部活動と感染予防の両立
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、センバツ、そして夏の全国大会も開催を断念するということになりました。春の公式戦がなくなり、夏の大会を目指していた選手の皆さんのことを思うと言葉もありません。現状、未知のウイルスに対抗する予防手段を持たない私たちは、感染が拡がらないようにすることを最優先させる必要があり、さまざまな検討をした上での判断だったのだろうと想像します。
夏の全国大会は開催されませんが、各都道府県ではそれぞれが独自の取り組みを考えているところです。選手の皆さんが「高校野球を続けてきて良かった」と思ってもらえるように、周囲にいる大人の方々が寄り添ってアイデアを出してくださることでしょう。少し時間はかかってしまうかもしれませんが、野球を続けながら待ってもらえると嬉しいです。
さて今回は全体練習を再開し、段階的に以前の練習レベルにまで戻すときの考え方や、感染予防の対策などについてまとめておきたいと思います。
練習前に自分の体調をチェックしよう
練習前の体調チェックは部活動の習慣にしよう
栄養バランスの良い食事を心がけることや十分な休養・睡眠を取ることは、コンディションを整えることに役立ちます。まず生活リズムを整えることから始めましょう。その上で、練習前には体調をチェックするようにします。
・平熱(37.5℃)を超える発熱
・咳、のどの痛みなど風邪の症状
・だるさ、息苦しさ
・嗅覚や味覚の異常
・体が重く感じる、疲れやすい等
この中で一つでも該当する場合は、部活動に参加しないようにしましょう。皆さん自身の体を休めることはもちろんのこと、感染拡大の防止にもつながる大切な行動です。また風邪症状が進行したような場合、長引く場合はすみやかにかかりつけの病院、もしくは最寄りの「帰国者・接触者相談センター」に電話で相談するようにしましょう。
感染予防のための基本的な対策
1)周囲の人との距離をあけることを推奨
自粛期間中にも言われていたことですが、人と人との距離をある程度あけることが飛沫感染予防につながります。距離は2m(スペースがない場合は1m)程度を確保すること、集合やベンチ内でも少し距離をあけるように工夫しましょう。
2)マスクの着用について
運動時に必ずしもマスク着用を義務づけるものではありませんが、気になる選手は家庭用のマスクを使用するようにしましょう。医療用・産業用のマスクは家庭用に比べると口元をよりしっかりと覆って密着させるため外気を取り込みにくく、激しい運動を続けた場合に呼吸がしづらい、もしくは窒息するおそれが指摘されています。運動時にこのようなマスクは使用しないようにしましょう。
3)共用のものを触るときは手洗い・手指の消毒などを実施
チームで共用しているものを触る場合は、触った後にできるだけすみやかに手洗い・手指の消毒を行うようにしましょう。手洗いは水だけではなく、石鹸を使って指先や爪、手の甲や手首周りなども含めて30秒程度時間をかけて行います。タオルや飲み物などは個別に準備して、他の選手と一緒に使わないことも心がけましょう。
水分補給とランニングの考え方
各自の水筒、スクイズボトルなどを事前に準備しておこう
これからの時期は気温が上がり、体内の熱がこもってしまうことで起こる熱中症への対策が不可欠です。こまめな水分・塩分補給は忘れずに行うようにしましょう。20〜30分ごとにコップ一杯もしくは必要量(200ml程度)を取ることが理想的です。喉が渇いたと思う前に水分をとり、脱水を防ぐようにしましょう。
またマスクを着用してランニングなどを行っている場合は、呼気からうまく熱が発散されずに体温が上昇し、熱中症のリスクが高まります。息苦しさや体が火照った状態などを感じたときはマスクを外し、休憩を取るなどしながら練習をするようにしましょう。
またランニングによる飛沫感染を予防するためには、前後の距離を十分にとって走るようにしましょう。推奨される他人との距離は徒歩では4〜5m、早歩きで5〜10mとされていますが、風向きや湿度、ランニングスピードなどによっても変わります。マスクを着用せずにランニングを行う際は、前後の余裕を持って行うようにしましょう。
なお人と横並びで走る場合は、前後で走るよりも飛沫による感染リスクは少ないと考えられていますので、ランニングを実施する際の参考にしてもらえればと思います。
参考サイト)
・新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省)
・スポーツ・運動の留意点と、運動事例について(スポーツ庁)
・運動中のソーシャルディスタンス、何m離れれば安全?(オールアバウト「運動と健康」)
【部活動と感染予防の両立】
●練習前に自分の体調をチェックする
●体調不良時は、自分自身の体を守り、感染拡大を予防するためにも部活動の参加は控える
●感染予防の基本的な対策(距離を保つことや手洗い・消毒、マスク使用の考え方など)を理解しよう
●タオルや飲み物などは個別で準備するようにしよう
●熱中症予防としてこまめな水分・塩分補給を心がける
●ランニングは前後の距離に余裕を持って行うようにしよう
(文=西村 典子)