<春季高校野球神奈川県大会:横浜5-1立花学園>◇26日◇準々決勝◇サーティーフォー保土ヶ谷球場

 6回表、この日4個目の三振を奪うと大きく吠えた。マウンド上で「25」が躍動していた。

 エース右腕・織田 翔希投手(2年)、奥村 頼人投手(3年)が甲子園後初の公式戦登板となった試合で、その2人をしのぐ活躍を見せたのが前田 一葵投手(3年)だった。5回から2番手でマウンドにあがると6回までに4奪三振、その後は走者を許しながらも4回無失点の好救援でチームの勝利に貢献した。

 村田 浩明監督が「春は新たな戦力が出てきて欲しい」と競争を促す中、前田は春季大会初戦で先発を任され、ここまで結果で期待に応えている。そんな右腕を成長させたのが同級生で切磋琢磨してきた山脇 悠陽投手(3年)の存在だ。

 同学年で同じ右投げ。ともに1年時から公式戦登板を経験し「自分のライバル」と前田は言う。昨年も織田、奥村の両エースを支え、しのぎを削った2人だが、先に脚光を浴びたのが山脇だった。

 センバツ大会の沖縄尚学戦。先発した織田の調子が上がらず2番手でマウンドに立った前田は、適時打を浴び1/3回でマウンドを降りた。その後を受けた山脇が2回と2/3で4つの三振を奪う好投で指揮官も「本当によく投げてくれた」と称賛していた。

 前田はあの日の投球をこう振り返る。

「甲子園は『変わる場所』だと思っていました。でも、あそこで自分は変われなかったです」

 リベンジを果たす機会もなくチームはセンバツの頂点に立った。この春は聖地で打者二人の対戦に終わった悔しさを噛みしめながら、目いっぱい腕を振っている。

「今まで結果が出なくて苦しかったですけど、最終的には技術ではなくて気持ちの部分と監督さんからも言われています。日本一の守備が守っているので、絶対に抑えようと思っていました」

 9回に登板した奥村頼も、「今日は前田がいい投球をしてくれた。今後も色んなバリエーションが出てくると思う」と仲間の好投に刺激を受けている。

 新1年生も続々とデビューを果たす一方で、3年生の活躍がまたチームの底上げに繋がる。最後の夏に向け、この春でさらなる進化を示すことが出来るのか注目だ。