およそ2時間半しかない練習時間の使い方

普段の練習でどれだけ試合を想定した内容を積み重ねることが出来るか。練習量を確保することが今の川越東にとって必要なことだろうが、川越東は学校がある場合、放課後の練習はアップ、さらに片付け・整備なども含めて3時間程度。ボールを使った練習は2時間半程度と、あまり練習量を積めるような状況ではない。

これには「(他校に比べたら)やっぱり短いと思います」と吉田は話すが、続けて短時間だからこその良さを語る。

「自分はだらっと長時間やるよりは、集中して短時間で練習する方が合っていると思います。
長い時間練習をすると、やりながら覚えることがたくさんあると思いますが、短いと考えることが増えますし、事前に『今日はこれを試そうかな』って目的をもって練習が出来る。そうすると練習の振り返りもしやすいので、より成長につながると思っています」

実際に吉田は「フォームの課題を早い段階でクリアできたのは、短時間ならではの成長だと思う」と効果を実感している。

柳主将も「川越東は文武両道を掲げていますし、時間に限りがあるのは理解しているので、その時間でどうやって練習をするか」ということにフォーカスしているとのことで、短時間であることに何も不満はない。むしろ、「自分たちにないが必要なのか。何をすべきなのか、野球のことを深く考えるようになり、1つのプレーに対して集中して考えて取り組める」と吉田同様にメリットを感じながら、練習を積んでいるようだ。

ときには練習中に映像を撮影して、即座にプレーの振り返りをすることもあるそうだが、指導者の協力も大きい。取材日は指揮官・野中祐之監督を含めて、4人の指導者がグラウンドにいた。

学校の先生はもちろん、OB、さらには外部指導者と様々な人が川越東のグラウンドに足を運んでくれる。実際、取材日には普段ゼット測定を担当している方が、投手陣の指導にあたっている姿が見られた。

指導を受けていた吉田は、「結構大きいかなと思います」と話し、川越東の短時間の練習との相性の良さを説明する。

「話す人が増えることで得られることが多くて刺激になりますし、短い時間の中で話しかけられる人が多いのは大きいです。練習を取り組むにあたって何を意識するのか。そこを確認して取り組めるので、間違った方向に進むことは少ない。自分たちにとってメリットかなと思います」

柳主将も、「コーチ陣が豊富であることは、自分たちの短時間の練習にとってはメリットになると思います」と吉田同様に外部指導者をはじめとしたスタッフの充実ぶりは、川越東にとっては強みだと感じているようだ。

これで練習の質を高めてあげることで、練習量を補い、川越東は悲願の甲子園へ着々と実力をつけていくわけだ。

難しくても、文武両道は「強みになる」

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