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秋の王者・日大三島、ドラフト候補左腕擁する享栄…2022年の東海地区を大胆予想

2022.01.09

 東海4県の秋季県大会の結果を見ると、新鋭校の台頭というよりも、「昭和時代」から実績のある、学校の復活的な躍進が目立った。来季、東海地区の高校野球は「昭和復古」の空気を感じさせることになるかもしれない。

秋の東海王者・日大三島がリード

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日大三島 永田監督

 1984年(昭59)以来のセンバツ出場を果たすことになりそうな日大三島は、報徳学園(兵庫)で全国制覇に導くなどの実績を作った永田 裕治監督が就任して今季で3年目。県大会を制し、その後の東海地区大会でも優勝して早くも実績を挙げた。その日大三島を中心に、静岡掛川西浜松商などの公立伝統校が追っていく構図となりそうだ。

 日大三島は、明治神宮大会では敗れはしたが粘りを示した。甲子園でどのような戦いをするのか楽しみだ。そこで自信を得ていけば、県をリードする立場になっていくであろう。「勝っていくことで、少しずつ自信を得てきたようで、大人しかった選手たちも、自己主張してアピールしてくるようになってきた」と、永田監督も結果がもたらした成果を実感している。

 夏の代表校となった静岡は、夏の経験もある鈴木 脩矢(2年)と吉田 優飛(2年)の両投手や、山本 和輝内野手(2年)、山岸 廉尊内野手(2年)らの野手陣も残っており、チームの経験値も高い。秋季県大会は3位校となり東海大会に進出。初戦で大垣日大(岐阜)に敗退したがそれをバネにしていくであろう。

 2位校として出場した東海地区大会で、ミラクルな快進撃を果たして準優勝したのは聖隷クリストファー。初めてのセンバツ甲子園に出場すれば、そこで新たな自信を得ていき、飛躍的成長が期待できそうだ。

 掛川西も、春季東海地区大会優勝のメンバーから今駒 翔太外野手(2年)や、羽切 佑太朗内野手(2年)らが残っており、チーム力は厚い。投手の軸が台頭すれば、夏のベスト4以上の実績も挙げられそうだ。その掛川西と、秋季大会で接戦を演じた浜松商も伝統の粘り強さは健在だ。

 秋季県大会ベスト4で進学校の浜松西静岡市立浜松市立に加え、21世紀枠の県推薦校となった静岡科学技術なども面白い存在だ。

 他には、近年安定してきた加藤学園磐田東、今秋は中部地区予選初戦の敗退で悔しい思いをした藤枝明誠も巻き返しを狙う。新体制となった東海大静岡翔洋も注目だ。昨春のセンバツで21世紀枠として甲子園出場を果たした三島南も、植松 麟之介投手(2年)と深瀬 涼太捕手(2年)のバッテリーが健在で楽しみだ。常葉菊川、常葉大橘の常葉大勢や名門・静岡商島田商などの伝統校も、どのような戦いを見せてくれるのか注目したい。

[page_break:享栄のドラフト候補左腕の復活に期待]

享栄のドラフト候補左腕の復活に期待

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藤本 逸希(享栄)

 2021年の県大会すべてで決勝進出を果たした享栄が中心となり、夏の代表校の愛工大名電、1年生大会を制した東邦が追う。秋季県大会でベスト4に残った中京大中京と私学4強が、2022年も愛知県の勢力構図の中心となっていくであろう。それを僅差で県準優勝で東海大会でもベスト4に進んだ至学館、県内一の強力打線と言われている星城、県3位校として東海地区大会に進出を果たした中部大春日丘が僅差で追いかける。

 享栄は東海地区大会前にエース左腕・藤本 逸希投手(2年)が腰痛となり、満足な投球ができなかったことが悔やまれる。このオフには腰痛を完治させて春を迎えたいところだ。愛工大名電は甲子園でもマスクを被った藤山 航平捕手(2年)が注目されている。東邦落合 智哉捕手(2年)も注目度は高い存在だ。戦力的には、ここ2~3年の中では、やや落ちると言われている中京大中京は、それでも秋季県大会でベスト4に進出したのはさすがと言っていいであろう。至学館は例によって、選手のポジションを入れ替えたり、細かい継投などでの戦いとなっていくだろう。

 さらに次のグループとしては、秋季県大会途中で悔しいコロナ禍での辞退となってしまった豊川豊橋中央に愛産大三河、安城学園岡崎学園などの東西三河勢の私学が続く。豊川は、若い長谷川 裕記監督が秋の新チームから就任。その戦い方が注目されるところだ。愛産大三河は、昨秋はもうひとつ結果を残し切れなかったが、練習でチーム力を積み上げていくチームだけに、一冬越えてどう成長しているのか楽しみでもある。全三河大会でも3位決定戦を争った安城学園岡崎学園は、ともにロースコアゲームを守りっていく力がある。

 これらのチームに加えて、昨秋の全三河大会を制した西尾東に準優勝の科学技術学園豊田、全尾張大会優勝の誠信と準優勝の東浦がどんな戦いをしていくのかというところも見どころだ。西尾東は、前任の寺澤 康明監督を引き継いで、野田 圭祐監督が就任して早速、全三河大会を制して結果を出した。東浦も近年、知多地区では気を吐いている有力校に成長している。

 他にも、第101回選手権大会の県優勝校の誉や、昨夏、ベスト4に残って公立の雄としての意地を示した大府。その知多地区のライバル的存在になって、夏は初めてのベスト8に進出している日本福祉大附も目が離せない。同地区では半田知多翔洋にも期待したい。

 東三河地区では桜丘を忘れてはならない。また、時習館も充実している。伝統の成章と、豊橋西も躍進が期待できそうだ。

[page_break:前チームの期待も背負う岐阜第一]

前チームの期待も背負う岐阜第一

秋の王者・日大三島、ドラフト候補左腕擁する享栄...2022年の東海地区を大胆予想 | 高校野球ドットコム
弘川 泰暉(岐阜第一)

 このところは、上位校の顔ぶれがほぼ固定されてきているという印象もある岐阜県。2022年も秋季県大会の4強となった中京大垣日大岐阜第一県立岐阜商が中心となっていくことは間違いないだろう。中京中京学院大中京という校名で戦った第101回選手権大会では甲子園ベスト4進出を果たしている。今季のチームに関して橋本 哲也監督は、「そのチームに比べると、個々の能力は劣るかもしれないけれども、チームのまとまりという点ではその時以上のものがある」と期待している。それだけに、東海地区大会では9回に悔しい逆転負けを喫して、新たなシーズンへ向けて、メンタル面も含めてより強く鍛えているだろう。

 期待されながら、昨夏は3回戦で敗退して悔しい思いをした岐阜第一。秋季県大会は3位決定戦で0対0のまま延長戦となり、県立岐阜商にサヨナラで競り勝って、勝負強さを示した。田所 孝二監督も、「なかなか岐阜県一にはなれんのやけど、ここまではよく残れるんです」と、あと一つの壁を何とか破りたいところでもあろう。

 東海大会進出を逃した県立岐阜商は、その後にコロナ禍の自主練習対応など問題視もされたが、それらを乗り越えて新たなシーズンへ向って行く。

 秋季東海地区大会のベスト4で敗退した大垣日大五島 幹士(2年)、山田 渓太(1年)という左右の安定した投手がいる。特に、山田投手は東海大会での好投で評価を上げた。リードする西脇 昂暉捕手(2年)も阪口 慶三監督からの信頼は厚い。

 この4強を追う存在としては、大垣商市立岐阜商関商工などの公立校勢がいる。大垣商は、大垣西と並んで西濃地区で近年は健闘している公立校である。関商工堀 徹太投手(2年)の評判がいい。また、私学勢としては帝京大可児美濃加茂が4強を追う存在となる。帝京大可児は昨年秋季県大会では準々決勝では大垣日大に0対1と競り負けたが、善戦した実績は大きい。

 他には、昨夏のベスト4と健闘した岐阜各務野、西濃地区の「暴れん坊」こと海津明誠、実績のある岐阜城北などの戦いぶりも注目したいところだ。

[page_break:2枚看板擁する三重、津商、津田学園が追う]

2枚看板擁する三重、津商、津田学園が追う

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上山 颯太(三重)

 三重津商津田学園の3校が東海地区大会に進出して、海星が4位校となった昨秋の三重県大会。三重は昨夏の代表校でもあり、08年から14年春まで監督を務めていた沖田 展男監督が19年末に復帰して、2年目で安定した実績を挙げていると言っていい。上山 颯太(2年)、谷 公希(2年)らの投手陣も実績がある。

 津商も昨夏はベスト4で三重に敗れ、秋も決勝進出と安定している。このところ三重が壁となっているという印象だが、そこを突破できるのか注目していきたい。津田学園も春夏連続出場を果たした2019年のチームに追いつこうと、チームのまとまりもよくなってきているようだ。3番を打つ神田 剛志(2年)は好打の内野手でもある。

 この3校を追うのが機動力野球で新風を吹かせている海星に、菰野いなべ総合という実績のある公立勢か。昨年の秋季県大会では、神村学園伊賀皇學館相可がベスト8に食い込んでいる。今春以降はどうなっていくのだろうか。前田 拓音投手(1年)の宇治山田商や、大型捕手の山崎 颯一朗(2年)が注目されている鈴鹿の戦いぶりも見どころとなりそうだ。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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