Column

巨人のドラフトは近年で最高の当たり年?制度を生かした戦略

2022.10.25

巨人のドラフトは近年で最高の当たり年?制度を生かした戦略 | 高校野球ドットコム
会見に臨む浅野

ドラフト会議開催前に見られた心理戦と戦略

 今年のドラフトは開催前に9球団が指名を公言するなど、心理戦も繰り広げられた。最初に動いたのは「球界の盟主」でもある巨人だ。コロナ禍で候補選手の中に突出した選手がいなかったため、指名選手の吟味が難しかった。今年だからこそ、巨人が指名を公言したことにより、心理的に各球団がざわついた部分があっただろう。そのことが大きく影響したこともあり、最終的には9球団が開催前に指名を公言した。

 巨人からすると、1位指名の交渉権の獲得をする確率を上げるために、開催前に公言して競合を避ける意図が感じられた。その結果、浅野 翔吾外野手(高松商)は阪神との競合だったものの、無事に交渉権を獲得した。競合を引き当てたのは、ハズレ1位を除けば2008年、大田 泰示外野手(現・DeNA)を当てて以来である。(ハズレ1位を含めると2011年松本 竜也以来)

 巨人の場合は、今年のドラフトに限らず、選手の管理における部分においても、ルール内に準じた戦略が見られた。近年のプロ野球では、ケガや故障している長い期間に、育成選手として契約する点も巨人から制度の穴を突いたことをしている。2019〜2021年の中継ぎの軸だった中川 皓太投手(山陽高出身)や、2021年の勝ち頭だった高橋 優貴投手(東海大菅生出身)のように実績がありながらケガをしている選手を、育成選手として契約することにより、今のプロ野球の制度では人的補償の対象にならない。その戦略は、オリックスも活用しており、制度が変わる前に上手く旨みを感じている点から、今後もこのような動きが見られるのではないだろうか。

競合の末、浅野翔吾との交渉権を獲得

 今年の巨人のドラフトを振り返ると、なんといっても1位指名を公言していた浅野との交渉権を獲得できたことが大きい。

 浅野は甲子園で圧倒的な成績を残しているが、下記が甲子園の通算成績である。
通算: 5試合 打率.647 4本塁打 8打点 出塁率.750 長打率1.471

 打率や本塁打、長打率を見ても高校生離れした成績を残しているが、1番打者を任されていたこともあり、足の速さも武器である。甲子園で見せた圧倒的な打力は魅力的だ。U18でも木製バットへの対応力を見せた。その結果、打率.333、1本塁打、4打点、OPS.967の活躍を見せ、国際大会の舞台でも対応力の高さも見られた。浅野の打撃を見たイチロー氏も「ああいうホームランを打てる選手はキャプテンに向かないタイプが多いのに、浅野君はキャプテンも任されてますからね。その時点で彼は僕の想像の上をいっていますよね」とコメントするぐらいだ。

 実力はもちろんのこと、スター性も兼ね備えており、着実に育成した後は坂本 勇人内野手(光星学院出身)や岡本 和真内野手(智辯学園出身)との競演も見られそうだ。

 さらに近年は、投手に寄った起用が多かったため、浅野以外にも萩尾 匡也外野手(慶應義塾大)を2位指名。課題だった若手野手の層を厚くする意図が感じられた。今年の巨人はBクラスに終わったものの、投手陣は最多奪三振の戸郷 翔征投手(聖心ウルスラ出身)やルーキーの37セーブを記録した大勢投手(西脇工出身)をはじめとした、平内 龍太投手(神戸国際大附出身)や、赤星 優志投手(日大鶴ヶ丘出身)、山﨑 伊織投手(明石商出身)、直江 大輔投手(松商学園出身)、堀田 賢慎投手(青森山田出身)、井上 温大投手(前橋商出身)、菊地 大稀投手(佐渡高出身)、戸田 懐生投手(KTCおおぞら高出身)といった若手の台頭も目立った。

 そのため、今年台頭し始めた中山 礼都内野手(中京大中京出身)や増田陸内野手(明秀日立出身)といった。若手野手と伴奏する形で相乗効果が生まれると、新たな強い巨人軍が見られそうである。

(文=ゴジキ)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.25

筑波大新入生に花巻東、國學院栃木、北陸の甲子園組! 進学校からも多数入部!

2024.04.25

【静岡】夏のシード16校が決定、聖隷クリストファー、常葉大菊川はノーシード<春季県大会>

2024.04.25

捕手から最速152キロ右腕へ。村上泰斗(神戸弘陵)は“球界人気理論”を生かしたマエケン流フォームでドラフト候補へ急成長!<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.04.25

【春季四国大会逸材紹介・徳島編】阿南光にエース吉岡 暖を支える「もう1人のドラフト候補」 徳島商は春季大会チーム最多打点をあげた「恐怖の6番打者」

2024.04.25

【群馬】健大高崎、前橋育英などがベスト8進出! 桐生第一は渋川青翠に敗れ夏ノーシードに<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!