四国の「隠し玉高校球児」その1 ~理想的成長中!制球力優れる最速142キロ右腕 井村 多朗(城東<徳島>3年・投手)~
2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し13年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。
第51回の今回からは7月13日(土)に四国4県で同時開幕する「第101回全国高等学校野球選手権」で注目したい、まだどの雑誌・WEBにも掲載されていない「隠し玉高校球児」を3回シリーズで紹介。1回目は城東(徳島)でエース・4番を務める井村 多朗(3年)「理想的成長」の理由について探ります。
驚愕の「96回3分の1・奪三振122・四死球15・防御率0.93」
最速142キロ右腕・井村太朗
6月29日(土)に開催される高知県を除き組み合わせ抽選会も終了。新日本プロレス「G1クライマックス」と同じく7月13日(土)の「第101回全国高等学校野球選手権地方大会」4県同時開幕に向け「いよいよ」感が高まる四国の高校野球ですが、私にとっては開幕前に「大きな仕事」がもう1つ残っています。
それはこの「高校野球ドットコム」をはじめ、WEB上の大会分析で最新の状況を反映させて頂くことと、雑誌では取り上げきれなかった「隠し玉高校球児」を紹介させて頂くこと。この時期、各県参加各校から報道機関に提出して頂いている「アンケート」も参考にしながら、まだ発見しきれていない球児の「未来を切り拓くお手伝いを少しでもお手伝いさせて頂けたら」という想いは年々強まるばかりです。
そんな6月上旬のある日、徳島大会参加各校からのアンケートをつぶさに眺めていると、私は徳島城東の4番エース・井村 多朗(いむら・たろう 3年・175センチ77キロ・右投右打・徳島中央リトルシニア出身)の投手成績に瞳が2倍になるくらい驚かされたのです。
明確に示せば春季大会以降6月6日までの練習試合で、16試合96回3分の1を投げて被安打54・奪三振122・与四死球15で防御率は0.93。浮橋 幸太(富岡西3年)ら最速140キロを超える右腕が10人ほどそろう徳島県高校野球界でも、井村投手の数字は突出したものだったのです。
「昨年秋とは別人です。もともとフォームがよかったのが、冬を越えて身体が乗っかったイメージ。ストレートも最速142キロになっています」徳島城東・鎌田 啓幸監督も太鼓判を押すであれば見ないわけにはいきません。さっそく6月16日(日)・西条(愛媛)との練習試合に足を運んでみました。
[page_break:「15奪三振無四球」理想的フォームで初甲子園、その上へ]「15奪三振無四球」理想的フォームで初甲子園、その上へ
キャッチボールをする井村太朗
はたして第1試合で登板した井村 多朗投手の内容はデータ通りでした。140キロの速球を筆頭に常時130キロ後半をマークしたストレートに、100キロ台のカーブ、120キロ台の縦横2種スライダーにチェンジアップ、そして130キロ前後のスプリット気味に落ちるカットボールを駆使して9回140球15奪三振完投。しかも無四球。
試合は9回表二死0対5から見事な集中力を示した西条打線に6対5で屈しましたが、「今日は追い込んでからのスライダー、カットボールで三振が取れたことは収穫ですが、最終回はストレートで押そうとして打たれ、そこから変化球にも対応された」と自分を冷静に分析する様には、クレバーさも漂います。
そしてフォームも理想的。その数日前にある指導者から学んだ「理想的」の詳細は別原稿で触れていきますが、簡単に言えば腕が体に巻き付くようなフォームのため、ボールがブレることがほとんどないのです。さらにキャッチボールから投球を意識した投げ方を心がけるなど「冬場には左ひざの開きを閉じることを心掛けて球速が上がった」本人の探究心も◎。
「今日の場面でも0に抑えてこそエースだし、チームを勝たせるよう夏にやっていきたい」メンタル的成長が見られれば、最後の夏・第101回全国高等学校野球選手権徳島大会で1つ勝てば最速143キロ右腕・白川 恵翔(3年)を擁する第4シード・徳島池田との対戦も予想される激戦区を超え、初甲子園に届いても全く不思議ではないです。
徳島中央リトルシニア時代の三塁手から投手転向3年目でこの急成長ぶり。「井村 多朗」。皆さんもこの名前を覚えておけば、ひょっとしたら4~5年後に「ああ、あの時の!」となるかもしれません。
(文・寺下 友徳)