「野球部訪問」

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第5回 県立浦添商業高等(沖縄)2010年06月19日

加盟校4132校。
全国の高野連の加盟校数である。(2009年5月時点)
様々な環境の下、全国でこれだけの高校で球児達が毎日白球を追いかけている。
今月から新企画・「野球部訪問」は、全国津々浦々、様々な野球部を訪問。
頑張っている球児や指導者の高校野球への取り組みを紹介していく。
第5回は沖縄の浦添商業高等学校です。

夏に打ち勝つ

【神谷嘉宗監】

 東北地方ではまだ、寒さに耐えながら練習をしているチームもあるというのに、沖縄では、春季県大会の組み合わせ抽選会が行われた日だった。
「闘志前面」が掲げられたグラウンドでは、ノックが行われている。
しばらくして、抽選を終えた神谷嘉宗監督が登場した。
「全体的にまとまっている、バランスのよいチーム。伊波みたいなピッチャーはいないけど、チーム全体としてまとまっている。走攻守、特に機動力がいい。足がある。バッティングは一昨年と引けをとらない」。

 一昨年とは、2008年夏。大会ナンバー1右腕といわれた伊波翔悟を擁し、ベスト4まで駆け上がった。
「チーム紹介にも書いたんだけど」と神谷監督が見せてくれたのは、新聞社に提出する資料。「激しく、怒涛の如くいこうと」。テーマは「疾風迅雷」。積極的な攻撃力で夏を見据えた春にしたいのだという。
「夏は打てないと勝てない。攻撃力がないと。ピッチャーも大事なんだけど、150キロでも打たれるんだから。由規(現ヤクルト)にしても雄星(現西武)にしても。伊波たちも打ち合いだった。ピッチャーは抑えきれない。日程的に暑いし、バテるし。攻撃力のあるチームが勝っている。1-0のゲームじゃない。「疾風迅雷」の如く、チーム作りをしてみようと。バントもきちんとやらないといけないけど、打つべきところでしっかり打たないといけないと思います」。


【 大嶺俊貴 主将 】

 ベンチ入りメンバーは大会のたびに投票が行われる。
「だから、最後までみんな頑張りますよね。やらせる練習ではなく、自ら取り組むことを考えて。お互いに注意しあえるような自主・自立ですね。日頃からやらないと試合で発揮できない」。
試合は日頃の積み重ねが出る。練習していないことをやろうとしていて、たとえ、できたとしても偶然でしかない。練習してきたことが、試合でできたときの嬉しさは格別だ。偶然できたものも嬉しいけど、努力の賜物は味が違う。

 主将の大嶺俊貴(3年)は178センチ、80キロの立派な体格。「体格を生かしてヒットじゃなくて長打を打てるバッターを目指します」と頼もしい。

「1人1人個性があって、どういう場面でも1人1人が意見を口に出せるチーム。1つのミスをほったらかすんじゃなくて。1年生が2年生に注意することもある、そういう雰囲気があります。2つ上が甲子園に行ったのですが、そのチームより打撃の評価が上。打撃を中心に大量点を取ってピッチャーを助けたい」。
年末は1週間の強化練習で、午前7時から午後9時まで。「バットをたくさん振ってきました」。夏に打ち勝つための強力打線作った。
部員の目のつくところには「振って、振って、振りまくれ!!」「振る勇気なき者は、去れ!!」の文字がある。

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バッテリー、最後の夏

【闘志前面】

 沖縄は今、全国屈指の激戦区。どこが優勝してもおかしくない状態だ。特に好投手がそろっている。興南・島袋、嘉手納・池原、糸満・宮国・・・。
そこに割って入ろうと腕を磨く、浦添商のエースは比嘉嵐志(3年)。ひが・あらし。
「嵐を巻き起こせって感じだね。ただ、暴れまわるんじゃなくて志を持って嵐を起こせ」と、神谷監督は冗談交じりに期待を込める。
その嵐志、「エースとして投げているので。マウンドに立っている分、チームのみんなより燃えていかないと」と、闘志満々。

というのも、「去年の夏、大一番の大会で自分が投げて負けているんです。自分から努力してやっていかないと、また同じ失敗をするかもというのがある。神谷先生からも『マウンドが一番高い。一番高いところに立っているんだから燃えていけよ』と言われているんです」。
名前は、お母さんが「嵐」と付けようとしたが、ひいおばあちゃんから「志」を付けた方がいいんじゃないかと提案があり、「嵐志」となったという。

 練習を見ていて最も気になった選手がキャッチャーだった。絵に描いたような「ドカベン」。大きな体だが、足は遅くない。ファーストへのカバーリングも遅れることはない。玉城 大夢はキャッチャーで入学したが、昨年はファーストのレギュラー。打順は4番を打った。破壊力抜群の打力が魅力的だが、肩が弱かった。この冬でスローイングが良くなったことで“本職”に戻った。


【浦添商のバッテリー・玉城(左)と比嘉】


 「流しても引っ張っても、広角にホームランを打てる。打率も高い。キャッチャーでいい味出している。2年生だけど、指示も出せて」と神谷監督は評価する。
グランドの打席から105メートル先のネットは軽々越える。大分、高さもあるが、推定飛距離130メートル弾。竹バットで放り込んでしまう。学校長が観に来た紅白戦でも2本塁打でかさ上げアピールをしたという。
「4番なんで。自分が思いっきり振って、ピッチャーにプレッシャーを与えたい。当てにいくとピッチャーを助けてしまう。怖いなと思われる4番バッターになりたい」。

 大きな夢を持ってほしいと名づけられた「大夢」で「ヒロム」。166センチ、90キロ弱は横に座っている姿は丸くてかわいい。だけど、きっと、打席に立つと目つきが変わり、体中からオーラを出して、もっと、もっと大きく迫力のある姿になるのだろう。

 このバッテリーは、読谷ボーイズ時代からのバッテリーだ。1つ学年が違うから、玉城が比嘉を追い掛けてきたことになる。「中学から組んでいるので。ワンバンとか、変化投げても止めてくれるので信頼しています。他のキャッチャーよりは合うので。大きい分、投げやすいです」と比嘉。一方、玉城は「今年で最後。一緒に甲子園に行って、引退してほしい」と、なんとも後輩らしい回答だった。

春季県大会は3回戦で中部商に4-7で敗れた。部員の目のつくところには「臥薪嘗胆」の文字がある。「一度味わった屈辱を晴らそうとし、苦心・苦労を重ねてチャンスの到来を待つこと」とその意味も。

 今日、沖縄の夏が始まる。浦添商の初戦は23日、辺土名と対戦する。
勝敗はゲームセットの瞬間に分かればいい。自信を持って、全力を出し尽くせ。がんばれ、浦添商ナイン。

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浦添商 【高校別データ】

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プロフィール

高橋昌江
高橋 昌江
  • ■ 生年月日:1987年3月7日
  • ■ 出身地:宮城県栗原市(旧若柳町)
  • ■ 宮城県仙台市在住のフリーライター
    少年野球からプロ野球まで幅広く“野球”を取材し、多方面に寄稿している。
  • ■ 中学校からソフトボールを始め、大学2年までプレーヤー。大学3年からはソフトボール部と新聞部を兼部し、学生記者として取材経験を重ねる。
    ソフトボールではベンチ入りはできなかったものの、1年と4年の2回、全日本大学女子ソフトボール選手権大会で優勝を経験した。
    新聞部では何でも取材したが、特に硬式野球部の取材をメインに行っていた。最後は明治神宮大会準優勝を見届けた。
  • ■ ソフトボール部の活動から得た「人間性、人間力」を軸に「どう生きるか」を考えている。
  • ■ 野球が好きというよりは、野球の監督・コーチ・選手・関係者と話しをして、聴いたこと、感じたことを書いて伝えることが好き。“野球”については、常に勉強中。
  • ■ 【言葉には、力がある】が信念
  • ■ 取材時の持ち物は「気持ち、熱意、真心、笑顔」。
  • ■ 愛読書はデール・カーネギー『人を動かす』など自己啓発系が多い。
  • ■ 『高校野球ドットコム』にて「みとのく便り~心の高校野球~」好評連載中!!
  • ■ ブログ:「今日も青空の下で、笑顔を咲かせる」(高橋昌江オフィシャルブログ)
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