第435回 宇部鴻城高等学校(山口)「教育の一環」かつ「真に強い集団」として2017年06月09日

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[1]「掃き清められた砂利」と「朝練習」に見える「高校野球の精神」
[2]個人ばかりでなく「チームで戦う」メニューの数々
[3]「真に強い集団」への再出発

 春の山口県大会を秋に続いて制覇。次なる目標を夏の甲子園出場に定める宇部鴻城(山口)。センバツ初戦で優勝した大阪桐蔭に大敗したショックを払しょくした陰には、冬に積んだ精神力とスタミナを鍛えるトレーニングや高校野球の原点「教育の一環」を貫く姿勢があった。


「掃き清められた砂利」と「朝練習」に見える「高校野球の精神」

周囲の通路まで掃き清められているグラウンド

 日本屈指の工業都市である山口県宇部市。その工業地を見据える丘の上にある宇部鴻城高等学校。校舎を挟んで広がる野球部グラウンドの朝は、冬のある休日では、平日朝の全体練習禁止、平日の練習19時半までを取り戻すかのように早い。6時を過ぎるとバックネット裏の応接室には明かりが灯り、マネジャーたちが掃除や準備を始める。

 その応接室から、入口まで続く砂利道。ふと足元を見ると、まるで砂利には京都の庭園のような一定の文様が描かれていた。踏みしめると「シャキ、シャキ」と規則的な音がする。筆者もこれまで様々な高校野球部を取材しているが、このようなグラウンドのみならず、グラウンド外の隅々まで整備が行き届いているのははじめてだ。

「練習後に1時間くらい。みんなで整備をするんですよ」。荒武 華穂マネジャー(3年)が明かしてくれた「自らと向き合い、細部まで心を研ぎ澄ます」高校野球基本精神の徹底ぶりは、日が昇るとさらに明らかとなっていく。

 7時を過ぎると次々とやってくる選手たち。ところが、彼らはまずグラウンドに入ると、黙々と三々五々の動きを始めた。ある選手がショートダッシュを繰り返せば、ある選手はタイヤ引き。主将の嶋谷 将平(3年・遊撃手・右投右打・180センチ82キロ・宇部市立常盤中出身)は「センター返しを意識するために」と正面からのティーバッティング。外を見るとグラウンド周りを走る選手もいる。

「ウチの場合、朝と全体練習後に課題練習があります。それぞれの目標を決めて、そこに達するための個人トレーニングをしていきます。ただ、技術練習を除く朝練習の2人以上練習は禁止。自分と向き合う時間を作る時間も必要なので、そこはメリハリを付けながらやっています」と横で教えてくれたのは海星(三重)、皇學館大を経て淞南学園(現:立正大淞南<島根>)、京都両洋でコーチ・部長・監督を歴任後、就任13年目を迎える尾崎 公彦監督だ。

「タイヤを引き続けたことで、ベースランニングの加速がよくなったと思います」。山口県大会1回戦・西京相手に放ったランニング2ランを皮切りに、昨秋は公式戦43打数20安打1本塁打8打点のリードオフマン・古谷 慎吾(3年・左翼手・右投右打・168センチ70キロ・宇部市立常盤中出身)も、こういった形の朝練習効果を実感している1人である。

 かくして約30分あまり、自分の目標と向き合った選手たちは、「集合!」の声と共に今度は「チームとして戦う」全体練習へ突入していった。

【次のページ】 個人ばかりでなく「チームで戦う」メニューの数々

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嶋谷 将平(宇部鴻城) 【選手名鑑】
宇部鴻城 【高校別データ】
山口鴻城 【高校別データ】

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プロフィール

寺下友徳
寺下 友徳
  • 生年月日:1971年12月17日
  • 出身地:福井県生まれの東京都東村山市育ち
  • ■ 経歴
    國學院大學久我山高→亜細亜大。
    幼稚園、小学校では身長順で並ぶと常に一番後ろ。ただし、自他共に認める運動音痴から小学校入学時、早々に競技生活を断念。その後は大好きなスポーツに側面から関わることを志し、大学では応援指導部で4年間研鑽を積む。亜細亜大卒業後はファーストフード販売業に始まり、ビルメンテナンス営業からフリーターへと波乱万丈の人生を送っていたが、04年10月にサッカーを通じて知り合った編集者からのアドバイスをきっかけに晴れてフリーライター業に転進。07年2月からは埼玉県所沢市から愛媛県松山市へと居を移し、現在は四国地域を中心としたスポーツを追いかける日々を過ごす。
  • ■ 小学校2年時に福岡からやってきた西武ライオンズが野球と出会うきっかけ。小・中学校時代では暇さえあれば足を運んでいた西武球場で、高校では夏の西東京予選の応援で、そして大学では部活のフィールドだった神宮球場で様々な野球を体感。その経験が取材や原稿作成の際に「原体験」となって活きていることを今になってつくづく感じている。
  • ■ 執筆実績
    web上では『ベースボールドットコム』(高校野球ドットコム、社会人野球ドットコム、独立リーグドットコム)、書籍では『ホームラン』、『野球太郎』(いずれも廣済堂出版)、『週刊ベースボール』(ベースボール・マガジン社)など。『甲子園だけが高校野球ではない2』(監修・岩崎夏海、廣済堂出版)でも6話分の取材・文を担当した。

    さらに野球以外でもサッカーでは、デイリースポーツ四国3県(香川・高知・愛媛)版・毎週木曜不定期連載中の『スポーツライター寺下友徳・愛媛一丸奮闘記』をはじめ、「週刊サッカーダイジェスト」(日本スポーツ企画社)、『サッカー批評』、web『スポーツナビ』など多数媒体での執筆実績あり。また、愛媛県を熱くするスポーツ雑誌『EPS(ehime photo sports)』でも取材協力を行っている。
  • ■ ブログ:『寺下友徳の「四国の国からこんにちは」』■twitterアカウント@t_terashita
    ■facebook: http://www.facebook.com/tomonori.terashita
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