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課題だらけでも史上初の神宮連覇を果たした大阪桐蔭を総括

2022.12.01

課題だらけでも史上初の神宮連覇を果たした大阪桐蔭を総括 | 高校野球ドットコム
大阪桐蔭・前田悠伍

 今年の明治神宮大会は大阪桐蔭(近畿・大阪)の連覇で幕が閉じた。前年の優勝と比べると何が違うのか。そして明治神宮大会で出た課題も振り返りながら、今後の展望を述べていきたい。

今年は前田中心のチームながら、控え投手が成長中

 昨年も、今年も、前田 悠伍投手(2年)が中心となって活躍したが、昨年は松尾 汐恩捕手(DeNA1位)が決勝戦で2本塁打を放つなど野手の主役が活躍し、前田は1年生らしい勢いある投球を見せていた。

 今年は前田が主将となったが、文字通り前田のチームになった印象だ。もちろん起用は前田頼りではなく、準々決勝、決勝戦では南 恒誠投手(2年)が先発した。前田が準決勝の仙台育英(東北・宮城)戦では161球を投げたことを考慮し、決勝戦ではリリーフ登板となった。もし中1日であれば、登板させない方針を明かし、そして決勝戦も大差で負けた試合展開にならば登板させるつもりはなかったようで、前田を投げずに勝つゲームを作ろうとしている雰囲気がある。また、野手も一振りで流れを変える松尾のようなスラッガーはおらず、巧打者が多く、勝負強さを持った選手が多い。

 前田の課題としてはまだまだコマンド力や、直球の強さなど物足りなさはある。前田の直球が最も凄いと思ったのは、2年夏の大阪大会決勝の履正社戦。140キロ後半の伸びのある直球には圧倒された。

 技術的には文句をつけるところはほとんどない。あとは、どうすれば自分のパフォーマンスを最大限発揮することができるか。その調整、フォームを見つけることを期待したい。

 他の投手陣では南恒は直球の威力や変化球の精度は高いが、決勝戦で2回降板と悔しい内容に終わった。南 陽人投手(1年)は140キロ前半の速球を投げ込むなど、伸びのある快速球は南恒以上と思わせる。140キロ前後の速球を投げ込む松井 弘樹投手(2年)、130キロ中盤の速球を投げる藤井 勇真投手(2年)も期待の好左腕。

 投手陣は競争で、近畿大会でベンチ入りしていた速球派右腕・平嶋 桂知投手(1年)、大型左腕・佐藤 幹晃投手(2年)、二刀流として期待も高い境 亮陽外野手(1年)がいる。他にもベンチ入りしていない投手からも、中学時代から騒がれていた逸材が多く、大阪桐蔭は12月〜1月の激しい競争を行うため、そこで新たな投手が出てくるかもしれない。

 打者については1年生のほうがスター性のある打者が多い。3番打者として活躍した徳丸 快晴外野手(1年)は、打撃技術が高く、「近畿大会よりも思い切り振ることができています」と語る。

 決勝戦でスタメン出場したラマル ギービン ラタナヤケ内野手(1年)も話題となった。スラッガータイプながら、まだ打撃内容としては大人しい感じがあり、空振り三振を恐れず、強く振ることを目指してほしい。そういう1年生に対して、西谷監督は「前田も当時は1年生らしく勢いを持って投げていたように、彼らも1年生らしく勢いよくやってほしいです」と期待を込める。それを支える2年生選手は球際に強く、ここぞという場面で勝負強さを発揮する点について、準決勝で戦った仙台育英の須江監督も称えていた。

 西谷監督は「今年のチームは前田以外、大舞台を知らない選手。南恒などセンバツ後の春の大会で使った時期がありましたが、やはり大舞台になると力を発揮する難しさを感じると思います」

 西谷監督は今大会、選手たちに未熟さが見られるプレーが見えたのはある意味、織り込み済みであろう。だからこそ今大会のテーマは「勉強」と位置づけた。前田は「また一から作り直したいです」と語るように、春の全国制覇へ向けて、課題は山積みだと実感した。

 高校生の面白いところは別人のような成長を見せる可能性があること。神宮大会で出た課題を消化し、圧倒的な力で勝利するチームになれるか注目だ。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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