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エース布施率いる二松学舎、強打復活の日大三などが登場!秋季東京都大会準決勝2試合の見どころは?

2021.11.05

 9月4日に1次予選が始まった秋季都大会も、準決勝、決勝を残すだけになった。夏の甲子園の出場メンバーが多く残り、優勝候補筆頭であった東海大菅生が敗れ、優勝争いは混とんとしてきた。とはいえ、勝ち残った二松学舎大附関東一國學院久我山日大三の4校は、夏はベスト4以上の強豪揃い。熱戦が予想される準決勝を展望する。

ライバル対決!二松学舎大附の左腕・布施VS関東一の足

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布施東海(二松学舎大附)、柳瀬冬和(関東一)

 東東京のライバル対決。二松学舎大附が夏の甲子園初出場を果たした2014年以降、独自大会となった昨年を除き、二松学舎大附が4回、関東一が3回と、東東京大会はどちらかが優勝している。この夏は両校が決勝戦で対戦し、二松学舎大附が勝っている。もっとも秋季大会での対戦は、2015年の決勝戦以来になる。この時は関東一大江 竜聖(現巨人)を擁する二松学舎大附を破っている。

 今回も、実力はほぼ互角。投手力ではエースの左腕・布施 東海を擁する二松学舎大附が上回る。布施は3回戦の安田学園戦で失点3、準々決勝の都立狛江戦では失点2で8回途中に大矢 青葉のリリーフを仰ぐなど、決して万全とは言えない。それでも「変化球でストライクが取れる」と、市原 勝人監督の信頼も厚い。四死球も少なく、大崩れはしない。

 関東一は走塁で相手投手を攻略してきた。二松学舎大附の布施が左腕であっても、米澤 貴光監督は「足を使わないと点が取れない」と、積極的に走ることを公言する。

 特に注目なのが2番の柳瀬 冬和。1回戦からの4試合で盗塁6。普通の内野ゴロでも安打にする走力がある。下位打線の三浦麟も、ここ2試合で盗塁4と、出塁すると点に絡んでくる。長打力のある選手は少ないが、1番の井坪 陽生は、本来は3番か4番を打てる攻撃のキーマンだ。準々決勝では、先発全員安打を達成。チーム全体に当たりが出てきたのは好材料だ。

 問題は投手力だ。安定感なら準々決勝で先発した左腕の桝川 颯太、球威なら1回戦と3回戦に先発した井坪 陽生、経験ならエースの成井 颯となる。しかし成井は2回戦の早稲田実戦は完封したものの、3回戦の都立城東戦では4回2/3で被安打7、失点4と、調子を落としているのが気になる。2週間で調子をどこまで取り戻したか?

 関東一は1番・井坪、2番・柳瀬以外は、試合ごとに打順がかなり入れ替わっているが、二松学舎大附は、2回戦以降はほぼ不動のオーダーだ。キーマンはやはり4番の瀬谷 大夢。準々決勝までの打率が.571、本塁打2本と、抜群の成績。1番・藤岡良祐も打率が4割を超えている。両者をつなぐ2番・柴田 壮太郎と3番・親富祖 凪人がどれだけ出塁するかで得点は左右される。5番・大矢は、このチームでの公式戦1号本塁打を記録している。

 互いに手の内を知り尽くすライバル同士。勝負のカギは、これまでさほど活躍していない隠れたヒーローが握っているのかもしれない。

[page_break:夏の準決勝の再戦!日大三の強力打線に國學院久我山は全員野球で対抗]

夏の準決勝の再戦!日大三の強力打線に國學院久我山は全員野球で対抗

エース布施率いる二松学舎、強打復活の日大三などが登場!秋季東京都大会準決勝2試合の見どころは? | 高校野球ドットコム
矢後和也(日大三)、下川邊隼人(國學院久我山)

 この夏の西東京大会の準決勝の再戦だ。この時は國學院久我山が第1シードの日大三を破った。

 この秋は、日大三は2回戦以降、エースの矢後 和也が1人で投げ切っているのに対し、國學院久我山は、準々決勝の帝京戦で4人の投手をつなぐなど、全員野球で勝ち進んできた。

 夏場はコロナの影響で十分な練習ができず、小倉 全由監督が「春には、いいチームになりますよ」と語っていた日大三が、今秋に準決勝に進出したのには、矢後の成長が大きい。3回戦の八王子戦では、「人生初」という9回完封勝利を飾り、準々決勝では、被安打10、失点7を記録しながらも、粘り強い投球で優勝候補の東海大菅生を破った。準々決勝では四死球2と、投球が安定している。

 打線の中心はこの夏、サイクル安打を達成した3番の富塚 隼介だ。今大会、ここまでの打率は6割。3回戦の八王子戦では、勝負を決める三塁打を放っている。ここまでやや不振だった4番の浅倉 大聖も、準々決勝では逆転の三塁打を放つなど、当たりが戻ってきたのは心強い。それに1番の大川 智矢は、3回戦では二塁打、準々決勝では本塁打を第1打席で放ち、チームに勢いをもたらしている。沖縄出身の金澤 海斗も準々決勝では4打数4安打を記録するなど、打線全体に厚みが出ている。

 國學院久我山は大きな特徴がないことが武器の「全員野球」のチームだ。背番号11の右腕・成田 陸が事実上のエースだが、準々決勝では1イニングを投げただけ。尾崎 直輝監督は、「タイプの違うピッチャーが揃っている」と語る。この大会では、成田の他にも右の松本 宗二郎、左の松本 慎之介渡邊 建伸が登板している。準々決勝では、松本 慎之介の好投が光った。

 打線も全員野球ではあるが、1番・齋藤 誠賢、2番・木津 寿哉、3番・上田 太陽、5番・下川邊 隼人という夏を経験した選手に、4番の成田が中心になる。

 夏の大会では、バント戦法で相手チームを苦しめた。この秋も、夏に比べると精度は落ちるものの、バントは重要な武器になっている。

 実力としては日大三が上であろう。夏は負けているだけに、気持ちも入っている。しかし、國學院久我山は全員野球である分、力を推し量るのが難しい。バントなどで攪乱すれば勝機もある。

 決勝戦は東東京対西東京の対戦になることは決まっている。中止なった昨年も含め、東京からのセンバツ出場は4年続けて1校止まりだ。次回こそ、2校出場してほしいと思う。ただ現場の指導者としては、優勝しないとセンバツ出場は困難という前提で戦わざるを得ない。これまでは基本的に試合は1週間に1回だったが、準決勝と決勝戦は連戦になる。おそらく、決勝戦まで見据えて準決勝を戦う余裕は、どの学校にもないだろう。そのため、決勝戦は総力戦にならざるを得ない。いずれにしても、センバツにつながる好試合を期待したい。

(記事:大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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