<第139回全尾張選手権大会:大府5―4日本福祉大付>◇25日◇準決勝戦◇小牧市民球場

 この春、愛知県内で最も注目されている存在と言っていい高蔵寺の芹澤 大地投手(3年)を攻略した日本福祉大付。数少ないチャンスを足を生かした攻撃で1点をもぎ取り、それを死守した勝利が光った。

 昨夏の愛知大会はベスト4にまで進出しており、準決勝では優勝した中京大中京に敗れたものの、知多地区唯一の私学校として存在感を示している。この夏は、シード権こそ逃したものの、上位常連校にとっては厄介な存在となっていくことは間違いないだろう。

 この試合で先発し、キレのいい球を投げ込んでいた飼沼 陽太投手(3年)をはじめ、高蔵寺戦で好投した神谷 武蔵投手(3年)、故障も癒えて前日には大成を相手に好投した内藤 翔人投手(3年)ら、投手陣は整ってきた。

 攻撃力に関しては少ないチャンスを何とかものにしていこうという戦い方だ。1番の田中 空選手(3年)が出て、早坂 玲音選手(3年)、竹内 閃選手(3年)の中軸が還すという形で得点していくのが理想のパターンだ。この日も、初回は早坂選手の犠飛、4回は竹内選手の三塁打で得点している。

 山本 常夫監督は、「秋は、夏からのメンバーが大きく入れ替わったこともあって、なかなかいい形が出せず、県大会も初戦で敗れましたが、春休みの関西遠征などで強い相手とやって、勉強させてもらい、徐々に仕上がってきたかなと思います。これから、6月には、関東遠征もあって、ここで夏へ向けて仕上げていきたいと思っている」と、日本福祉大付は、神村学園で実績を作った山本監督の人脈もあって、多く遠征試合を組んでいる。甲子園出場実績のある学校などとも試合をすることで、あらゆるものを吸収していく姿勢である。春も、関西遠征ではセンバツ出場の東海大札幌との練習試合で、スキのない走塁の姿勢を学んだという。

 夏へ向けてのテーマとしては、「見逃し三振0」を掲げている。ベンチもいつも元気なのも特徴だが、実戦を重ねていきながら自信をつけていくという姿勢である。夏へ向けて、あと1カ月と少し、もう一伸びが期待できそうだ。

 大府は、勝負強さを感じさせてくれた。東浦から異動して、就任4年目となった中嶋 勇喜監督は、「秋は敗者戦からの戦いで何とか県大会には出られましたが、初戦で(安城に)完封負け。そこから、だいぶ成長してきているなということは感じています。特に、自分たちでどうしていくのかという姿勢が浸透してきました。だから、監督はあまり、しゃしゃり出ないようにして、生徒たちが何をやりたいのか、そこにどうアドバイスしていくのかということですね」という。チームの方針と、練習の下地は最初に伝えるものの、あとは選手たちが自分の考えでどうやって行くのかということを尊重している。

 頭髪も丸刈りにはしないで、自由にしている。身体もしっかりしている大嶋 元晴主将(3年)や宮地 慧彰捕手(3年)らは、大学生のようにも見えるのだが、中嶋監督も大学野球的ムードを大事にしているという。「高校生だからと言って、上から頭ごなしにガンガン言っていくのではなく、自立した一人の大人としての扱いをしていこうということが、今の時代に即しているのではないでしょうか」と、考えているからだ。そういうスタイルを示していくことで、次の世代へ向けても高校野球の門戸が広がっていくのではないかと考えている。

 この両校は、知多地区の強豪同士なので、毎年のようにどこかで対戦しているが、この代のチームは昨秋から地区予選や全尾張大会なども含めて初めての対戦だったという。

 中盤まで、取って取られてという厳しい試合で、5回に大府が一死満塁から3番大嶋選手の左越二塁打で一掃して逆転。このリードを柴山 虎太朗投手(2年)が6回まで投げて1点差。そして、7回からは1番つけた金本 優翔投手(3年)がしっかりと投げて0に抑えた。9回は先頭に安打されて、三塁まで進められて一打同点という場面にもなったが、慌てることなく大人の投球でしっかりと封じた。

「夏の本番前に、こうして背番号をつけた公式戦という形で、いい緊張の場面を経験できたことも大きかった」と、両監督共に、いい試合ができたということを実感していた。観ていても、質の高い試合内容でもあったという印象だった。