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規格外の「155キロ」を見せた平成国際大の冨士隼斗はいかにして剛速球を投げられるようになったのか?

2022.12.17

規格外の「155キロ」を見せた平成国際大の冨士隼斗はいかにして剛速球を投げられるようになったのか? | 高校野球ドットコム
平成国際大・冨士 隼斗

 今年の大学強化合宿で最も株を上げたのが、平成国際大の冨士 隼斗投手(3年=大宮東)だろう。最速155キロを計測するなど、改めて次元の違いを見せた。今年は150キロ超えの投手が多かったものの、「155キロ」と「150キロ」ではやはりレベルが違う。

 ネット裏から見てもその勢いは別格だった。

「この日は速い球で勝負しようと思っていました」

 冨士は3日の紅白戦で、自分の武器である速球を目いっぱい投げ込んだ。直球の最遅が149キロで、ほとんどが150キロ台。155キロを計測した直球は空振りを奪うことができていた。慶應義塾大のスラッガー・廣瀬 隆太内野手(3年=慶応義塾高)には直球を打たれたが、廣瀬も「今年、対戦してきた投手の中では一番速かったです。あれは間一髪です」と言わせるほど。東京六大学は楽天ドラフト1位の荘司 康誠投手(新潟明訓出身)や法政大の速球投手・篠木 健太郎投手(2年=木更津総合)がいる。そういった速球投手たちと対戦している廣瀬の言葉は価値が高い。

 実際に回転効率が高そうな直球で、短いイニングでの迫力は、ドラ1クラスのものだ。

「廣瀬選手の本塁打は失投です。甘く入ってしまったのが反省点でした。変化球の精度やコントロールを高めていきたい」と語った。

 冨士は速球中心の投球を見せた。紅白戦は参加投手がすべて投げるため、投げても最大2イニング。自身の能力を見せるためにも、フルスロットルで投げたスタイルは正しい。本塁打こそ打たれたものの、球質の良い剛速球を披露したインパクトが大きく、評価を下げるものではないといえる。

 大宮東(埼玉)時代、平成国際大野球部を受けるために臨んだセレクションでは138キロだった。そこから17キロもレベルアップして、155キロまでなったのはトレーニングはもちろん、フォーム技術を徹底的に学んだことが背景にあった。

 トレーニング、フォーム技術の習得。単調なことかもしれないが、愚直に向き合ったことが、規格外の速球を身につけるまでにいたった。

 合宿前まで不調だったが、突っ込み気味だったフォームを見直し、軸足の使い方を意識し、大きく改善した。改めてその投球フォームを見ると、全身をバランスよく使ったフォームで、左足の踏み込みの強さ、腕の振りの鋭さなど躍動感が伝わってくる。

 高校時代は全くの無名投手。公式戦の登板はなかった。大学で大きく伸びたものの、代表候補として練習参加は初めて。

「凄い選手ばかりで緊張しますが、学んだことは多いですし、また呼ばれるように、来春のリーグ戦で圧倒的な投球を見せたい」

 155キロ前後の速球を投げ込み、クローザーとして活躍した巨人・大勢投手(西脇工出身)のようにリリーフ向きの剛速球投手が評価されるようになっている。冨士にはその素質はあり、23年のパフォーマンスが楽しみだ。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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