らなければならない原理原則はこちらの言うとおりに動かさなければなりませんが、それ以外の幅広い動きは選手自身に決めさせるべきなのです。

 よく『点』と『線』で説明するのですが、必ず守らなければならない『点』はあるのです。それぞれのポイントでいろんな投手に共通する『点』が。その点を探すために私は今までどれだけの試合を観戦し、どれだけの投手のフォームをビデオでチェックしたことか…

 その『点』は必ず正しい『点』を記さないといけないのですが、『線』を引くのは選手自身です。私が『線』を描くことはありません。『こんな線もあるよ』という選択肢は与えるときはありますが、最終的に『線』を引くのは選手自身なのです。

 この『点』と『線』の判別が指導する側には必要だと思います。私は『幅広い指導』、という概念はこのような考え方ではないかと考えています。

 しかし肩甲骨を後ろにやりたくてもやれない選手がどうしてもいます…そういう選手は肘を後ろにやると肘は上がりません。ではどうすれば上がるようになるのか?次回は肩甲骨の柔軟性のチェックなどを紹介できればと思います。

久保田 正一の一言

 先月末、今春開催される選抜甲子園の出場校の選出がありました。嬉しいことに中学時代指導させて頂いていた投手がエースをしている高校が選出されました。長崎創成館の大野 拓麻君ですが、彼は私が主催しているスローイングクリニックに参加してくれていた選手です。選抜出場決定後、彼と連絡を取りましたが、非常に謙虚な態度で甲子園までに自分自身がやらなければならないことをしっかりやります、と力強く答えてくれました。

 佐賀学園で甲子園に出場し2勝した峰下 智弘君(近畿大)もそうでしたが、彼らの共通点は『素直』これにつきます。皆さんも私がお伝えしているこの『本気の心技体』をどこまで素直に受け入れるか、そして実践するか。上達の道にはこれしかないと思います。

(文・写真:久保田 正一) 

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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