ついに明豊はこの男がベールを脱いだ。背番号18・寺迫 涼生。強打の龍谷大平安相手に5回無失点の好投を見せた。1年秋から2年夏まで背番号1をつけていた145キロ右腕だったが、昨夏の大会後、肘のケガで長期離脱した寺迫の復活劇を振り返る。

新球ツーシームで龍谷大平安打線を抑え込む


 新チーム直後のことだった。練習中に肘のケガをした寺迫。診断の結果、肘の剥離骨折と靭帯の損傷と大けがだった。じっくりとリハビリに励む中、1人の偉人の言葉が大きな励みとなった。それがアメリカの実業家・スティーブ・ジョブズである。ジョブスの名言集の数々は寺迫の心に刺さった。

 寺迫はリハビリ期間中、ウォーターバッグを使った自重系のトレーニングや体幹トレーニング、菅野智之投手が実践するサンドトレーニングに取り組み、投げ始めたのは2月中旬~2月下旬だった。その時、一次登録には外れている。指導者からは、センバツに間に合わなければ、ベンチに外れる可能性があったが、それでもしっかりと調子を上げていった。最速145キロのストレートが注目される寺迫だが、新たな武器を身に付けていた。

 それがツーシームだ。握りを調整し、130キロ後半のスピードでシュート回転する軌道。新球への手ごたえをつかみ、大会前の練習試合では11イニングで無失点と手ごたえを掴んで臨んだセンバツだった。大会期間中、寺迫と話をすると、他の選手と比べてリラックスをしていて、早く投げたくてウズウズしている様子だった。準々決勝の先発が伝えられたのは試合前日の練習前のこと。寺迫は「いよいよ来たな」と喜びを見せた。

 そして対応力の高い龍谷大平安打線相手にツーシームは威力を発揮した。右打者相手に投じるツーシームは打者の手元で急激に変化し、腰砕けする。3番多田 龍平、4番水谷 祥平、5番奥村 真大の右打者クリーンナップには6打数2安打。その2安打もシングルヒットと大崩れしない投球。捕手・成田武蔵は「寺迫のツーシームは右打者の膝に当たるぐらい曲がる時があるんです。今日の試合も切れ味は最高でした」
打者の後ろ足にめがけて足元に落とす「バックフット」理論を使ったツーシームはこれからも大きな武器となるだろう。

 またこの試合では御坊ボーイズのチームメイトだった中島大輔との対戦が実現し、3打数0安打に抑え込んだ。
「三振を取りたかったのですが、しっかりと当ててきて素晴らしいなと思いました」と対応力の高さを評価した。

 5回を投げて無失点の好投に川崎監督も「100点満点のピッチングでした」と絶賛した。ようやく戻ってきたエース。次の準決勝の習志野戦ではここぞという場面で快投を披露したい。

取材=河嶋 宗一