目次

[1]ハードワークが生んだ一体感
[2]1勝ずつ積み重ねて甲子園の切符を掴む>




前田 拓来(鳥取城北)

 2023年も3月のセンバツを皮切りに熱戦が期待される。神宮大会を制した大阪桐蔭(大阪)、さらに決勝戦で奮闘した広陵(広島)などが中心となって、高校野球界を牽引していくだろう。

 そんな広陵と接戦を演じ、センバツ出場へ期待が膨らんでいるのが、春夏合わせて甲子園8度の出場を誇る鳥取城北(鳥取)だった。

 秋季中国大会では、一時3点差までリードを奪うも終盤で主導権を明け渡し、6対8で敗れた。ベスト4という結果に終わり、センバツ出場に向けては当落線上に入ることになった。

ハードワークが生んだ一体感

 「終盤で個人の差を感じましたけど、向こうは神宮大会で準優勝した。そんなチームと接戦が出来たことは自信を持てました」

 チームの主力である前田 拓来内野手(2年)は広陵との一戦を振り返った。夏は鳥取大会2回戦で倉吉北に敗れてから新チームはスタートを切ったが、メンバーはほとんど入れ替わった。まさに1からのスタートだった。当時は「全員が不安だったので、一体感はありませんでした」と前田は話す。

 取材日の様子を見ていると、チーム全体が明るく、まとまりのある印象が強い。一体感がなかった発足時からどのようにして士気をあげたのか。

「夏休み中、振り込みはもちろん、タイヤを使ったトレーニングや坂道ダッシュなど、練習量はかなりこなしました。どれもきついメニューだったので、全員で『頑張ろう』と声掛けをしあうなかで一体感が生まれたと思います」

 チームを指揮する大林監督は「体力、精神力を鍛えることはもちろん、疲れてきてからどれだけ気持ちを保てるか。それが甲子園では必要です」と、去年の冬でも少なくても1000回はメニューを組むなど、練習量をこなすことは意識している。

 取材日も振り込みをする班は、1時間で500スイングするメニューが組まれた。かなりのハイペースに、選手たちの表情を見ていれば厳しい練習であることは見て取れた。ペースについていけない選手が出てくると、自然と周りの仲間たちが声をかけて鼓舞するシーンもあった。

 こうした瞬間を夏休みから数多く共有してきたからこそ、鳥取城北はチームとして一体感が生まれてきた。