大器の片りんを見せた最速144キロ右腕・蓼原慎仁(桐生第一)が甲子園で見つけたプロ入りの課題
180センチ80キロの恵まれた体格を存分に生かした躍動感あるフォームから、角度を付けた威力のある140キロを超えるストレートを軸に打者を圧倒。初めての全国の舞台でたしかな爪痕を残すピッチングだった。
注目選手の来田涼斗、中森俊介を擁する強豪・明石商と互角の試合を繰り広げた桐生第一。前橋育英、健大高崎などが上位進出をしている中に割って入ろうという勢いだ。その桐生第一でプロ志望届を提出して甲子園を挑んだのが背番号11の蓼原慎仁だった。
150キロ近いストレートを手に入れて夢の世界へ
蓼原慎仁
セットポジションから始動し、きっちり左足を上げてから一度間を作ってタメを作る。そこから軸足を折りながらて重心を前に運び、右腕を上からしっかりと振り下ろしていく。高さを活かした角度がついたストレートは140キロを超えており、加えて縦に鋭く沈むフォークやチェンジアップを駆使する。
このボールを使ったピッチングで明石商打線相手に2回投げて被安打1、与四死球3、奪三振1、自責点1という結果。既にプロ志望届を提出している蓼原にとっては1つアピールする結果になった。しかし蓼原のなかでは今回の結果には満足していない。
「悪い中でも粘りの投球をすることが出来たことに関しては良かったですが、課題は残りました」
蓼原の中ではアピールが不足していると感じていたが、プロ注目・来田と7回に対決して、ショートフライに打ち取った。そこに関しては「来田は絶対に抑えるつもりでしたので、『よっしゃ』と思いましたね」と少し笑みをこぼしながら語る。
その来田は蓼原と対戦して「厳しいコースにボールが来ていた」と印象を語る。コントロールが課題だった蓼原にとっては成長を見せる評価と言えるだろう。だが、蓼原は「制球力が課題になりました」と納得はしていない。
また自慢のストレートに関しても「150キロ近くは出せるようにしたいので、コントロールを磨いたうえで磨いていきたい」とストレートのさらなるレベルアップを誓った。
プロ志望届を提出している蓼原。これからは運命の日まで練習を重ねて待つ日々となる。そんな蓼原のなかで尊敬する選手がいる。それが元プロ野球選手の日野茂氏だった。
「小学3年生からZEROベースボールアカデミーというところに6年間通っていまして、そこの顧問が日野さんなんです。日野さんからは小さいころからキャッチボールといった基本的なところからきっちり教わってきました。ですので、自分にとっては尊敬する選手なんです」
甲子園で見せた蓼原の角度を付けたストレートからは将来性を感じさせるものだった。尊敬する日野さんも経験したプロの世界へ飛び込むことが出来るのか。蓼原の運命の日は10月26日だ。
(取材=田中 裕毅)
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