<春季四国地区高校野球大会:明徳義塾5-2高松商>◇26日◇1回戦◇レクザムスタジアム

 昨年、高卒ルーキーにして二軍で正妻となり終盤に一軍デビュー。今季は開幕一軍入りを果たすと、4月18日の楽天戦では10代捕手として史上4人目となるNPB一軍初アーチを含む衝撃の2発を放つなど、いまやロッテのニューヒーローとなりつつある寺地 隆成。そんな彼の出身校である明徳義塾で現在、2年前に彼が辿った道をなぞるような、右投左打の強肩捕手が高卒プロ入りを目指している。

 その捕手とは北海道から明徳義塾の門を叩いた藤森 海斗(3年)。明徳義塾中出身で、高校進学後も1年秋から正捕手の座に就いたが、2年時5月の四国大会からは1学年下の里山 楓馬捕手(2年)にポジションを譲り、自らは外野手・一塁手が主戦場に。だが少年時代からプロ入りを志し「捕手を務めている時、いろいろなポジションに声をかけていた」寺地先輩に憧れていた藤森は、正妻奪還の機会を虎視眈々とうかがっていた。

 そして初戦で健大高崎に惜敗したセンバツ後、馬淵 史郎監督は慎重さがいつしか「無難なリード」に変化していた里山から、交互にマスクを被っていた練習試合から「リードに意外性があるし、そこが池﨑(安侍朗・3年)と合っている」と、藤森の捕手起用を決断。高知との四国大会順位決定戦に続き、秋の四国大会決勝戦以来の公式戦対戦となる高松商との春季四国大会初戦でも背番号「2」を藤森に託した。

 はたして藤森は名将の期待に見事応えてみせた。リード面では左腕・池﨑にインコースを要求しつつ、「1番の高藤(快渡・3年)や5番の橘(朋宏・3年)といったキーマンの左打者には緩急を付けることを意識した」と、池﨑の散発5安打7奪三振2失点完投勝利に貢献した。

 かねてから俊足巧打で定評のある打撃でも、初回はアウトローの変化球に手を伸ばし右前に落とすと50メートル走6秒1の俊足を駆って二塁打に。転じて3回裏の二打席目では二死三塁から力強く引っ張って一・二塁間を鋭く破る適時打を放った。6回に二死満塁で回った4打席目では空振り三振を喫して「反省です」と、飽くなき向上心を見せたが、4番としての仕事は十分果たしたといえよう。

 その半面、高松商戦では久々の公式戦捕手経験により様々な課題も露わになった。この日6球団が視察したNPBスカウトの1人は「脚もあるし打撃の巧さもある。地肩はむしろ寺地よりも強い」と評価しつつも「寺地より強いインパクトは残せていない」と、毎回投球練習後の二塁送球時、初回から6回表まで形を作ってから投げることにより、タイムを計測できなかった点を指摘している。

 また、別のNPB球団スカウトは「基本的なキャッチングやブロッキングはしっかりしている」としながらも「今は両手で捕球する傾向がある。NPBに入った際、片手捕球に直すには少し時間がかかるかもしれませんね」と、プロ仕様の技術改善を求めていた。

 振り返れば寺地も2年秋からケガに苦しみながら、最後は細部を詰めてドラフト5位指名を勝ち取った。その経緯を誰よりも近くで見てきた藤森は、8回裏投球練習後にタイム1秒96で突き刺さった二塁送球の精度を高め、センバツのリベンジと共に、伊藤 光捕手(DeNA)、古賀 優大捕手(ヤクルト)、寺地らに続き、明徳義塾からの高卒捕手ドラフト指名を引き寄せにいく。