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3年間で全国制覇3度。京葉ボーイズが「勝利」と「育成」を両立させた3つの取り組み

2020.05.04

 昨年はボーイズリーグの全国大会で春夏連続で日本一を達成するなど、ここ3年間で3度の全国制覇を成し遂げている京葉ボーイズ。近年では突出した成績を残しているが、チームとしての実績だけでなく、選手育成にも定評がある点も見逃せない。

 2016年には岡田幹太投手(常総学院~明治大1年)がU-15日本代表に選出され、また2018年にも齋藤広空選手(日大三2年)がU-15日本代表に、そして昨年は海老根優大選手(大阪桐蔭1年)がJUNIOR ALL JAPAN(NOMO JAPAN)、U-15日本代表と二つの代表に選出されるなど、その他にも毎年多くの有望な球児を高校野球へ送り出している。

 チームとしての実績も残し、そして日本代表クラスの選手を多く輩出する秘訣はどこにあるのか。今回は、球団代表である勝本俊朗氏の言葉から紐解いていく。

中学球児の身体づくりを支える3つの取り組み

3年間で全国制覇3度。京葉ボーイズが「勝利」と「育成」を両立させた3つの取り組み | 高校野球ドットコム
トレーニングに取り組む京葉ボーイズの選手たち(※写真は2018年9月撮影)

 千葉県・船橋豊富高校グランドを中心に、市川市や習志野市、船橋市内のグランドを主な練習場とする京葉ボーイズ。2018年1月には、市川市のJR二俣新町駅のすぐそばに室内練習場も完成し、天然芝の専用グランドも八街市に間もなく完成予定。選手たちは充実した環境の中で練習に取り組むことができている。

 それでも勝本代表は、決して環境面だけがチームの勝利と選手の育成を両立させる秘訣ではないと強く語る。創部以来、勝本代表が何よりもこだわってきたのは選手の「身体づくり」だ。

 「チームを作って11年目を迎えますが、トレーニングや身体づくりの大切さをずっと伝え続けてきました。中学生のうちは成長に応じたトレーニングをやることで、技術の吸収力が大きく変わってきます。
 中学生は『速いボールを投げたい、遠くに飛ばしたい』といったところばかりに目がいくと思いますが、技術を受け入れるための身体づくりが大事だよといつも言っています」

 その中で勝本代表は、選手の身体づくりを進めるための具体的な3つの取り組みを明かす。
 一つ目は、「筋肉をつけすぎないトレーニング」だ。

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勝本俊朗球団代表(※写真は2018年9月撮影)

 京葉ボーイズでは、基本的にトレーニング器機は一切使わず、自重トレーニング(自身の体重を負荷として利用する筋力トレーニング)とダイナミックストレッチ(実践的な動きの中で行うストレッチ)を中心に行っている。
 ただ筋力をつけるだけでなく、関節の可動域や筋肉の柔軟性を高めるストレッチにも重きを置いており、トレーニング時は「どの筋が伸びているか」、「どこに刺激が入っているか」を常に選手たちに感じるよう声かけをしている。

 「ストレッチや筋トレを行う時は、どこに刺激が入っているか、どこに効いているかを常に意識することが大切です。脳と筋肉のパーツそれぞれが神経という伝達経路でつながるのです。神経筋系回路と言うのですが、これを鍛えることでイメージ通りに身体を動かすことができるようになるのです。トレーニングの目的は、パワーや柔軟性のアップだけではないのです」

 実際のトレーニングでは、バランス感覚が必要な不安定なポジションからの体幹トレーニングや、柔軟性とバランスが求められるストレッチなど、多種多彩な種目を選手たちはこなしていく。また勝本代表自らが、選手たちと皮膚的なコミュニケーションをとり指導している姿がとても印象的であった。

[page_break:活動中止のこの時期だからこそ自分の身体を見直すチャンス]

活動中止のこの時期だからこそ自分の身体を見直すチャンス

3年間で全国制覇3度。京葉ボーイズが「勝利」と「育成」を両立させた3つの取り組み | 高校野球ドットコム
トレーニング動画の撮影の様子

 そして2番目に勝本代表が挙げたのが、ITテクノロジーを活用した情報の発信力だ。
 チームは現在、日米4球団でトレーナーを務めた立花龍司氏が監修する「タチリュウコンディショニングジム」と提携し、選手に向けたトレーニングのYouTube動画を配信するなど、選手たちの自宅練習の支援を行っている。

 緊急事態宣言が発令され、選手を集めて行うチーム活動は全てストップしたが、京葉ボーイズでは「サテライトトレーニング教室」をいち早く立ち上げ、LINEを活用したライブ配信を行っている。これまで撮りためたYouTube動画とセットで、選手たちの自宅練習をアシストしている。

 またLINEグループでは、選手が個別に監督やコーチに質問できる仕組みとなっており、動画の書き込みや質問も大歓迎だとか。現在はチーム練習ができない時期だからこそ、個人技のアップ、特に身体能力を開発するチャンスだと勝本代表は言い切る。

 「トレーニング以外でも、3年生との進路面談や新入団選手の親御様との面談も行っています。
 YoutubeやLINEなど、ITテクノロジーを活用した取り組みは今後も積極的に行っていきたいと思います」

3年間で全国制覇3度。京葉ボーイズが「勝利」と「育成」を両立させた3つの取り組み | 高校野球ドットコム
撮影の様子を見守る勝本代表やチームスタッフ

 そして最後に挙げたのが、栄養学セミナーの開催だ。京葉ボーイズでは選手はもちろんのこと、保護者にも栄養学セミナーを受講していただき、選手を栄養面でもサポートしていただくようにお願いをしている。
 チームには管理栄養士がついており、選手には「自分たちの身体は食べたものでできている」ということを意識するよう伝えていると勝本代表は話す。

 「例えば僕らの時代は、背を伸ばしたかったら牛乳を飲んでカルシウムを取ろうと言われてきましたが、背を伸ばすためにはひじきやわかめなど、ミネラル、特にマグネシウムを多く含む食品も摂る必要があります。
 現在はパスタやピザなど食事も欧米化してきて、そういった食品を食べる機会が減ってきました。強い体を作るために、毎日の食事から気を使っていただけるようお母様たちにも声かけをしています」

 昨年、ボーイズリーグ2季連続日本一を達成した時の選手たちは、必ずしもメンバー全員が主砲の海老根選手のような屈強な体格を持っている訳でなかった。
 しかし、バランスの取れた体をしなやかに使いこなし、無駄のない鋭いスイングをする選手たちの姿が非常に印象的だったのを覚えている。こうしたところに、京葉ボーイズが取り組む身体づくりの一端が見えていた。

 現在はグランドでの活動はできていないが、勝本代表は「本来ならこの時期にはできない、トレーニングを行う良いチャンス」とポジティブに捉える。
 緊急事態宣言が解除され、またグランドで思い切り野球ができる時に、京葉ボーイズの選手たちがどこまで成長した姿を見せるのかとても楽しみだ。

(記事=栗崎 祐太朗

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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