
平成国際大・冨士 隼斗
今年の大学強化合宿で最も株を上げたのが、平成国際大の冨士 隼斗投手(3年=大宮東)だろう。最速155キロを計測するなど、改めて次元の違いを見せた。今年は150キロ超えの投手が多かったものの、「155キロ」と「150キロ」ではやはりレベルが違う。
ネット裏から見てもその勢いは別格だった。
「この日は速い球で勝負しようと思っていました」
冨士は3日の紅白戦で、自分の武器である速球を目いっぱい投げ込んだ。直球の最遅が149キロで、ほとんどが150キロ台。155キロを計測した直球は空振りを奪うことができていた。慶應義塾大のスラッガー・廣瀬 隆太内野手(3年=慶應義塾高)には直球を打たれたが、廣瀬も「今年、対戦してきた投手の中では一番速かったです。あれは間一髪です」と言わせるほど。東京六大学は楽天ドラフト1位の荘司 康誠投手(新潟明訓出身)や法政大の速球投手・篠木 健太郎投手(2年=木更津総合)がいる。そういった速球投手たちと対戦している廣瀬の言葉は価値が高い。
実際に回転効率が高そうな直球で、短いイニングでの迫力は、ドラ1クラスのものだ。
「廣瀬選手の本塁打は失投です。甘く入ってしまったのが反省点でした。変化球の精度やコントロールを高めていきたい」と語った。
冨士は速球中心の投球を見せた。紅白戦は参加投手がすべて投げるため、投げても最大2イニング。自身の能力を見せるためにも、フルスロットルで投げたスタイルは正しい。本塁打こそ打たれたものの、球質の良い剛速球を披露したインパクトが大きく、評価を下げるものではないといえる。
大宮東(埼玉)時代、平成国際大野球部を受けるために臨んだセレクションでは138キロだった。そこから17キロもレベルアップして、155キロまでなったのはトレーニングはもちろん、フォーム技術を徹底的に学んだことが背景にあった。
トレーニング、フォーム技術の習得。単調なことかもしれないが、愚直に向き合ったことが、規格外の速球を身につけるまでにいたった。
合宿前まで不調だったが、突っ込み気味だったフォームを見直し、軸足の使い方を意識し、大きく改善した。改めてその投球フォームを見ると、全身をバランスよく使ったフォームで、左足の踏み込みの強さ、腕の振りの鋭さなど躍動感が伝わってくる。
高校時代は全くの無名投手。公式戦の登板はなかった。大学で大きく伸びたものの、代表候補として練習参加は初めて。
「凄い選手ばかりで緊張しますが、学んだことは多いですし、また呼ばれるように、来春のリーグ戦で圧倒的な投球を見せたい」
155キロ前後の速球を投げ込み、クローザーとして活躍した巨人・大勢投手(西脇工出身)のようにリリーフ向きの剛速球投手が評価されるようになっている。冨士にはその素質はあり、23年のパフォーマンスが楽しみだ。
(記事=河嶋 宗一)