試合時の脱水予防
水が飲みたいと感じる前にこまめに飲むこと
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
いよいよ夏本番を迎えますね。「練習中に水を飲むな」と言われた一昔前とは違い、水を強制的に飲まないと熱中症の危険性が高まる時代です。
今回のコラムは「水を飲もう」と言われるけれど、どうすれば適切な水分補給が出来るのか。試合でのコンディションを左右する水分・塩分補給、そしてベンチ裏に準備しておきたい補食などについてお話をしたいと思います。
【脱水といっても「水分」なのか「塩分」なのか】
水分補給の大切さは、野球選手であれば実感していることと思います。「喉が渇く前に飲む」「こまめに飲む」とは言われますが、その一方で「たくさん飲み過ぎると身体が重くなる」という心配もありますね。大切なのは身体が脱水症状を起こさないように注意しながら、イオンバランスにも気をつける必要があります。脱「水」症と言われますが、実際に不足しているのは水分だけではなく塩分などの電解質も不足しているため、水分ばかりたくさん摂りすぎると体内の塩分濃度が下がり、コンディションに悪影響を及ぼすことがあるからです。
《水分が不足したときの主な兆候》
●口が渇く
●尿の量が少なく、いつもよりも色が濃い
●汗を大量にかいている
●頭痛やめまいがする
《塩分が不足したときの主な兆候》
●口の渇きはあまり感じない
●脱力感がある
●手や足のしびれ
●嘔吐
●筋肉のけいれん(足がつる等)
こうした兆候をチェックしながら、水分だけではなく塩分もとるように心がけましょう。梅干しや塩昆布、レモンなどの柑橘類、筋肉の痙攣を予防するマグネシウムが豊富なアーモンド、カリウム豊富なバナナ等をベンチ裏に準備し、お腹が重くならない程度の量を摂ることをオススメします。余談ですがいつも対戦するとあるチームは、ベンチ裏に一口サイズのおにぎりを準備しています(炊飯ジャーを持参!)。エネルギー源としての炭水化物(=ご飯)と塩分(=梅干し、塩昆布)補給ができるので、水分補給とあわせて一石三鳥ですね。
試合でのコンディションを意識した水分補給を
【お腹チャプチャプを防ぐ】
たくさん飲み過ぎると身体が重くなるといったことについて、どのように対応すればよいでしょうか。まず考えられるのがこまめな水分補給です。一度につき一口~コップ半分(100ml)程度にとどめ、汗の量にあわせて水分を調節すると良いでしょう。大量に汗をかいている場合はいつもより多めにする。さほど汗をかかず、喉の渇きをあまり感じない場合では一口程度にとどめるといった具合に調節します。塩分補給を行う場合、スポーツドリンクなど塩分を含んだ飲み物のみに頼ってしまうと、大量の水分をとらないと塩分補給が間に合わないといったことが考えられます。
こうしたことを考慮すると、塩分を含んだ補食を準備することは、水分の取りすぎで身体が重くなってしまうといったことを予防する効果があると考えられます。またこれ以上水分をとると身体が動かないという場合は、口の中を水で潤してうがいするだけでも効果はあります。
試合中は外気温による暑さとともに、運動によって体内に熱が発生し、身体の中からも熱さを感じる状態になっています。水分補給は身体の中からこうした発熱を抑えますが、身体の外から冷やす場合は濡れタオルや氷などを準備して、首の後ろなどを冷やすと良いでしょう。脱水症状に気をつけるとともに、熱中症に対する予防対策にも常に気を配りましょう。
3年生は最後の夏の大会です。なるべく良いコンディションを保ち、全力でプレーしてくださいね。応援しています!!
【試合時の脱水予防】
●脱水症状は「水分」だけではなく「塩分」も失われた状態
●水分が不足したときには口が渇き、尿の量が減る。頭痛やめまいを覚えることもある
●塩分が不足したときは筋肉の痙攣や手足のしびれ、嘔吐などを起こす
●塩分を含んだもの(梅干し・塩昆布)、柑橘系のもの(レモンなど)、バナナなどの補食を準備する
●水分補給はこまめに、汗の量で調節しよう
●暑さ対策には水分補給だけではなく、濡れタオルなども効果がある
(文=西村 典子)
次回、第72回公開は07月15日を予定しております。