4回戦 誉 vs 中部大一
<第105回全国高校野球選手権愛知大会:中部大一3-2誉(延長10回タイブレーク)>◇22日◇4回戦◇岡崎レッドダイヤモンドスタジアム
令和最初の夏の大会となった、第101回大会で、あれよあれよと勝ち上がっていって、初の甲子園出場を果たした誉。昨年は、ドラフト1位指名選手を輩出するなど、近年躍進著しい。学校は、小牧市にあるがかつては尾関学園と言っていた。そこから、校名変更して、野球も徐々に力を示してきている。
中部大一は中日の田島 慎二投手の出身校としても知られているが、かつて、名古屋第一時代に1度、夏の愛知大会で準優勝を果たして甲子園に手が届きかかったこともある。
愛知県内では、いわゆる名古屋市内の私学4強と言われるところを追う存在として、そのグループの上位にいる有力私学の対決でもある。
実は、この両校は、昨年夏も初戦で当たっていて、その時は誉が勝利していた。この夏は、4回戦での再戦ということになった。
試合展開はロースコアの、お互いやや焦れるような展開となった。
初回に誉は1死から3連打が出たものの、満塁としながらも得点にはならなかった。その裏、中部大一は1死から四球と失策で一、二塁として、4番・松崎 想太内野手(3年)の左前打で二塁走者をかえして先制。力のある黒野 颯太投手(3年)の重い球にしっかりと喰らいついていった一打だった。
誉も3回、先頭の2番・松下 音生内野手(3年)が左前安打で出ると、バント失策で一、二塁とする。そして、平安 永遠捕手(3年)の内野安打が悪送球も誘い、二塁走者が生還。さらに、無死一、三塁と畳みかける好機だったのだが、その後は中部大一の先発・竹島 海翔投手(3年)が踏ん張って後続を抑えた。
その後は、どちらも決定力を欠いてなかなか得点に結びつかなかった。中部大一は5回からリリーフした背番号8の 塩塚 咲哉投手(3年)、誉も先発の黒野と、6回からリリーフした子迫 創太投手(3年)が、それぞれ自分の力を示して好投していたということを評価した方がいいであろう。塩塚は、走者を出しても巧みに交わしていきながら粘り強い投球。子迫は最速140キロを表示するスピードボールを中心として力でねじ伏せていく感じだ。6回に篠田 光一外野手(2年)に二塁打を浴びたものの、9回までは、その1安打のみに抑えていた。
こうして1対1のまま、延長タイブレークに突入していくことになった。
誉は6番・黒野からだったが、「打っていけ」のベンチの指示通り打っていった打球は中前打となって、二塁走者が生還。なおも暴投もあって無死二、三塁と、大量点のチャンスとなった。しかし、その後は内野ゴロの走塁ミスと、スクイズ失敗などで無得点。1点は奪ったものの、誉としてもタイブレークの先攻としては、やや悔いの残る攻めだった。
そしてその裏、中部大一は7番・服部 滉内野手(1年)からだったが、バントは失策を誘って無死満塁。8番・寺田 吏玖(3年)が一、二塁間を破って同点として、なおも一、三塁。ここで代打・井川 陽翔内野手(3年)君が左前へはじき返して、これがサヨナラ打となった。
就任3年目の水野勢麻監督は、「苦しい試合でしたけれども、しっかりと戦えてよかった。このところは、組み合わせもあって、なかなか上位へ進めていなかったので、この夏はさらに上を目指したい」という思いである。主将の桑垣 勇野捕手(3年)は、「新チームがスタートした時は、なかなか上手くいかなくて、苦しみました。だけど、4安打で勝てたのは、泥臭くやっていこうというチームとしてのテーマでもありましたから、嬉しいです」と、満面の笑みを浮かべて語ってくれた。桑垣の兄は、中京大中京に現中日の髙橋 宏斗投手がいた時のメンバーで、現在は立教大で活躍しているが、この日もLINEで「頑張れ!」とメッセージが届いたそうだ。
相手の3倍近くの11安打を放ちながらも敗れた誉。矢幡真也監督は、「実は、先の全尾張大会でも、誠信との決勝でこんな戦いで負けているんです。決定打が出ないというところと、走塁ミスや大事なところでチャンスを潰して攻めきれませんでした」と、残念がっていた。
今大会の組み合わせで行けば、誉はここで勝てば次は東邦を下した星城である。これは、4年前に誉が初優勝をした時と同じ流れだったのだが、「それは、意識しないようにしたのですけれどもね」と矢幡監督は語っていたが、今大会はその再現はならなかった。
取材=手束 仁