自主的に考え、全力で取り組める選手がいるチームは強い!鈴木寿宝(秋田修英) vol.2
前回のコラムでは、鈴木寿宝(すずき・ひとし)監督が大事にしている『選手を第一に考える』について書かせていただいた。今回は、そんな選手たちを成長させるために必要な要素について深く考えてみたい。
今できる事を全力で!
練習の様子を見守る鈴木寿宝監督
「秋田経法大付時から「全力でやる」という考え方自体は同じです」
「いつも全力でないと勝てない、今できる事を全力で!長く監督をやってきてそこに行き着きました」
鈴木監督が大切にしているのは、『全力』で取り組めるのかどうかである。もちろんこの事は、繰り返し選手たちにも伝えられていく。
「生徒たちに、勝つために何が大事だと聞くと、『全力』と言えるようになっていますね」
このように、着実に鈴木監督の思いは選手たちに伝わっている。
鈴木監督が考える1つ目の大事な要素が、『全力』である。鈴木監督は、練習では常に全力で向かい合うことを求めている。それこそが、選手が成長する最短ルートだからだ。
「練習の量はそんなでもないけども、同じ1本、2本であっても、とことん全力でやれというのは言っています」
この言葉に、鈴木監督の思いがすべて詰まっている。
[page_break:その気にさせるために!]その気にさせるために!
鈴木寿宝監督
秋田経法大付を指導した当時は、厳しい練習で選手たちを鍛えていたと話す、鈴木監督。秋田修英ではどうなのだろうか?
鈴木監督は、「追い込むんなら、自分で追い込めという感じですね」と話してくれた。
「まぁその気にさせるのは難しいのですけど、その気になってくれれば後は自分でどんどんやってくれます」
ここに2つ目の大事な要素が詰まっている。「選手をその気にさせる」つまり、「選手が自主的に動き出せる」ように出来るかがポイントになる。
では、どのようにやったら、選手は自分で考え動き出してくれるのだろうか?その事を考える上で大事な言葉がある。
「信頼関係」だ。
鈴木監督は、選手との会話を大事にする。ある時は指導者として、ある時は選手と同じ目線で。これこそが、鈴木監督の強みであろう。だからこそ、監督と選手の間での信頼関係ができているのである。
その事がよく分かる言葉がある。
「今のチームは、明るいです。強いことを言っても食らいついてきます。のびのびとやらせています。許容範囲は広いと思います。昔はそうじゃなかったんですけど、今はかなり広くしています。騒いだりするのもOKとしています。いっしょに騒いだりもしています」
選手に話をする鈴木寿宝監督
秋田修英の練習雰囲気は、とにかく明るい。それは、気の緩みがあったり、遊びでやっている明るさではない。全力でプレーしながらも、練習に前向きに取り組む明るさなのである。この雰囲気は、指導者と選手との間の信頼関係がなくては作れないものである。
「(選手に)強いことを言っても食らいついてきます」
これこそが、信頼関係があるからこそ、言える言葉であろう。信頼関係の上でのやり取りが出来るからこそ、鈴木監督は選手のやる気を引き出しやすいのである。更に言えば、選手をその気にさせるスイッチを押しやすい土壌ができていると言える。
選手を成長させるための、2つ目の大事な要素「選手をその気にさせる」は、監督と選手の信頼関係があるからこそ成立しやすいものなのである。
自主的に考え、全力で取り組める選手がいるチームは強い。秋田修英が、秋田の高校野球の歴史をどのように塗り替えていくのか、鈴木監督率いる秋田修英に注目したい。
文=田中 実