「全国一斉ティーボール教室」 松山フェニックス、園児たちと遊ぶ
2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えてしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。
第18回では日本野球連盟(JABA)が主催し、現在日本各地で展開されている「全国一斉ティボール教室」を紹介。10月12日(金)に松山フェニックスが松山市立坂本幼稚園で行った活動をお伝えすると同時に、野球界の中にいると解りづらい「野球の現状認知度」についても考察していきます。
まずは「ボールやバットで遊ぶ」
笑顔でバットスイングを教える松山フェニックス・相田 博隆助監督
10月12日(火)午前。愛媛県民・憩いの場である「とべ動物園」からさらに南へ下がった田園地帯にある松山市立坂本幼稚園。はだしでも走れる芝生が張り巡らされた園庭には、園児たちに加えて大人たちの笑顔と明るい声があふれていました。
この日、行われたのは日本野球連盟(JABA)主催で現在展開されている「全国一斉ティボール教室」の愛媛県開催。1999年のNTT四国野球部廃部から不死鳥のように立ち上がり、2000年に創設されると、クラブチームにして2001年社会人野球日本選手権・2014年都市対抗野球で1勝ずつをマークし、来年創設20周年を迎える松山フェニックスの千原 宏之監督・相田 博隆助監督・片岡 健マネージャー・宇和島東~駒澤大で活躍後、今季入団した坂井 勇文外野手が坂本幼稚園の園児たちにティーボールを教える企画です。
ただ、4人はいきなりティーボールを教えることはしませんでした。ポリバケツにボールを投げ込む。柔らかいバットを振ってみる。そう「一緒に遊んだ」のです。
「年齢を重ねるにつれて楽しさが感じられなくなってきていたので、小さい子が目をキラキラさせているのを見て、僕も幼稚園年長くらいから兄弟でキャッチボールをしてたころの懐かしい気持ちになりました」。そう坂井選手が本音を漏らしたように、この時間で一気に園児たちとの距離を縮めた松山フェニックスの4人は、続くティボール教室でも子どもたちの目線に立ちながら、ボールを飛ばしていく様子に大拍手を送ります。
「今日は教えてくれてありがとうございました!」。教室自体は約1時間足らずでしたが、「バットでボールをうったり、ボールを投げたりが楽しかった」と話してくれた佐伯 元蔵くん(5歳)をはじめ、約20人の園児たちもボール遊びを存分に満喫した様子。直後の遊び時間では早速プレゼントされたゴムボールを投げ、追いかける姿が見られました。
[page_break: 肌で感じた「野球の認知度低下」。野球人は「運動伝道者」から前に]肌で感じた「野球の認知度低下」。野球人は「運動伝道者」から前に
記念写真に収まる松山フェニックスの選手・スタッフと坂本幼稚園の皆さん
こうして大成功に終わった今回の「ティボール教室」。ただ、ここからは筆者が肌で感じたことを素直に記そうと思います。
今回のティボール教室では半分近い子どもたちがバットの握り方・振り方、ボールの投げ方を最初は知らなかった様子が見て取れました。4人の指導を受けるとみるみるうちに上手になりましたが、芝生の園庭がある坂本幼稚園ですら「野球の認知度」は著しく低い。野球界の中にいると気付きづらい現実です。
「子どもたちは予想以上に身体を動かして張り切っていたし、喜んでいました。これをいいきっかけにして運動習慣が付けばと思います」。坂本幼稚園・村上 裕子教頭の感想は裏を返せば、現代の子どもたちは「運動習慣」という教育を施さなければ運動すらしないことを意味しています。
ということはこれからの「野球人たち」が何をすべきなのか?野球を教える以前に、「運動」の伝道者となり、その中で野球にも興味を持ってもらえるようにしてもらうことが肝要でしょう。
「はじめてティーボールを教えたけど、これはいいスポーツ。来年以降は定期的に回っていきたいし、地道に続けていきたい」。教室中は孫に触れ合うように終始笑顔だった千原監督が真顔で語った決意を、プロ・アマ問わずいかに大きな輪にできるか。今年3月に行われた総合型スポークラブONOスポーツクラブ主催「ティボール教室in小野」にはじめて愛媛県の高校生・高校野球指導者が参加して以来、確実に前進している歩みを止めてはなりません。
(文・寺下 友徳)