兵庫を代表する好投手同士の対決!柔の西垣雅矢(報徳学園)、剛の翁田大勢(西脇工)
今年の兵庫県を代表する好投手として注目されるのが翁田大勢(西脇工)と西垣雅矢(報徳学園)だろう。2人を表現するならば、翁田は140キロの速球でぐいぐい押す「剛」のピッチングで、西垣はしなやかなフォームから無理なく140キロ前後のストレートとカーブのコンビネーションで勝負する投手で、「柔」と表現できる投手である。この2人の投げ合いが4月22日に実現。二人の長所と夏へ向けて取り組むべき課題について迫る。
翁田と西垣の長所と課題
翁田大勢投手(西脇工)
4月22日、[stadium]明石トーカロ球場[/stadium]でNPB6球団のスカウトがこの男の投球を見るために集結した。その名は翁田大勢。西脇工のエースで4番としてチームを引っ張る存在だ。1回戦では東洋大姫路を無失点に抑える投球を見せた翁田。翁田は2013年夏、エースとして甲子園出場を導いた翁田勝基投手の弟である。マウンドに立つと、恵まれた体格は一目で目に付く。スリークォーター気味のフォームから140キロ台とスライダーのコンビネーションで勝負する姿勢は兄・勝基とそっくり。ひとつ言えば、弟のほうが、平均球速は上というところだろう。
その翁田の前に立ちふさがったのが選抜ベスト4の報徳学園打線だ。翁田は立ち上がりから140キロ台を連発し、評判通りのストレートを投げ込むが、しかし報徳学園打線はさすが140キロ台のストレートを投げるだけでは抑えられない。
1番永山裕真がセンター前ヒットを打つと、3番小園海斗にも安打を打たれ、一死一、三塁のピンチ。だが4番篠原翔太を併殺に打ち取ってなんとかピンチを切り抜けたものの、3回裏、一死一、二塁とピンチを迎え、4番篠原翔太に右中間を破る適時三塁打を打たれ、5番片岡心にも犠飛を打たれ、3失点を喫する。5回裏にも併殺崩れの間に1点を失う。さらに7回裏にも小園に三塁打を打たれ、4番篠原に142キロのストレートを右中間に打ち込まれ、6失点目。8回裏にも1点を失い、7失点とほろ苦い内容に終わった。
だがそれでも魅力十分の投球を見せてくれた。この日、ストレートは140キロ台(最速143キロ)を20球ほど計測し、最速146キロ右腕という評判が嘘偽りないものであることを示してくれた。しかも最速143キロは、7回裏に計測したもの。終盤でも、140キロ台を計測するスタミナは脅威的である。現在、身体づくりが進んでいて、体格が良い投手が多くなったが、翁田のようなエンジンの大きさを持った高校生右腕は少ない。スカウトはそこを最大限に評価しているだろう。
ただ課題は変化球、フォームの精度である。変化球は120キロ台のスライダーがあるが、報徳学園の対応をみるかぎり、それほど武器とはなっていない。絶対的な変化球を身に付けるべき。また投球フォームも体を沈み込んでから、捕手方向に向かって平面的な投げ方になるので、上背はあっても、開きが早くなりやすく、打者はタイミングを取りやすい。三振が少なかったのはそういう側面もあるだろう。とはいえ、常時140キロ台のストレートは威力十分で、6球団のスカウトが注目するだけのモノを見せてくれた。
対応力は全国トップクラスの報徳学園に対することができたのは夏へ向けて良い勉強になったはずだ。
西垣雅矢(報徳学園)投手
一方、報徳学園のエース・西垣雅矢。昨秋の時点では、ストレートの球速は120キロ後半。しかし一冬超えた選抜では、140キロ台を連発し、報徳学園ファンからも「あの西垣がこんなに速くなるとは思わなかったよ」と驚くほどの成長を見せた。西垣の何が良いかといえば、上半身・下半身の連動性があり、何でも同じフォームで投げられる再現性の高さを兼ね備えた投球フォームである。横回転が抑えられ、縦の動きで投げるフォームから繰り出すストレートは、140キロ前後でも球速表示以上のものを感じさせ、縦割れのカーブは、ストレートと同じ腕の振りで投げることができるので、打者は判別がしにくい。さらに甲子園で脅威を見せたフォークは少なかったが、夏へ向けてストレートを「磨いていきたい」という意思が感じられた投球であった。
翁田はプロ受けするポテンシャルは備わっているが、西垣はスピード面では135キロ~140キロとやや翁田に劣り、ややパンチ力不足なところがある。だが西垣の良さは、高い実戦力を兼ね備えた投球フォーム。打者にとって打たれにくく、なおかつキレの良いストレートと、変化球を投げられる投球フォームは簡単に身につかないもの。それを高校生の時点で備えているのは大きな強みである。さらに細身の体型で、まだ伸びしろがたっぷり残されていることを考えると、さらに球速アップが見込める投手であることは間違いない。
プロのスカウトは2人ともスピードガンで球速を測って、精力的にチェックしている様子が見られた。2人は引き続き夏でもドラフト候補としてチェック対象となっていることだろう。
2人は自身の努力でプロの扉をこじ開けることができるのか。成長を期待したい。
(文=河嶋宗一)
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