筋力を評価する
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
いよいよオフシーズンの到来です。今までも実践練習と並行しながら体力づくりを進めているチームが多いと思いますが、基礎体力強化はこの時期にじっくり取り組みたいものの一つです。筋力をつけてパワーアップさせるためには定期的な測定は欠かせませんが、今回はどのように筋力を評価すればいいのかについてお話をしてみたいと思います。
ウエイトトレーニングで評価する
周径囲を正しく測定し、筋力の指標として役立てよう
筋力を高めるためにウエイトトレーニングを実施する場合、重量が上がるほど筋力が上がっていることがわかると思います。皆さんは「RM」という言葉を聞いたことはありますか? ウエイトトレーニングの重量や回数を設定するときに用いられるもので最大反復回数のことを意味します。例えばスクワットを行う時に10回繰り返し実施し、11回目が挙上できなかった場合の重量は10RMとなります。1RMは1回挙上できる重量のことで、体力測定などで採用されることがあります。
筋力測定というと1RMを測定する場合が多いのですが、実施するときは入念にウォームアップを行い、少し軽めの負荷で数回ならしてから最終的に1RMに挑戦するという方法をとります。このように事前準備をしていても1RMは筋肉に最大負荷がかかるため、フォームが崩れたり、補助がうまくできなかったときにケガのリスクが高まります。そこでより安全に筋力を評価する方法として、RMを使って最大挙上重量を推定する方法があります。
推定1RMの求め方
NSCAストレングストレーニング&コンディショニング第3版より
推定1RMを求めるときに使われる表を見てみましょう。1RMのときは推定1RMは100%ですので、測定値がそのまま1RMとなります。これが例えばスクワットで80kgの重さを3回挙上した場合はどうでしょうか。表によると3RMは93%となり、1RMを求めると80(kg)÷0.93=約86.0(kg)となります。80kgで3回挙上できるのであれば、1回挙上重量は86kgと推定できるということです。このような方法で求めると最大負荷を用いることなく、1RMを求めることができます。ただしこの推定1RMは回数が多くなるにつれて、どうしても誤差が生じやすくなります。1RMの測定がより正確な筋力の指標となりますが、ケガのリスクや測定時期などを考慮すると推定1RMを用いることも一つの方法と言えるでしょう。
[page_break:周径囲を活用する/体重と体脂肪量から筋肉量の変化をみる]周径囲を活用する
ウエイトトレーニングを行っていない場合でも筋力を評価することは可能です。その一つが周径囲の測定です。メジャーなどを用いて胸囲や大腿囲(太ももの一番太いところ)、上腕囲(上腕部の一番太いところ)などを測定します。筋力は筋の断面積に比例すると言われています。周径囲が大きくなることはすなわち筋の断面積が大きくなることを指しますので、筋力が向上したと考えられます。特にケガをして周径囲の左右差が顕著に見られる場合は、定期的に周径囲を測定することで筋力が回復しているかどうかの指標となります。ただしトレーニング直後はパンプアップといって筋肉中の血液やリンパ液が一時的に増加している状態になるため、筋肉が太くなったように見えても正しい筋力評価とはなりません。
さらに周径囲もまた誤差を引き起こしやすいと言われています。測定する部位がズレてしまったり、メジャーを正しく体にあてられなかったりすると正確な評価につながりません。形態測定を行う時はなるべく同一人物に測定してもらうこと、トレーニング前(筋肉を酷使していない状態)に行うこと、さらには測定する時間などもなるべく同一にすることで誤差を少なくすることが期待できます。
体重と体脂肪量から筋肉量の変化をみる
さらに簡単に筋力を評価する方法としては、体重と体脂肪率が測定できる活動量計を使ってその変化を見る方法があります。皆さんが体を大きくする場合、基本的には筋肉量を増やすことを意識していると思いますが、体重と体脂肪率から計算して筋肉量が「増えた」「減った」というその変化がわかります。
体重と体脂肪率によって体脂肪量を計算し、体重から体脂肪量を引いた数値を除脂肪体重と言います。例えば体重70kg、体脂肪率が12%の選手は体脂肪量が70×0.12=8.4kg、体重から体脂肪量を引いた除脂肪体重は70-8.4=61.6kgとなります。この除脂肪体重には筋肉のほか、骨や内臓、水分など体脂肪以外のものをすべて含みます。一般的に成人の体では骨や内臓の重さは大きく変わらないと考えられていますので「除脂肪体重が増える=筋肉量が増える」ととらえることができます。ただしこちらも水分量の増減などで誤差が生じる場合があるため、測定するときは起床時、お手洗いを済ませた後というように同じ条件で測定することが大切です。
筋力を高めることはパフォーマンスアップにもつながりやすいものです。定期的に筋力の評価を行い、トレーニングの指標として、また体を大きくするための参考にしてみてくださいね。
【筋力を評価する】
●RMとは最大反復回数のこと。重量と回数の設定に使われる
●1RMは最大挙上重量のこと。1RM測定は最大負荷がかかるためより慎重に行う必要がある
●1RM測定よりもより安全な推定RMを用いることもある
●筋力は筋の断面積に比例するため周径囲は筋力評価の指標となる
●周径囲は同一人物での測定や正しくメジャーを使うことで誤差を少なくしたい
●除脂肪体重の変化は筋肉量の増減の目安となる
(文=西村 典子)