2023年夏以来の甲子園から遠ざかっている名門・仙台育英。今年は投打ともに戦力充実だ。選手の能力、全体的な総合力はセンバツ優勝の横浜、準優勝の智弁和歌山、ベスト4の健大高崎などと遜色ない。夏の全国制覇を目指す仙台育英の戦力を徹底紹介していきたい。

ベンチ入り投手の力量差がないのが仙台育英投手陣の特徴

 今年の投手陣は150キロオーバーの怪物投手はいないが、ベンチ入りしている投手の力量差が小さい。どの投手でも勝負できるのは健大高崎横浜より優れている要素である。愛知招待試合では登板した6投手のうち5人が140キロを超えた。

 エースの吉川 陽大投手(3年)はプロ志望の本格派左腕で、最速145キロの速球、130キロ近いカットボール、120キロ中盤の曲がりの大きいスライダーで、中京大中京戦で8回11奪三振の快投を見せた。県大会でも8.2回を投げ、11奪三振、無失点の快投だった。吉川は自慢のスライダーをどうストレートに近い軌道で投げるかにこだわっている。特にカットボールはストレートに近い軌道から急激に変化するために高確率で三振を奪うことができていた。

 2番手として期待されるのは145キロ左腕・井須 大史投手(2年)。名城大付戦で6回11奪三振の快投を見せた。常時140キロ前半の速球、スライダー、カーブ、チェンジアップを駆使。次々と三振を奪った。23年の甲子園準優勝を収めた強力投手陣に憧れて仙台育英に進み、順調に成長を見せてきたという。高校2年左腕として上出来の内容で、来年のドラフト候補として期待できる逸材だ。

 昨秋までこの2人が中心だったが、この春にかけて右投手が多く伸びてきた。先発型として浮上したのが、梶井 湊斗投手(2年)だ。春の県大会では2試合に先発して、10.2回を投げ、2失点の好投だった。140キロ前半の速球、120キロ後半のスライダーで勝負する。投球スタイル、投球フォームを見ると高校の先輩・伊藤樹投手(早稲田大)を彷彿とさせる投手だ。

 リリーフでは189センチの大型右腕・尾形 陽聖投手(3年)、刀祢 悠有希投手(3年)の成長が著しい。尾形は角度のある140キロ前半の速球、130キロ近い高速スライダーを武器に名城大付戦で3回7奪三振の快投を見せ、右腕の刀祢は名古屋たちばな戦で、最速143キロの速球、120キロ後半のスライダーで2回3奪三振、無安打の好リリーフを見せた。須江航監督は「今までは吉川、井須の出来次第で勝敗が決まるという試合が続いていましたが、それ以外の投手が出てきたので、楽しみですね」と語る。

 リリーフでは、右腕の吉田 瑞己投手(3年)の存在も大きい。県大会でも3回を投げ、4奪三振と、愛知招待試合では2試合連続無失点の好投。しっかりとアピールした。常時130キロ後半の速球と切れのあるスライダーを投げる右腕だ。招待試合では140キロ超えはなかったが、好調時は140キロを超える日もあるという。

 仙台育英の投手陣が他のチームにない武器を挙げるとすれば、全員が120キロ後半の高速変化球を持っていること。スライダー、カットボール、フォークボールなど空振りを奪える変化球で、試合を作っているのだ。

 須江監督は「日程が詰まっている中で投げているので、しっかりとリフレッシュした状態で臨めばもっと良くなります」と投手陣の成長に手応えを感じている。

スラッガー揃いの布陣に小技もできる選手が台頭し、打線にバリエーションが増す

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