【愛知】準々決勝 中京大中京 vs 杜若
<第105回全国高校野球選手権愛知大会:中京大中京14-1杜若(5回コールド)>◇25日◇準々決勝◇岡崎レッドダイヤモンドスタジアム
愛知大会は、最初の抽選でA~Hのまでのブロックで、ベスト8が決まると再抽選となる。愛知大会の多くの指導者たちは、「苦労してベスト8に残ると、再抽選となるので、ここからまた次の大会が始まるという感じです」と言う。全国最多の173チームが参加しているだけに、強豪校も多く、その頂上へのロードは厳しく長いものとなっている。
名門の中京大中京も、今大会は春季大会で低迷したということもあってノーシードでの戦いとなったので、ここまでロングロードだった。しかも、4回戦では桜丘とタイブレークを延長12回で制するなど苦しみながらも勝ち上がってきた。そして、5回戦は新城有数館にコールド勝ちし、この日の準々決勝では、躍進著しい杜若を圧倒した。
杜若は春季県大会では1回戦で名古屋に敗れている。元近鉄~ヤクルトの田中祐貴監督がプロ野球を引退後に、帝京大可児のコーチを経て昨春母校の監督に就任している。ただ、この代の3年生は4人しかいないという状況でもあった。それでも、大会に入って、一宮商、豊川工科、岩津と粘り強い豊田南を下して、5回戦ではここまで快進撃をしてきた向陽に対して金原 優大投手(2年)がノーヒットノーランを達成するなどでムードも盛り上がっていた。
中京大中京の高橋源一郎監督も、その勢いを警戒していた。だから、「まずは、先取点が欲しい」ということで、2回は4番・大西 遼多内野手(3年)がチーム初安打の左前安打で出るとバントで進め、神谷 倖士朗内野手(2年)の内野安打で一、三塁となったところで、江崎 直人捕手(3年)はスクイズ。まさに手堅い「中京野球」で1点を取りに行った。
また、先発の中井 遥次郎投手(2年)も失策は1つあったものの、1~3回は3人ずつで抑えていく好投だった。
そして迎えた4回、中京大中京は四球と安打で一、二塁とすると、江崎がしっかりと送り、1死二、三塁。ここで8番に入っている中井の一打は強い二塁強襲の二塁打となり、2人がかえる。さらに四球と1番・西谷 光世外野手(3年)のバント安打に犠飛、そして、山田 頼旺外野手(2年)の右中間三塁打に、2失策も絡んでこの回大量7点が入った。
これで試合の流れは完全に中京大中京のものとなった。
4回からは無安打のまま中井がマウンドを降りて、2人目の祝 昂輝投手(3年)につないだ。祝も、大会に入って調子を上げてきているということだ。髙橋監督も、「チームはまだまだ未成熟なので、大会を通じて少しずつやれることをやって結果を出していきながら、自信にもなっている」と言うが、そんなチーム状況を表すかのように、成長した姿を示す好投だった。
そして、5回にも中京大中京は途中出場の藤岡 勇希外野手(3年)や代打・浅井 祥英捕手(3年)を含む7連打が出て、さらに6点を追加してワンサイドの展開とした。
それでも、杜若はその裏、1死から松本 悠雅内野手(2年)が中前安打。そして、代打・柴田 洲(3年)が左越え二塁打を放って二、三塁とすると、犠飛で1点を返して一矢を報いた。二塁打した柴田は背番号10の3年生だが、日々の練習では5月以降はサポートメンバーという形で、率先して練習メニューの相談や情報収集に努めてきたという。田中監督は、最後の試合となる場面で起用したのだが、この二塁打をことのほか喜んでいた。
「彼の存在が、杜若に今までになかった新しい形を作り出してくれたと思う。4人しかいない3年生の中で、サポートメンバーになってくれてからは、本当に一生懸命に取り組んでくれた。ほとんど自分の練習ができなかった中で、こういう結果を出してくれたことは、とても嬉しい」と、喜んでいた。また、家永 晴瑠登投手(3年)の再登板に関しては、「このチームは、家永を中心に戦ってきたチームだったので、最後はもう一度マウンドに立たせてあげたかった」という思いだった。
結果は、コールドとなってしまったものの、持てる力は出し切ったという思いはあったようだ。「こういう舞台で戦えることによって、また、もっと強いチームとの違いを感じてもらえれば、それが次へつながる」という思いでもある。
春季県大会の1回戦コールド負けからチームを立て直してきた中京大中京。何だかんだ言われつつもベスト4進出としたのはさすがである。「厳しい状況からの夏へ向けてのチーム作りだったけれども、今年は沖縄招待試合や明石での記念試合などもあって、恒例の関東遠征や県外遠征での試合も多く、花巻東(岩手)との招待試合もそうでしたが、県外の強豪と対戦させていただくことによって、徐々にチームとして整備されていったと思う」と、春季大会ではちぐはぐで未完成だった部分が、大会を通じてよくなってきていることを実感していた。