21世紀枠代表は都市部よりも地方勢の方がやはり有利
第92回センバツ高校野球の代表校が去る24日に発表された。選出された32校は秋季地区大会の上位校で、地区選出校は波乱もなく順当だったと言える。ただ、毎年選考を悩ますのは2001年の第73回大会から導入された21世紀枠の代表校選出だ。
2020年の21世紀枠選出の背景
21世紀枠に選出された平田
今年の21世紀枠代表校は、東日本で北海道の帯広農、西日本で島根県の平田、全体枠で福島県の磐城ということになった。北海道からは鵡川、遠軽に次いで3校目、福島県からも安積、いわき海星に次いで3校目、そして島根県からは過去に松江北、隠岐が連続して出場した実績もあり、益田翔陽に次いで4校目となった。21世紀枠で4校選出実績があるのは島根県のみだ。島根県の昨夏の参加が39校だったことを思うと、非常に高い確率ということになる。
他にも、過去3校目が選出されている県を見てみると岩手県(一関一、釜石、不来方)、宮城県(一迫商、利府、石巻工)、徳島県(川島、城南、富岡西)と和歌山県(和歌山向陽、海南、桐蔭)とがある。徳島県は30校、和歌山県からは39校からの選出ということになる。
その一方で、埼玉県、神奈川県、京都府、大阪府、福岡県などの加盟校も多く激戦区というイメージのところからの選出例はない。250校前後の加盟校がある東京都からも14年の都立小山台の一度だけである。加盟校数の多い地区としては愛知県が成章(08年)と豊橋工(15年)と2度選出されているが、190校近い加盟校数からすると必ずしも多いとは言えない。
こうしてみると、21世紀枠で選出されやすいのは都市部よりも、むしろ地方と言われる地域ということになる。もっとも、その背景には21世紀枠の選出理由の一つとされている「地域活動と困難克服」という点からも、過疎地や地方で頑張って活動している学校は選出されやすいという背景はある。今大会でも帯広農と平田はその理由にも該当するし、46年ぶりとなった磐城も地域一番の進学校で文武両道という側面もあるが、東日本大震災から立ち直っている途上で台風19号の被害を受けて被災地からの復興という面も大きいことは確かであろう。
つまり、今年の3校も都市部というよりは地方都市からの選出である。
もっとも、これは21世紀枠の選考基準を見てみると、そうなっていくことがある程度は自然だと思わざるを得ない。もう一度、おさらいすると、21世紀枠代表校の選考基準は次ののようになっている。
21世紀枠代表校の選考基準
帯広農ナイン
1 秋季都道府県大会のベスト16(129校以上の都道府県はベスト32)以上
2 少数部員、災害など困難な環境の克服
3 学業と部活動の両立
4 数年間にわたり試合成績が良好ながら、強豪校に惜敗するなどして甲子園出場機会に恵まれていない
5 創意工夫した練習で成果を上げている
6 部外を含めた活動が他の生徒や地域に好影響を与えている
以上の中で、1は絶対条件とすると、今回の出場校では帯広農は2、5、6の要素。平田は3、4、6の要素、磐城も2、3、6の要素が評価されたと考えられる。
見た目でわかりやすいのが2と5の要素となるが、地域で評価を得やすいのは3の要素の学校で、過去の例でも最初の安積、翌年の松江北はじめ柏崎、一関一、高松、金沢桜丘、都城泉ヶ丘、彦根東、大分上野丘、和歌山向陽、城南、大舘鳳鳴、洲本、土佐、小山台、桐蔭、松山東、長田、昨年の膳所などもそんなところだ。いずれも地域一番校という存在である。この中でいわゆる政令指定都市に存在しているのは東京都の小山台と神戸市の長田のみ。
これはもっともなことで、都市部の私立進学校と野球強豪校の二分化という構図は否めない中で、公立校が結果を残していくことは非常にハードルが高いという事実があるからだ。小山台はそんな中で4の要素も充たしていたことで、いわば“合わせ技”みたいな形での出場だった。そして、その後も18年と19年、2年連続で東東京大会決勝進出を果たしているのは素晴らしい。彦根東も、当時の今井義尚監督が「合わせ技で行かせてもろたようなもんですわ」などと語っていたが、その後に自力で夏春の甲子園に出場を果たしているのだから立派である。こうした現象を見ると、「21世紀枠での選出が、その後のチーム作りの背中を押した」ということもあると言える。
ただ、現実は2や5、6の要素が評価されて出場を果たした学校が次のステップでステージを上げていくことはかなり厳しい要素もある。それでも、一人の好投手などに恵まれた場合、参加校の少ない地方校の方が、21世紀枠代表という現実を勝ち取りやすいことだけは確かである。
この制度がいつまで継続されていくのかはわからないが、21世紀枠での出場を視野に入れて日々努力しているところも少なくないことも確かである。特に、地方の学校にとっては、手の届く位置にあるともいえるだけに、チーム作りへのモチベーションも高まっていくのではない出たろうか。ただ、選出された学校はそれぞれ、その戦い方を含めてより大きな責務を背負っていくということも確かである。
ただ、昨年の石岡一や富岡西のような試合をしていかれるのであれば、勝利に届かなかったとしてもこの制度で甲子園出場したことに意味はあったのではないかという気もしている。
(文=手束 仁)
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