試合レポート

桐光学園vs桐蔭学園

2022.05.01

元U-12、DeNAジュニア経験の逸材が躍動 桐光学園のルーキーが決勝で大暴れ

桐光学園vs桐蔭学園 | 高校野球ドットコム
桐光学園2番・矢竹 開

<春季神奈川県大会:桐光学園6-2桐蔭学園>◇決勝◇1日◇横浜スタジアム

 桐光学園が12年ぶりの春の神奈川王者に輝いた一戦。序盤の試合展開で桐光学園が主導権を握る形になったが、その流れを作ったのは矢竹開外野手、中村 優太内野手の1年生2人の活躍があったといっても過言ではない。

 特に2番に座った矢竹は、この試合で2安打1打点という結果で中軸に繋げる働きを十分に成し遂げた。小学生の時はU-12にヤクルトジュニア、中学でもボーイズ東日本ブロック選考会に選出された実力の持ち主だが、逆方向へのバッティングが光る選手である。

 懐の広さを生かして、手元にミートポイントを置いて最短距離でバットを出していく。それでインコースを攻められれば、腰を鋭く回転させて対応していくように見られた。

 ただ矢竹の最大の武器は脚力。50メートルを6.1秒で駆け抜ける走力で、この試合も手動のタイム測定で一塁駆け抜け3.8秒、二塁到達は7.55秒という記録。快足ぶりを決勝の横浜スタジアムで披露した。

 初回から快足ぶりを魅せた。桐蔭学園の先発・山口 凱矢投手(3年)から中前へ安打を放つと、緩やかにベースランニングをしていると思いきや、相手野手の捕球態勢を見て一気に加速して二塁を陥れた。その後、4番・石井 嘉朗捕手(3年)の一打で同点のホームを踏んだ。1点を追いかける状況で、早々に同点にできたことは大きかった。矢竹の積極的な走塁がなければ生まれなかった得点だった。

 走塁については、桐光学園に入学して培われたものだったという。

「先輩たちと練習をやってきて走塁への意識は高まってきましたし、守備位置が深いという指示をもらっていて、打球を見ても『行けるかもしれない』と思ったので行きました。

 桐光学園での独特な走塁練習のおかげでもあった。打球とそれを処理する野手の距離を走りながら図って、次の塁に進むかどうかの判断を瞬時に行う訓練をしてきた。初回の二塁への積極的な走塁も、その成果であり、その後、同点のホームインを呼んだ形となった。

 その後も二塁打が飛び出すなど、捉えた当たりが多かった。1年生ながら2番に座るなど、首脳陣の期待は高い。「後ろにはいい打者が揃いますので、単打でつないでチャンスメイクすることが仕事です」と話し、欲を出さずつなぐ意識で打っているという。関東大会以降も活躍に期待したいところだ。

 またショートを守った中村は、小学生の時にDeNAベイスターズジュニア、湘南ボーイズでは日本一にも輝いた。

 初回にセンターへ抜けそうな当たりをスライディングキャッチでアウトを演出。その後もランニングスローに、イレギュラーに対しても素早く反応してアウトをもぎ取った。身のこなしが軽く、動きが軽快と1年生ながらスタメンに名を連ねるのもうなずけるパフォーマンスを見せた。

 矢竹と中村の2人が、これからどんな選手へ成長するのか楽しみしかない。

[page_break:144キロ右腕が桐蔭学園を圧倒 成長見せる9回2失点の完投勝利]

144キロ右腕が桐蔭学園を圧倒 成長見せる9回2失点の完投勝利

桐光学園vs桐蔭学園 | 高校野球ドットコム
桐光学園先発・針谷 隼和

<春季神奈川県大会 桐光学園6-2桐蔭学園>◇決勝戦◇1日◇横浜スタジアム

 27個目のアウトとなる痛烈なピッチャーライナーを掴み取り、優勝を決めた桐光学園エース・針谷隼和投手(3年)。9回被安打7、与四死球3、失点2と持ち味だと主張する、打たせて取る投球で桐蔭学園打線を封じて見せた。

 初回から好調だったわけではない。雨で足場が悪くなっていたマウンドの影響で足元が滑ってしまい、思うような球が投げられず、球が浮いてしまうシーンが多かった。

 制球に苦しんでいたが、イニングを重ねるごとに徐々に自分らしさをマウンドで表現。真っすぐを主体にして、低い打球で繋ぐ攻撃を信条していた桐蔭学園打線を封じた。

 特にフライアウトは13個で、27アウトのおよそ半分を占めた。直球が伸びていた証拠だ。対戦した桐蔭学園の主将・相澤白虎内野手(3年)は真っすぐについて、「浮いていたので狙わないようにしていましたが、迫力で手を出してしまった」と話しており、見た目以上の威力が打席内でもあったようだ。

 3回あたりからは今まで以上に上からたたくことを意識した。針谷も「そこは意識しました」と話し、野呂監督の指導にも感謝する。

 「監督から『左足の着地を優しくできれば、コントロールは乱れない』と言われてきたことをそこからしっかりできたので、修正ができました」

 指導される前までは足を高く上げて着地して投げる、と単純作業として考えていたが、「足を上げた勢いを、そっと着地させる」ことを野呂監督からアドバイスされて、下半身の使い方を見直した。着地へ意識を傾けることで、リリースポイントも安定し始めたという。

 この試合で与四死球3つと安定した数字を残している通り、最速144キロのスピードのみならずコントロールも良い。横浜高との一戦に続いて、見直してきた下半身の使い方を通じて成長を見せる投球だった。

 「まだ実感ないです」と優勝の手ごたえはなかったようだが、関東大会には神奈川1位で挑む。2021年の時はベスト4止まりで、しかも自身が登板した専大松戸戦で敗退している。悔しさを晴らす大会に向けて「優勝したい」と意気込みを語った。

 最速144キロ右腕が関東の猛者相手にどのような投球を見せるか注目だ。

[page_break:桐蔭学園の投手陣はバリエーション豊か 準優勝に終わるも収穫を得る]

桐蔭学園の投手陣はバリエーション豊か 準優勝に終わるも収穫を得る

桐光学園vs桐蔭学園 | 高校野球ドットコム
桐蔭学園先発・山口 凱矢

<春季神奈川県大会:桐光学園6-2桐蔭学園>◇決勝◇1日◇横浜スタジアム

 桐光学園の前に力及ばず、準優勝に終わった桐蔭学園。主将の相澤 白虎内野手(3年)は「打線がつながらず、フライを打ち上げてしまったのが敗因です」と冬場にテーマとしてきた繋ぎの攻撃を発揮できなかったことに悔しさをにじませた。

 しかし、指揮官の片桐監督は、桐光学園の144キロ右腕・針谷 隼和投手(3年)から7安打したことに「全く成果が出せなかったわけではないと思います」と及第点を与える。

 その一方で「崩していくような打撃ができなかった」と点数を取るための攻撃をどうするか。攻撃のバリエーションを増やしていくことを課題に挙げた。

 投手陣はエース・山口 凱矢投手(3年)が1.2回で降板する苦しいところから、2番手以降が粘りの投球を見せた。片桐監督も「普段の練習の成果を出せたことは収穫だったと思います」と得られたものが多かったようだ。

 2番手・今野 翔斗投手(3年)は、ややクイック気味の投球スタイル。スリークォーター気味の低い位置での腕の振りから、曲がりの大きいスライダー系の変化球を巧みに使って、桐光学園打線を抑えて試合を立て直した。

 その今野の後を継いで登板した3番手・宇田川 怜王投手(3年)は右サイドハンドの投手。モーションは大きいが、インステップした状態で投げているので、角度を付けた投球ができている。

 鋭く振り抜かれた右腕から、切れと威力のある直球と、曲がりの大きい横のスライダーが生まれる。反動を大きく使うこともあり制球力に課題がありそうだが、山口や今野とは違ったスタイルの投手であることは間違いない。

 経験豊富な山口を含めて投手陣に手ごたえがあった桐蔭学園。あとは野手陣がトップレベルの好投手からどうやって点数を取るかが課題となる。相澤主将も「相手の攻撃や守備を研究し、学びながらも自分たちの力を発揮したい」と話していたが、関東大会の舞台でどれだけの経験を積めるか。桐蔭学園の戦いぶりも注目したい。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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