市立横浜商業高等学校(神奈川)
今年で創部120年目となる横浜市立横浜商業高校。その長い伝統と継承を大事にしながら選手の個性を活かすチーム作りをしている榎屋 剛監督と、そして、厳しくも明るい松本主将を中心に今夏にかける思いを語っていただきました。
就任3年目の榎屋監督のもと、育ってきた3年生
キャプテンの指示出しに集中(市立横浜商業高等学校)
今の3年生の入学と同じ年に監督に就任した榎屋監督。就任してすぐに、「打てるチーム」と、「個々を活かすチーム」の2つを柱に置いて、チーム作りを進めてきた。
打てるチームを目指すために、朝練習では、バッティングのみに専念。自宅が遠い選手だと、片道1時間半ほどかかる選手もいるが、毎朝7時15分~8時の時間帯で朝練習を実施してきた。
さらに、もう一つの「個」を活かすという点では、基本的に選手にプレースタイルは任せ、個々で考える指導法をとっている。この日のバッティング練習でも、その「個」の部分は垣間みられた。
足を上げる選手や、繋ぎ役に徹底するためバットを短く持って逆方向へ打球を打つ選手など、実に個性的だが、考え抜かれた打ち方をする選手が多いチームが作られているなという印象を受けた。
もちろん守備も、冬場に徹底したランニングとフットワークの練習を重ねてきたおかげで、守備への不安はない。そして投手陣については、夏を前にしてピッチャーの門川 将士が昨年秋の故障からようやく戻って来た。榎屋監督は、夏への期待をこう話してくださった。
「門川は今なら完投が出来る。頼もしい投手です」
また、打線について、榎屋監督は、
「左の鈴木 健斗は勝負強いし選球眼もある。大高 真吾も粘り強く、松本 航はここぞという場面で本当に頼りになる。青柳 雄貴も力がある。他にも調子の良い選手は多いので、楽しみですね」
と語った。
最後に、温厚で人情身溢れる榎屋監督は夏の大会に向けて、
「何とか勝たせてあげたいです。27名の3年生と共に戦い、試合では決して諦めずに、このチームの強みを出していきます」
と、思いのたけを述べた。
ラストサマーへの思い
笑顔が自慢の松本 航主将(市立横浜商業高等学校)
そして、チームをまとめている松本 航主将も最後の夏に向けて語ってくれた。
「今のチーム状況は非常に上向いて来ています。きっかけは6月上旬に行われた練習試合で夏のベンチに入るか入らないかという選手が、9回2アウトから気合いでヒットを打ち、4点差を追いついたことがきっかけで、それまで負けこんで暗いムードもあったのですが、この選手の気迫がチームに伝わり、今いい雰囲気になってきています。
また榎屋 剛監督も、私立が強いと言われるこの神奈川の中で公立高校を強くしたいとの思いで来て下さいました。自分も同じ気持ちです。監督さんが考えていることは僕が一番理解しているつもりです。だから監督さんをどうしても胴上げしたい」
この言葉の通り、キャプテンも最後まであきらめない横浜商業高校を見て欲しいと笑顔をみせた。
また、3年間共に戦ってきた縁の下の力持ち・マネージャーの水野 菫さんと渡瀬 穂乃香さんも選手たちにエールを送る。
「このチームは本当に個性いっぱいの選手たちが多くて元気いっぱいのチームです。先輩も後輩と仲が良く、心から楽しそうに野球をやっているなと感じます。夏まで残り少ない日数ですが、練習で追い込んで心身ともに辛い思いをしてるのも分かっています。私たちは声を掛けてあげることしかできないですが、しっかりと支えたいです。そして一日でも長く野球が出来るように頑張ります」
100人を超える部員がいる横浜商業高校。監督を始め、部員たちには目に見えないプレッシャーと誇りがあるだろう。
この夏も強い団結力で、頂点を目指す。
横浜商業高校は7月1週目に、「僕らの熱い夏」でも公開予定です!お楽しみに!
(取材・文=南乃 啓之介)