Column

都立高校からプロ野球へ ~甲子園に出られなくても、プロへの道は切り開ける~

2019.09.24

 今夏の東東京の決勝で惜しくも関東一の前に敗れた都立小山台。しかし、2年連続での決勝戦進出は都立校の実力しっかりと示すことが出来た。そんな都立校で高校野球3年間を過ごし、現在プロで活躍している選手たちは何名かいる。そこで今回は都立校出身のプロ野球選手を紹介していきたい。

都立出身初の日本代表となった秋吉亮と育成から這い上がった石川柊太

都立高校からプロ野球へ ~甲子園に出られなくても、プロへの道は切り開ける~ | 高校野球ドットコム
石川柊太

 まず取り上げたいのが、北海度日本ハムの秋吉亮投手。高校時代は東東京の都立足立新田でプレー。1年生の夏からレギュラーで出場し、1年生の秋にサイドスローに転向。フォーム改造に試行錯誤を繰り返し、2年生の秋にはブロック予選で早稲田実業と対戦。斎藤佑樹ら有名選手が揃う早稲田実業相手に敗れるものの、しっかりゲームを作れたことに自信を深めた秋吉。

 高校野球最後の夏は準々決勝まで1点も与えることなく、ベスト4進出。甲子園まであと2つのところで名門・帝京と対戦。試合は2対9で敗れ、悲願の甲子園とはならなかった。

 しかしその後中央学院大へ進学し、2度の大学選手権に出場。社会人野球のパナソニックへ入社すると、都市対抗と日本選手権に2度出場しドラフト注目選手まで成長。そして2013年にドラフト3位で東京ヤクルトに入団し、2017年のWBCメンバーに選出。都立校出身の選手が初めて日本代表に選ばれた瞬間だった。

 また1軍の舞台で活躍しているのが福岡ソフトバンクホークスに在籍する石川柊太都立総合工科出身の石川は、2007年に都立総合工科へ入学。都内屈指の名将・有馬信夫監督の指導の下、石川は一時怪我に苦しみながらも3年生の春は都大会ベスト8進出。勢いそのままに、高校野球最後の夏も4回戦では高輪を完封し、勢いは加速したように思われた。

 しかし準々決勝で優勝候補の一角・二松学舎大附の前に4回3失点で降板。チームはその後追いついたが結果はサヨナラ負けを喫し、甲子園に行くことなく石川の高校野球は終えた。その後、創価大学に進学し、4年生から本格的にリーグ戦で登板。その年の大学選手権に出場し、最速142キロのストレートなどを駆使して完封勝利を挙げた。

 神宮大会こそ逃したものの、2013年のドラフト会議で福岡ソフトバンクホークスから育成ドラフト1位指名。育成から支配下登録を目指した石川は2年間は育成でプレー。しかし2016年に念願の支配下登録。翌年の2017年には1軍のマウンドに上がり、防御率3.29という成績を残す。その年の日本シリーズでは4試合に登板して、打者15人相手に3奪三振などを記録して1勝を挙げた。

 そして2018年には16試合に先発し、13勝6敗の成績を残し、日本シリーズでも第1戦でリリーフ登板し2イニングを投げて無失点に抑えて存在感を出した。

[page_break:ドラフト1位の佐々木千隼と可能性を秘めた鈴木優]

ドラフト1位の佐々木千隼と可能性を秘めた鈴木優

都立高校からプロ野球へ ~甲子園に出られなくても、プロへの道は切り開ける~ | 高校野球ドットコム
鈴木優と佐々木千隼

 また、千葉ロッテに2016年にドラフト1位指名を受けた佐々木千隼都立日野出身の選手。2年生の秋に鈴木誠也らとともに東京選抜に選出され、アメリカ遠征へ。そこでの野球をきっかけに佐々木は少しずつ変化していく。

 3年生の春から投手を始め、最後の夏には最速140キロをマーク。3回戦では早稲田実業、4回戦で日大鶴ヶ丘を破り、一躍スター選手に名乗り出た。準々決勝で日大三の前に敗れたが、佐々木は首都大学2部リーグにいた桜美林大へ進学。当初は外野手も兼任していたが2年生から投手1本に絞ると、特別コーチをしていた桑田真澄野村弘樹の元プロ野球選手の2人の教えを受けながら成長。

 巨人の菅野智之が持っていた年間7完封のリーグ記録に並び、名実ともにドラフト注目選手となった佐々木は、2016年のドラフトで都立校出身の選手初となる1位指名をうけて千葉ロッテへ入団した。

 そして、2014年のドラフト会議でオリックス・バファローズに9位指名でプロ野球選手になった鈴木優も都立高校出身。

 東東京の実力校で、2003年に都立としては3校目となる甲子園に出場していた都立雪谷。チームを甲子園へ導いた相原健志監督率いるチームに2012年に入学した鈴木は、1年生の秋よりエースとしてチームを牽引。2年生の春の都立葛飾商相手に完封勝利を収めるなど着実に力をつけると、夏はベスト16進出。二松学舎大附に敗れ、甲子園とはならなかったが、新チームでもエースとして春は都大会4回戦まで進出。

 そして迎えた最後の夏、鈴木は最速141キロのストレートなどを武器に東東京を勝ち抜き、チームを5年ぶりのベスト8に導き、鈴木の高校野球は幕を閉じた。

 しかし鈴木は甲子園出場とはならなかったが、ポテンシャルが認められてドラフト6位でオリックスに入団。昨年のU-23ワールドカップに選出され、準優勝に貢献した。

 都立出身の秋吉、石川、佐々木、鈴木の4人は誰も甲子園に出場したことはない。しかし、目標を見失わず、ひたむきに練習を重ね続け、プロ野球選手という夢を叶え、1軍の舞台で躍動している。努力を続けていれば何が起こるかわからない、そんなことを彼ら4人が証明してくれている。

記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.24

東京国際大の新入生は、リーグ戦デビューの二松学舎大附の右腕、甲子園4強・神村学園捕手、仙台育英スラッガーら俊英ぞろい!

2024.04.24

【福島】田村、日大東北、只見、福島が初戦を突破<春季県大会支部予選>

2024.04.24

【佐賀】敬徳と有田工がNHK杯出場を決める<春季地区大会>

2024.04.24

【春季四国大会逸材紹介・香川編】高松商に「シン・浅野翔吾」が!尽誠学園は技巧派2年生右腕がチームの命運握る

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!