桜丘vs科技高豊田
桜丘がイメージ通りの継投で、元気に粘る科技豊田を振り切る
6回を投げて2失点だった桜丘・川野君
<春季愛知県大会:桜丘3-2科技豊田>◇10日◇2回戦◇豊橋市民
通称「科技豊田」と呼ばれている科学技術学園高校豊田。日本を代表する大企業のトヨタ自動車が運営する企業内のトヨタ工業学園認定訓練校というのがベースとなっている。学校のあり方としてはいくらか特殊で、企業内学校というか、そんな形に近い。ただ、職業訓練校は学校教育法ではなく、職業能力開発認定法に基づいているので、高校卒業資格が得られないところを、高校卒業資格を得られるように同時に科学技術学園高校(通信制)に入学して高校卒業資格が得られるように配慮された学校だ。
従って、こうして高校野球大会にも出場している。学校としては、部活動も参加には積極的で、在校生は必ず部活動に参加することとなっている。「現場に求められる人材育成」ということがテーマとなっていて、選手たちも部活動に取り組んでいる。PL学園出身の二葉 祐貴監督は、礼儀やマナーをきちんとしていくことと、諦めない姿勢を大事に指導しているという。1回戦では、同じ西三河地区の安城東を下して進出してきた。
二葉監督も所属していた社会人野球の強豪でもあるトヨタ自動車にも酷似している赤を基調としたユニフォームは、県内では目立つ存在となる。そして、その色合いは「情熱の赤」を表しているという。その赤色が、元気にグラウンドではじけていた。
そんな科技豊田に対して、東三河地区予選を1位で通過してきた桜丘は、1回戦はシードで2回戦からの登場となっている。東三河地区では、安定した実績のある有力私学である。3年前の第101回愛知大会では決勝にまで進出。甲子園出場に手が届くところまで進出したこともある実力校だ。
初回、桜丘は先頭の鈴木 悠之介が中前打すると、すぐに二塁へ進め、3番中西が巧みにおっつけて右前打。野手が後逸する間に二塁から生還し、中西も三塁へ進んだ。しかし、その後は科技豊田の杉本も立ち直って、後続の打者は何とか切った。挟殺プレーもしっかりとしていた。3回は、無死一、二塁、1死満塁という苦しい場面にもなったが、併殺で切り抜けるなどして、かわしていた。
3回に二塁打を放った、科技豊田・淺井君
2、3回も複数の走者は出すもののいくらか攻めあぐみの感もあった桜丘だったが、4回、やっと追加点を奪う。この回先頭の鈴木 悠斗が左前打で出ると、2死二塁となったところで1番鈴木 悠之介が左翼線に落とす二塁打で二、三塁。さらに、根木が一塁強襲安打で三走がかえる。二走の鈴木も本塁を狙ったがここは、科技豊田もしっかり守って本塁で刺した。
桜丘は5回にも当たっている中西がこの日3本目の安打を放って出ると、2つの暴投などで生還して3点目を奪う。その裏、科技豊田も2死二塁から1番淺井が左前に安打して二塁走者をかえして、なおも四死球で2死満塁とする。打線も中軸に回ってきて、科技豊田としては、一気に追いつきたい場面でもあったが、桜丘の川野は踏ん張った。
科技豊田は6回にも2死から元気者の7番水野が右前打で出ると、スルスルと二塁盗塁を仕掛け、これがボークを誘う。2死二塁から今野が右前へはじき返して水野をかえして1点差。試合展開そのものもわからなくなってきた。そして、7回から科技豊田は菅田、桜丘は増田と、ともに背番号11をつけた右腕がリリーフのマウンドに立って、1点差で戦況は次の展開に入っていった。
そこからも、お互いに走者が出るものの、何とか投手が踏ん張るという状況で結局3対2のまま、桜丘が逃げ切った形になった。桜丘の杉澤哲監督は、「投手陣は、コロナで投げ込みが不足しているので、どうしても継投で行かないといけない。川野は6イニングを投げたけれども、これだけ投げたのは、この春初めてじゃないかな。7回からの増田のリリーフはイメージ通りだったけれども、増田は球の力はあるので、こうして抑えて馬力で投げて行ってくれればいい。今日の増田は二重丸の大合格」と増田の踏ん張りを評価していた。ことに9回の投球は三者三振。スピード表示も141キロをマークしていた。見事な投球だったと言っていいであろう。
(記事:手束 仁)