絶対に語り継ぐべき「エース」抜きで東海準優勝となった聖隷クリストファーの昨秋の戦いぶり
左から今久留主 倭、堀内 謙吾、塚原 流星
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第94回選抜高等学校野球大会(3月18日開幕、阪神甲子園球場)の出場校が決まったが、聖隷クリストファー(静岡)の落選が波紋となっている。毎年、センバツ選考後にネット上でも賛否両論が起こるが、ほぼ「否」の意見しかない事態は初めてといっていいかもしれない。
大垣日大(岐阜)を評価した理由については、個々の能力、投手力が聖隷クリストファーに勝る点など。また、静岡(静岡)、享栄(愛知)を破った点も評価をしていた。
静岡は147キロ右腕・吉田 優飛投手(2年)を擁し、好左腕・藤本 逸希投手(2年)擁する享栄は、投手力という面で、東海地区の中では、1歩リードしていた。この両校を破る試合を見た選考委員会にとってはかなりプラスの評価で、「甲子園」を戦えるチームと判断した部分もあるだろう。
大垣日大は変則ながらボールに力がある大型左腕・五島 幹士投手(2年)を含めて有望な選手も多い。ぜひセンバツでは堂々と戦ってほしい。
今回、強調したいのは、聖隷クリストファーの昨秋の戦いぶりは決して忘れてはいけないし、戦力が足りないチームの模範となる存在となることだ。「個人能力派」の選考委員会が望むチームは、加盟校3,890のうち、10%、いや5%にも満たないと思う。ほぼ、どのチームも、足りない点を補いながら、チームを作り、大会に向かっている。
聖隷クリストファーは緊急事態を乗り越えて、東海大会準優勝を果たしたチームだ。
静岡県大会で、42回を投げ、県大会準優勝に貢献したエース・弓達 寛之投手(2年)が1回戦後に肘の故障で登板ができない事態に。さらに正捕手・河合 陸(2年)も故障し、内野手の水谷 紘基(1年)がマスクをかぶることになった。
東海大会の2回戦以降は、背番号5の堀内 謙吾内野手(1年)、背番号9の塚原 流星外野手(2年)、背番号10の今久留主 倭投手(1年)がマウンドに登り、野手2人と控え投手で乗り切って準優勝という成績を残した。
堀内はまさに野手投げのフォームから120キロ台の直球をコーナーに投げきって打たせて取る投手。塚原も、120キロ台の速球と変化球で勝負する左腕。今久留主は、120キロ台の直球とゆるいカーブで勝負する1年生右腕で、確かにレベル自体は高い投手陣ではなく、選考委員会が不安視するのも分かる。
ただエースが投げられない不測の事態を乗り越え、東海大会準優勝を勝ち取った功績はもっと称えられるべきであろう。
役者もすべて揃って、コンディションもバッチリで、勝てれば理想。いつもそういかないのが野球なのだから、試合を大きく壊さず勝ち抜いた聖隷クリストファーの試合運びは、多くのチームのモデルになる。
お互い力を合わせて、カバーしあうことで夢は近づく。どんな結果になっても、そこに邁進する姿勢は、多くの人に響き、応援されるチームになる。聖隷クリストファーはそうしたチームカラーを堅持しつつ、夏にはあっと驚くチームになってほしい。まだ聖地を目指せるチャンスはある。
(文=河嶋 宗一)